☆袖山とアームホールとの関わり合い
身頃パタンにはアイテム(朊種)によりアームホールの広い・狭いケースがあり、それに対応して袖パタンにも
(A)高い袖山と狭い袖巾の場合、反対に
(B)低い袖山と広い袖巾の場合、等組み合わせは様々です。
ドレッシイなドレス・ジャケット・コート等は(A)のタイプ。スポーティなアイテムのブラウス・ドレス等は(B)のタイプ・・と分類できるでしょう。
(A) ドレッシイなアイテム・・ バストの緩みは(B)と較べて小さく、従ってカマ巾も狭い・・袖巾も狭く、袖山は高い。
(B) スポーティなアイテム・・バストの緩みは(A)と較べて大きく、従ってカマ巾も広い・・袖巾は広く袖山は低い。
▲一つのアームホールに対して袖山の高さと巾は逆比例の関係にあります。
袖山を高くすれば袖巾は狭く、低くすれば袖巾は広くなければなりません。
つまりアームホールの寸法に対して袖山の長さはある寸法内でなければならない・・と云う事になります。
以上の条件を考慮して製図を行いますが、
私の場合の思考は次のような順序ですので参考にして下さい。
①身頃の性質の判断
▲ 身頃がドレッシイなアイテムか否か?▲ドレス・ジャケット・コートの種別による緩み分量のバランスは?
②袖巾の決定
▲ 通常カマ巾×3=腕の最低限の周径。▲此れを袖巾として製図するか?否かの判断?
③ 袖山の高さの決定材質による「イセ分《への判断。
▲ 材質により、デザインにより、どれ位のイセ分量が適当か?(通常アームホールの10%~3%)▲スポーティなアイテムの場合は(3%以下)
④袖山の高さの決定
(A)コピーされたアームホール上に基点Cから袖巾×1/2を設定しD点とし、垂直線を上方向に延ばす。
(B) その線上に基点Cからアームホール寸法×1/2+0.9 cm の位置に印を付け、B点とする。
(C) B点より重心線に水平線を出し、重心線との交点をA点とする。A~Bは袖山の高さになる。
(D) A~Bはアームホール寸法×2/5+(0~0.5)くらいの袖山の高さになる。
●基点Cは
バスト線と重心線の交差した点
●袖山の高さ=
(後ろ肩丈+前肩丈)× 2/5 + 0 ~ 0.5 cm = C ~ A
●A・H寸法× 1/2 + 0.9 cm = C ~ B
◎ 「袖原型 1《の製図法を利用した袖山の設定方法です。
詳しくはその項を参照下さい。
『袖の原型1基本袖』click
①材質による「イセ分《への考慮
素材により「イセ分量《の多い場合、その他の条件によっては(A-D).(C-D)の寸法を変更し,袖山と袖巾を微妙に調節し、製図に入ります。
後の製図については『袖の原型1基本袖』の項を参照下さい。
袖ぐり線と袖山の基本的な関連
袖ぐり線は縫い合わされた状態では『楕円形』になり、それに合わさる袖山も縫い合わされると『楕円形』になります。ただし袖山は下に斜め
に『袖筒』が延びています。
この袖筒を袖下線で切り開いて平らに展開すると袖巾と袖山の山型になります。
袖巾の長さは最低でも腕の通る丸みが必要ですが腕の丸みはカマ巾の約3倊以上が必要です。
これは『カマ巾=腕の直径』に当たるからです。(腕の直径×円周率=腕の円周)
此の例は
○身長 158cm.バスト 82 cm の体型の原型パタンを想定しますと
カマ巾 = 9,2 + 1.4 (緩み)= 10.6 cm、
袖巾 = 10.6 ×3 = 31.8 cm
が最低の必要量となります。
後肩丈は(袖付けの楕円の深さ)=「身長×1/20 + バスト×1/10+3.0 cm (緩み)《ですから
後ろ肩丈 = 158×1/20 + 82×1/10 + 3.0 cm = 19.1 cm
となります。前肩丈 = 19.1 - 1.0 = 18.1cm、
従って平均肩丈=18.6 cmになります。
私共が子供の頃習った数学の定理に
直角三角形のA2=B2+C2
と云うのがあります。これを当て嵌めますと
肩丈A2=腕の直径(カマ巾)B2+袖山高C2
すると袖山の高さは
平均肩丈A2ー 腕の直径(腕周の1/3=カマ巾)B2=袖山C2と云う関係になり、
(18.6×18.6)―(10.6×10.6)=(15.28×15.28)と云う計算になります。
この表は仮の数値での計算例です。
これは袖山点までの直線の長さですから、実際には『イセ分量』を 加えます。(0.3 – 0.5 cm)
この関係を使って考えられた袖山の製図法がホームページの基本袖の製図法です。
『イセ分量』を調節するには C-B(斜線長)をコントロールして行います。
C-A(袖山)2 + C-D(袖巾)2 = C-B(斜線長)2 ですから,これを使って計算すると
袖枠を 2.0 cm 増加させると A/Hは 1.8 cm 増加し,C*B(斜線長)は 0.85 cm 増加する計算になります。
従って [イセ分量] を 1.0 cm 増加させたければ C-B を 0.47 = 0.5 cm 付加すればよい事になります。
●袖山の高さ=(後ろ肩丈+前肩丈)× 2/5 + 0 ~ 0.5 cm C ~ A
このバランスによる計算は (19.1+18.1)×2/5+0.5 = 15.38 となり、略前述の計算と略一致します。
実際にはイセ分量を加える必要があり、適宜に増減します。それは斜めに付いた袖山は身頃に対して丸みを持たせねば綺麗な袖付けにならないからです。
これは
直角三角形のA2=B2+C2 と云う定理を
使ったもので、この関係を利用して製図法が工夫され、また様々な修正法・調整法が考えられました。以上を頭に置いて関連のページをお読みください。
色々な製図法が工夫され、教えられていましがその背景には理論的な根拠があります。
それを知った上で製図すると様々な応用が出来ます。
◎ 付記~袖枠からのアームホールの計算方法
前肩丈 17.1
カマ巾 10.6
後ろ肩丈 18.1
計 45.8
A/H 寸法 42.0 (袖枠の 91.7%)
前袖枠= 17.1+4.3 = 21.4 前A・H =×91.7 = 19.62
後袖枠= 18.1+6.3 = 24.4 後A・H =×91.7 = 22.37
A・H計 = 41.99 = 42.0
応用例
① 予め袖巾を想定して袖枠のC点を設定して垂直線を上げ、其れに向けてA・Hから算出したC~Bの
斜線を描いて袖山の高さを決める。
参考バランス=●A・H寸法× 1/2 + 0.9 cm C ~ B
② 袖の角度を設定して直線を出し(C),それに袖巾に当たる直角線を袖下点Sから描き,(C),(A)の寸法から任意の袖山を描く。
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