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立体図形は面白い


原型製図とグレーデイング操作の関連
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【原型の描き方の確認】

立体図形の面白さ(1)

立体図形の面白さ(2)

【後身頃の操作とバリエーション】



      この離れた分量がダーツの増加する分量とと云う事になります。肩甲骨点M – M1 – h3 を別紙に写してMを中心に回転させ、h3 を h”に合わせて ダーツを開きます。
    この方法は原型の書き順とは少し違い、ダーツは 20 mm 首側に寄りますが肩甲骨点は 15 mm しか寄らず、ダーツ線の方向が違って来ます。修正には 元パタンのダーツ線に平行に引き直しダーツの開き口を訂正します。
    (註2)
    この(B) の描き方は後中心線→後首巾→後肩巾と拡げ、ダーツは変化しませんが肩点は少し背巾線に近くなります。
    (C) の方法は背巾線と肩点との間を固定し て後肩巾を拡大するのでダーツは広がり、後肩の丸みは増加します。

    【方法の選択について】
    (B,C)ともバスト80 - 90 cm 位まではこの操作は誤差は少ないので有効ですが 90 cm 以上になると後肩巾と後巾の差が大きくなり過ぎます。それで 疑心のある場合は(A)で確認するのが良いと思われます。
    後肩点と背巾線の間隔は体型分析によれば背巾に緩みの入った状態でバスト80 で3.5 cm, 90で 2.5 cm、100で 1.5cmと次第に狭くなるようです。理由は バストの増加につれて肩の後側の丸みが増加する為と思われます。ですから拡大によって次第に狭くなっても良いのです。上審のある場合は E-ab’を計測し て調整して下さい。

【前身頃の操作とバリエーション】

    前身頃のテーマは前巾は 5.0 cm 拡大するのに肩巾は後身で 2.0 cm の拡大である、と云う点です。これは当然で後巾と前巾の拡大の比はバスト80 - 100 cm の 間ではカマ巾の拡大分量を除いた分を1対2の割合で分け、前巾の方が大きいからです。
     これはバスト・ダーツを拡げる事で吸収します。それには前脇の Np, H点の位置を前中心線からの距離と重心線からの距離との『ズレ』が解らないと 分量が確定出来ません。
    原型では重心線からの後首巾の長さを利用しましたがグレーデイングでは原理は同じですが方法が少し違います。

    ① 前巾の拡大
    前巾は重心線とバスト線との交点Bgから右へ50 mm 拡大します。
    ② 乳間の拡大
    Bp点は 50 mm 拡大した点から乳間の拡大した分量 5 mm 脇側へ戻ります。
    ③ 前丈の拡大と前SNP, H の拡大
     H1'点は後身と同じく先ずカマ丈の分量+前丈の増加分を加えた分量を垂直に上に移動し,前巾 - 前首巾の増加分を左に戻り H1’とします。
     H1は前丈変更量から前首丈変更量を差し引いて上に移動します。H1'と H1 は元パタンの湾曲線を写して首繰り線を記入します。
    ④ 前肩丈の拡大
    袖ぐり線は元パタンの湾曲線を延長します。分量は後身カマ巾の変更量の9/10を出します。(註4)
    (註4)
    前肩丈の拡大は後のカマ丈の増加分の9/10 としたのは斜め方向への拡大のため垂直方向よりも短くなる為です。元パタンの肩点と拡大パタンの肩点を 夫々Bg点と結び、重心線上に戻すと少し間隔は広くなります。それを見越して1/10 短く設定します。


    ⑤ 前肩線の設定
    拡大された Bp’を中心に Bp - H1'をコンパスに取り、H1' から右へ円弧を振ります。[4] で拡大された肩点から後身頃の小肩巾を取り、H1”として H1”~ab”を結びます。
    次に原型製図の際に行った同じ方法で別紙に Bp - vl’- H1’を移し、右に回転させてH1’を H1”に合わせ、H!”- f - Bp を移し、左に 戻して H1’- e - Bp を記入します。
    ⑥ カマ巾の拡大、W線、H線の調整
    更に前後のカマ巾を拡大し、ウエスト線、ヒップ線を切り上げて完成させます。この部分の詳細は省略します。

    (註5)
     前身の肩線の記入は原型製図とは違って拡大された肩先点 Ab’から Bp’- H‘の円弧に後身の肩線を移して H”を決め、重心線からの『後首巾の長さ』 を使いませんでした。
    これはデザイン・パタンのカットの表現を出来るだけ忠実に拡大する為で,袖ぐりの湾曲線には影響がありません。
    原型製図の方法(A)を使っても誤りではありませんが曲線が多少変化する場合があるのでそれを避ける為にこの方法(B)を使います。

    この他に前の肩線記入には次のような方法も考えられます。(C)

  • (a) H1'点から水平線を出し、肩先点あたりの 4.5 cm下に短いガイド線を引きます。H1’点から後の小肩巾の長さをこのガイド線上に取り、 肩先点 ab’とし H1’と結びます。
  • (b) 袖ぐり線を延長し肩丈増加量の9/10を上げてAb'とします。
  • (c) Bp – e – vl – H’の垂直線を引き別紙に写し、Bp を中心に Bp – vl – H’を脇側に回転させてab1が袖ぐり線上のAb"点と合わせます。
  • (d) Bp – vl – H’は開いてvl – vl’とバストダーツが開きます。

    これ等の方法は重心線からの拡大された前肩点の位置とHs'点の位置を求め、前中心線からのH1'の位置との『ズレ』から拡大パタンのバストダーツの 分量を導き出すバリエーションで、他にも考えられるでしょう。

    【その他の質問について】
    ミューラーの考えたこの方法について寄せられる疑問点について捕捉します。
  • # 原型は後身頃から操作するのは何故か?
       体型の変化は背面の方が前面より変化の程度が低く、より変動の巾が少ないので背面で後肩巾を設定してそれを前面に移す様にします。
     
  • # バランスの変更量の計算は?
    厳密には計算式を用いますが馴れればもっと簡単な方法があります。例えば後肩巾の計算式は
    後肩巾 = 身長×1/20 + バスト×1/10 + 3,0 cm
     ですが身長は変らず、バストのみ20 cm 拡大
    すると後肩巾の変化はバスト差に比率を乗じて 20 cm×1/10 = 2 cm となります。
     またカマ巾の拡大はバストの増加分の1/10 ですからバスト差に比率を乗じて
     20 cm×1/10 = 2 cmとなります。
    計算式に慣れて来ると多くの場合、変化量を簡単に算出できるようになります。

立体図形の面白さ(3)


    前身頃でもバストの膨らみは二つの基準線からの距離の『ズレ』を計測してバストダーツの分量を描き出しました。これは先述のように体型を縦・横の基準 と共に『厚み』の基準を設定して、その前後の体型の些少なバランスを計測してそれを重心線を基点に配分する事によって描き出したのです。

    個人の体型バランスを使えばその体型の忠実な原型になりますが、既製朊の場合は上特定多数のバランス・データを分析してサイズ毎の『標準バランス』 を使てそのサイズの『標準原型』を作成します。

    またグレーデイングやパタンの変更・修正でも立体図形の基本的な原理に沿って色々な方法が工夫され、場合と状況から方法が選べすのでパタンの操作の 巾は従来の『やり方のパタン教育』より広く、面白くなります。

    この様な考え方を推し進めると『立体裁断』はダミー上での『ドレーピング』と同じ様に平面図形の上でもバランス数値を組み合せる事によって出来る 事が理解できます。
    この様な考え方を推し進めると『立体裁断』はダミー上での『ドレーピング』と同じ様に平面図形の上でもバランス数値を組み 合せる事によってシルエットの造形が出来る事が理解できます。

    すると『立体図形』とは平面図形の上にバランスの配置を考えて頭の中で描いたイメージを描き出す操作と云う事が出来るでしょう。
 

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