Vcoreの可変の仕組みと、BIOSの動き

BIOSや下駄でVcoreが替えれる仕組みの考え方です。

    2000.01.21  Takapen Signed  


「下駄とBIOSの設定は、どちらが優先するのか?」
「BH6などのVcoreのBIOS可変マザーで、基準電圧が変更できない。」
「BH6などのVcoreのBIOS可変マザーで、電圧が一定以上上げれない。」
などの質問が良く出されます。
ここでは、一般的な考え方と仕組みを解説します。
メーカーにより、設定方法などが違いますので、基本を踏まえて応用してください。


<優先?と、実際の設定方法>

一般には、説明が長くなり大変なので(^^ゞ、
下駄側の設定が優先されます」と、簡便に説明することが多いようです。
ところが、現象的にはそうなのですが、仕組みを正確に説明していないため、
かえって混乱を広めているように思えてなりません。

まずは、設定方法の結論からです。
下駄でBIOSで操作する基準とするVcore電圧を、明示的に指定してやり、
CMOSをクリアーします。その後、
BIOS上でさらに電圧を操作します。

1)PCの電源を落として(コンセントも抜いて、5VSBの供給も切ります。)
2)下駄の電圧設定(VIDジャンパー)を替えます。<例えば1.8V>
3)マザーの
CMOSをクリアーします。
4)電源を投入し、BIOS設定画面に入ります。Vcoreが<1.8V>を基準にしていることを確認。
  BIOSでさらに設定したい電圧<例えば1.9V>に変更。他の項目も設定。
5)BIOSをセーブして再起動。(この場合は、リセットを使わず、一旦電源OFF->ON)
以上です。


<CPUのVID信号とマザーの供給電圧の決定のしくみ>

CPUとマザーは、連携してCPUへの供給電圧を決定しています。
その関係は、CPUがVID信号で規定の電圧をマザーにしらせ、
マザーはそのVID信号の指示に基づいて電圧を生成し、CPUに供給する。
CPUはマザーから供給される電圧を「指示した通りと信じて」受け取る。
という仕組みです。

ここで、Slotマザーでは、2つのごまかしというか、技をかけることができます。
1)下駄でCPUからのVID信号をごまかし、マザーに誤った(^^;;規定電圧生成を指示する。
2)CPUから受け取ったVID信号に基づいて、規定電圧を一旦BIOSのCMOSに記録する。
  その規定電圧に、ユーザーが任意の印加の電圧情報を足して、
  その改変された情報(^^;;をもとに、電圧を生成する。  −>BIOS変更可のマザー
この1)と2)を組み合わせて、CPU定格とは異なった電圧を、
CPUに供給するのが、O/Cの常套手段になっています。

注意が必要なのは、CPUはマザーから供給された電圧をチェックしていません。
マザーから供給された電圧をノーチェックで受け取ります。
間違って、3.5Vあたりをかけると、今のCoppermineは間違いなく昇天します。ご注意を!


<下駄でのVID信号改変と、BIOSでの印加の解説>

下駄とBIOSの設定を組み合わせたしくみを、少しわかりやすく例示します。

Vcoreに何Vがかかるか?という基本の情報は、CPUが発します。
VID信号と呼んでいますが、CPUはそれに固有のVID信号を出します。
cC0河童セレの場合は、1.7Vに製造時に設定されています。

CPUは、「
僕は1.7Vが規定だからね!マザーボード君、1.7Vをかけてね。
と、VID信号で要求を発信します。
マザーは、このCPUの指令を受けて、1.7Vを生成して供給します。
これが基本です。

スロットマザーの場合は、CPUとマザーの間に「下駄」が入ることを利用し、
下駄でこのVID信号の組み合わせを操作して、
だます、というかユーザーが任意に改変できるようになっています。
また、最近のマザーでは、BIOS設定でCPUから受け取った指定の規定Vに、
ユーザーが任意で+−して、供給できるようになっています。
下駄と、BIOSの2段階で、ユーザーがVcoreを操作できるのです。
では、模擬的に説明します。

CPUが、「僕は1.7Vが規定だからね!」と、VID信号を出します。
ユーザーは、もう少し電圧を上げたいので、
下駄のジャンパーを操作し、VID信号の組み合わせを変えます。
CPU君は1.7Vと言って来たけど・・、<下駄で改変して>1.8Vだよ!」と、
マザーにうそのVID信号を出します。

マザーは、下駄からのVID信号を、CPUからの信号と見なしますから、
下駄からの「1.8Vだよ!」という指示を受けて、一旦、
BIOSのCMOSエリアに「
今のシステムのCPUの規定電圧は1.8Vです。」と記憶します。

そして、BIOS起動時に「Vcore1.8V」と表示し、ユーザーに、
この1.8Vの規定電圧を、任意で変えるかどうか問いかけます。
(これが、ABITマザーのSOFTMENUの代表される可変BIOSです。)
ユーザーは、このごまかした規定電圧1.8Vに、任意の印加たとえば、
+0.1V(もしくは%で指定するのマザーも有り)をして、
CPUにかける
電圧を1.9Vと決定し、BIOSセーブして、再起動させます。

これで、CPU規定1.7V -> 下駄で改変1.8V -> BIOSで印加+0.1V = 1.9Vが、
CPUに供給されることになります。


<BH6以降のBIOS電圧変更の反映のしくみ>

ABIT系のマザーでよく「電圧が上げれない!」「下駄の設定が反映しない」
という質問になる原因と対策の解説です。

BIOSは起動毎に、基準となる下駄(CPU)からのVID信号の判定はしていません。
一旦、BIOSのCMOSエリアにVID信号情報を記録すると、
ユーザーがこれを強制的に再認識させる操作をしてやらないと、
最初に記憶したVID信号指定の電圧を維持しつづけるのです。

BH6の場合は、CPUを別な種類に替えて、
CPUIDが変わると、自動で再認識にいきます。
またEPoXのBX6SEでは、CPUを物理的に刺しなおすと、
逓倍率やベースクロックの変更と合わせて、
自動的にVID信号の判定をするようです。

再認識させるには、CPUを交換したら(下駄の電圧設定を変えたら!)
「CMOSクリアー」を、行う必要があります。
CMOSにVID信号情報がない状態にしてやって(購入時の空白状態)、
あらためてCPUのVID信号を読みに行かせて、基準電圧を再設定します。

CMOSクリアーをするには、
CMOSクリアージャンパーをショート(つなぐ)させてください。
(このとき、大概パシィッ!とショート放電があります)
そして、ジャンパーをまたオープンの状態に戻してやります。
CMOSクリアー時には、電源断して、コンセントも抜いておいてください。

他の方法としては、マザーのボタン電池をはずして、10分以上放置すれば、
だいたいCMOSクリアーできます。
ジャンパーショートで、パシィッと放電するのが恐いので、
電池を抜く方が多いようですが、本来はジャンパーショートさせるものです。