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[写真集に出会う:海外写真集10冊の紹介/日本カメラ1996年2月号:107]


 洋書写真集の新刊というと、現代の写真家の新作写真集を思い浮かべがちだが、このところの出版状況で目立っているのは、写真をある視座のもとに編んだ企画・編集本の類いである。

An American Century of Photography: From Dry-Plate to Digital : The Hallmark Photographic Collection American Photography 1890-1965: From the Museum of Modern Art New York Bystander: A History of Street Photography

 グリーティング・カードで知られるホールマーク社の、2600点を越えるコレクションから1880年代から現在までのアメリカ写真を編んだ『AN AMERICAN CENTURY OF PHOTOGRAPHY』、ニューヨーク近代美術館のコレクションより編まれた『AMERICAN PHOTOGRAPHY 1890-1965』は、写真表現の中心が、今や歴史的にもアメリカにあることを暗に主張するかのような意欲が見え、質量ともに見応えがある。

 また、コリン・ウェスターベック(Colin Westerbeck)とジョール・マイヤーウィッツ(Joel Meyerowitz)が編集した『BYSTANDER:A HISTORY OF STREET PHOTOGRAPHY』は、ストリート・フォトグラフィーの流れを歴史的にたどったユニークさが光っている。日本にも展覧会が巡回した、写真の発明から今日までのセルフ・ポートレイトを編んだ『THE CAMERA I』は、思いがけないイメージが多く含まれており、歴史的な幅を持ちながら、とても新鮮な写真集になっている。

Nadar Edward Weston: Forms of Passion Untitled

 写真表現を捉え返すような、こうした傾向は、個人の写真集にも当てはまるだろう。つまり、写真家の仕事を回顧する類いの写真集に、充実したものがたいへん多いのである。 19世紀の写真家ナダール(Nadar)の写真約200点を編んだ『NADAR』、近代写真の巨匠エドワード・ウェストン(Edward Weston)の写真約320点を編んだ『FORMS OF PASSION, PASSION OF FORMS』、アメリカ写真を代表するような象徴的な写真家であるウォーカー・エヴァンズ(Walker Evans)の写真約1000点を編んだ『WALKER EVANS』などは、歴史的な写真家にも、まだまだ再発見されるべき要素があることを教えてくれる。 コンテンポラリーでは、ウィリアム・クライン(William Klein)の伝説的な写真集の新版として出された『NEW YORK』、未出版の写真が多く含まれたダイアン・アーバス(Diane Arbus)の『UNTITLED』、グロテスクなイメージでセンセーションを呼んだ、ジョエル・ピーター・ウィトキン(Joel-Peter Witkin)の『A RETROSPECTIVE』などが、注目される写真集だろう。

 ここにあげたような写真集は、その回顧的な性格ゆえ、書店で見かけても、いつでも手に入るかのように思いがちである。が、写真集の寿命は案外短く、気がつくとすでに絶版だったということが多い。ということは、今こそ、こうした写真集を手に入れておく旬なのかも知れないのである。