そこにバモス



 ホンダの中で、どのクルマが好き? と聞かれれば、どのクルマもみんな好き! と答えると思います。しかし、あえて1台だけと言
われれば、バモスと答えてしまうんじゃないかな・・・。本当は、一番も二番も無いのですが。
何故、数あるホンダの中でバモスなんだろう? 形が好きというだけでない、何か言葉に例えられない魅力があります。自分のバモス
はもちろんですが、人のバモスも、何故か自分の子供のように思えてしまい、可愛くてしかたありません。ですから、街でバモスを見
かけると、ついつい吸い寄せられるように、寄っていってしまいます。(これは、バモスだけではありませんでした・・・)

さあ、バモスとの出会いについてお話いたしましょう。

 バモスに関心を持ったのは、雑誌を見て興味がわいてきたわけではありません。 それは、大学時代のある晴れた日の事。
東京から群馬県までステップバンに乗り、敷島公園という花のきれいな公園に遊びに行った時の事でした。ちょっと休憩に寄った公園
脇の喫茶店で甘いココアを飲みながら、窓を眺めていると、遠くの方からこちらの方へ、どこか乾いた聞き覚えのあるエンジン音が。
ビィーン! アレッ? ホンダの軽トラックかな、TN360あたりかな。しかし、目の前に飛び込んできた映像は、トラックではなく、検討
もつかないような、変なクルマ。以前ステップバンについて調べている時に、横に移っていた、バモスホンダというクルマそのものでし
た。本で見た時は、なんの興味も持たなかったのですが、その時見たバモスホンダは、まるで別物でした。
オー!あれがバモスホンダか。 そのバモスは、バモス4といって四人乗りのタイプでした。春の暖かさも手伝って、バモスに乗って
いる二人は、ホロ全開で、風を切って走っていました。私も思わず、窓から身を乗り出し過ぎ去っていくまで、ずっと見つめていました。
この時、私の心の中で、開けてはいけない扉が開いてしまいました。バモス4! これが私とバモスの出会いです。

開けてはいけない扉が、一旦開いたら、私の心は踊り、頭はバモス4でいっぱいです。絶対バモス4に乗ってみたい。ホロを畳んで
オープンで! しかし、その夢は、N360やステップバンと違い、なかなか叶いませんでした。
バモスの事もなかば諦めかけていた、2年後の春。  学生生活も終わり、地元に戻った私は、いたって静かな生活をしていました。
(ステップバンとライフに囲まれていましたが) そんなある日、姉に頼まれ軽トラックで、姉の引越しのお手伝いに行っていました。
そして、普段通らない道を走り、たまたま信号待ちの交差点で停車していた時の事。サーッと強い風が通り過ぎていきます。すると道路
脇の何気ない中古屋さんの裏にある車両置き場に、ブルーのシートが掛かったクルマがあったのですが、一瞬フワッとめくれあがり
ました。 思わず目が点になりました。バモスホンダー! 引越しなんて、そっちのけ。荷物を積んだまま中古屋さんへ。
『すいません、裏にあるバモスは売り物ですか?』 『ああ、アレ? 随分前からあのままでねー、いつまでも置いておけないので、片
付けようと思っていたら、昨日同業者が来て、譲ってくれというので、売ったところだよ。』 ガーン。ここまでか・・・。 ですが簡単に諦め
る訳にはいきません。待って待って待ち続けたのですから。『スイマセン、相手の方を教えていただけますか? 直接お話をさせてくだ
さい。』 『いいよ!』 なんとか、首の皮が一枚つながりました。そのまま、言われた中古車屋さんへ直行です。
そこで、事情を話し、ちょっと値段が上がりましたが、譲っていただく事ができました。何事も諦めず、願えば叶うですね!
おっといけない。今日は引越しに来たんだった。慌てて戻り、何事も無かったように、働きました。  『あんたはどこへ行っていたの?』
姉に聞かれ、『思わずバモスホンダを買ってきた!』  『フーン』 『アレッ、驚かないの?』 『いまさら、何を言っても驚かないよ』そうだった。
私は考えたら止まらない性格でした。姉も充分承知。言い出したら、やるまで終わらない性格もよく知っていたのでした・・・。
こうして、私のところに念願のバモスがやってきました。

アレッ? これバモス2 じゃん・・・。私の夢見ていたのは、バモス4! よく見ると部品も全然ないし、随分動いてなさそうだし、サビ
だらけ・・・。 舞い上がると、目が曇ってしまうようです。  まあいいか。 これはO型の性格ですね。

我家にバモスが仲間入り!  いつかは、やはりバモス4。 そして、またバモスの旅は始まります
                                                                 そこにバモス。  おわり