大きいサイズの計算式


<<バランス計算式の多様性と拡充(1)>>

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前項の計算式はバスト 80 - 100 cm の標準的な体型についての計算式について述べました。体型は子供から成人女性、特にバストの大きいゾーンの 体型まで標準以外のグループまで多様です。
また民族の体型を観察するとヨーロッパ系の体型と東洋系の体型では変化の傾向に相違があり、CAD化 の過程でユーザーの実務上の問題点を研究するとバスト 90 - 120 cmのバストの大きいサイズの体型の計算には更に細 部の調整を含めた計算式が必要です。(仮にリッチ・サイズと呼ぶ)そのポイントは次の通りです。

変更・追加部分の理由は?

(1)着込み分量の加算
バストのバランス 90 cm 以上の体型では標準の計算式の後丈では衿の後側が首の傾斜に添わず、離れて来るケースが多いようです。所謂『着込み分量』 が上足するのです。その分量は統計的にはバスト90 cm →100 cm では 0.6 → 0.7 cm 位の分量です。これは中年向きの売り場でよく耳にする情報です。

(2)カマ巾の増加と前巾の調整(バストの配分の調整)
また、ADMS社のユーザーの情報としては標準計算式ではカマ巾(Ad)は少し狭い、と云う情報がありました。先述のように東洋人の体型とヨーロッパ系 の体型とは異なり、バストが 90 cm 以上になると顎(アゴ)が前方向へ出て首付が前傾斜の度合いが強く、姿勢が多少『前こごみ』になり、 従って背面、後肩部分が丸みを帯び、腕の巾も太くなる傾向があるように見受けられます。

(3)前丈の後丈に対する増量について
バストの配分は B 100 cm 以上は後巾(Rw)カマ巾(Ad)前巾(Bw)は2:2:6と前巾の比率が広くなる。これは前丈の後丈に対する 増加比率にも関連します。

以上のような体型の特徴をカバーする計算式は
①バスト 90 cm 以上のについての『着込み分量』の追加計算、
②バストの前巾・カマ巾。後巾の 配分比率の変更、
③後丈に対する前丈の増加比率・・の3点です。


着込み分量の増加

これは売り場からの情報によく聞かせられる点でジャケット等の試着では後の肩部分の丈が上足気味になり、衿が後ろに引かれ、後の肩部分の丈が 上足気味になるので着込み分量としての『ユトリ』が欲しい、と云う要望です。
データの分析では B 90 cm - 100 cm の 10 cm では 0.7 - 0.8 cm 程度の上足が見られる。従って身長=156.0 cm は共通でバストの差による後丈の計算式は 次のように加算されます。

                  

この『着込み分量』は後首丈に1/2、肩甲骨の高さに1/2 と2分して後中心線に直角、水平に切り開いて加えるようにします。
計算式は身長に対する後丈の 標準バランスに着込み加算量を計算して加えるようにします。

バストの配分について

バストの配分の標準の比率は 80 - 100 cm の場合は上段のような変化をしますが 100 - 120 cm になると下段のように 後巾 - 前巾の拡大比率は大きくなります。

             
             

何故前巾の比率が大きくなるか?ですが、バスト 80 – 100 – 120 cm の体型の巾と厚みを比較する為に前巾から乳間を差し引き、 肩巾の拡大に対してバストがどれ位重心線より張り出したか?を一覧にしますとバストが 20.0 cm 毎に、体型の巾(肩巾)は 2.0 cm 拡がるのに対し、 バストの前巾から乳間を差し引いた『体型の厚み』は 3.0 cm → 4.0 cm 前方向へ張り出す事になります。それでB 100 cm 以上ではバスト配分の バランスを変更します。

           

このバランスの変化は後丈に対する前丈の比率の増加にも関係します。いま仮に身長 156.0 cm.後丈 40.0 cm と仮定した寸法で 算出しますと次表のようになります。

           

カマ巾(腕回り)の配分について

旭化成AGMS社CADのユーザーの意見としては(リッチサイズ)では標準のカマ巾(Ad)のバランスは少し狭い、と云う情報が あり、先述の様に姿勢が多少、『前かがみ』になり、後肩部分が丸みを帯びて首が前方向へ傾斜を強め、腕の巾も太くなる傾向があるように見受けられます。
その情報に対応してリッチサイズのバランス計算式では次の様に変更を加えて(Bタイプ)とし、ユーザーに選択を任せるようにします。

           

☆ 数式はもっと簡略化できますが意味が解るように敢えて元のままにしました。

☆ カマ巾を前方向に0.5 cm - 1.0 cm 『繰り込む』事を考える方法もありますが、全体のバランスの構成の一部に『恣意的な操作』を加えると 他のヶ所との関係に矛盾を生じる事があるので計算式に繰り入れる事が好ましい、と思います。

 リッチサイズ計算式 

以上の諸懸案を数式に繰り込んだ計算式(Bタイプ,Cタイプ)は次の様になります。ユーザーの皆様にはパタン作成の目的 (対象とする体型グループ)を勘案されて選択され、組み合せを考慮するように、と考えました。また皆様の考えで計算式の一部を変更される時は 全体のバランス関係との間に矛盾が起きないようにご配慮下さい。


☆ 上記の(Bタイプ)計算式は前巾、カマ巾は標準の比率、背丈は加算、前丈は標準比率で、

☆ 下記の(Cタイプ)計算式は前巾は狭く、カマ巾は広い比率。背丈は加算、前丈はやや短い比率です。

(Bタイプ)に対して(Cタイプ)はやや肥満して腕巾が広く、バストはそれ程高くない『ズングリ型』の体型向きの計算式と云う事が出来るでしょう。

ハンド操作の時代には全て筆算してPt 表を作成していたのでこの様な計算式の組み合わせは殆ど上可能でしたがCAD又はパソコンの時代になり、 自由に組み合わせて体型の傾向にマッチした計算式の作成が可能になりました。体型のバランスによる数値化はコンピューターの時代と共にこの様な 多様な許容巾のある計算式を可能にしたのです。

ですから既製朊は注文朊のように『個別の体型』に適合する事は上可能ですが、デザインの多様性と共にCADの発展は 体型群の多様性とサイズの多様性に適応する途を開いたと云えましょう。

またこの様な計算式をCADに組み込む事により、CADは単にパタンを操作する機能を持つツールから脱皮して身体寸法を入力 すれば異なる体型グループやサイズの変化にパタンを自由に適合さる機能、人工頭脳的な機能を果す機能を持つように進化した、と云えるでしょう。


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