阿武隈川源流を訪ねて


5月3日(木)〜4日(金)快晴。
連休の天気予報をにらみながら、福島行きを決めた。
今年は雪が少ない。通常だと難しいかも知れないが、何とか大丈夫だろうと思い、5月始めの阿武隈川源流行きを考えた。
2日の午後、自宅を出発、那須高原にある道の駅”友愛の森”を目指し走る。
都内で多少道を間違えたが、昭和通りに入れば一本道、そう車の渋滞もなく、走れた。
22時頃到着、結構キャンピングカー等で埋まり、賑わっている、さすが5月の連休だ。
向かいにコンビニがあるのもうれしい。 まずは寝酒のビール一杯、6時間も運転してきたので、五臓六腑に染み渡るうまさだ。 少しでも寝て、疲れをとらなくちゃ。
一時、ぐっすり寝れたが、車の中の目覚めは早い、2時頃には、目が覚めてしまった。
空には、満月と星が見える、少し風が強いが、快晴だ。 結構、車の出入りがあるので、もう眠れそうもない。
例によって、FMラジオ深夜便を聞きながら、夜明けを待つ。

ここの出発予定は4時半、4時を過ぎると明るくなってくる。
とりあえず朝食はあと、トイレ休憩後、出発。5時前、那須甲子有料道路に入る。
事前に確認したところ、19時〜6時は無料通行出来るということなので、バイパス的に利用させてもらう。
朝一の快適走行、すれ違う車もない。 展望が無い道路だが、途中で日の出(4時50分)を迎えた。
真ん丸い太陽が上がってくる、今日一日の天気が約束されたようで、気持ちいい。
遠くの山々には、かなりの残雪がみられる、はたして大丈夫だろうか。
20分ほどで有料道路は通過、国道289号線に出る。
三叉路の脇、ゴルフ場の敷地内に、丁度見頃の水芭蕉が咲いていた。 車を止め、数枚撮影、その後289号を、終点奥甲子目指し走る。

一軒宿・大黒屋までは、トンネルを抜けるとすぐだ。 大黒屋の下の駐車場に車を止め、ゆっくり朝食の仕度をする。
外は風があり、少し寒いので、車の中で湯を沸かす。
コンビニの賞味期限を見ながら、朝はカップヌードル、昼はおにぎり、夜はパンと決めてある。
明日の朝食もカップヌードル、昼はパンの予定だ。 車を坂途中の場所に移動し、出発準備をする。
日が当たってきて、暖かくなってきた、体感温度的には10度くらいか。
6時30分出発、100Mほど歩くと林道入り口だ。 甲子大橋の下をくぐり、荒れた林道を歩く。
林道脇には、残雪が見られ、先行きが心配だ。 30分ほどで林道は終わり、阿武隈川本流に降りる。
ここで靴を履き替え、遡行モードに入る。

朝一の雪解けを含んだ水は冷たい、それも少し歩くと慣れ、心地よくなる。
水量は多いようだ、たぶん、雪解水の影響だろうか。
渡渉区間以外は水に入らず、1時間ほど辿ると、ひとまたぎに到着だ。
幅が1Mくらい、本当にひとまたぎ出来る。 奥には、豪瀑な雌滝の姿が見られる。
ここは、セルフタイマーで撮影、なんとか落ちずに撮れた。
ここからは、残雪の下にある鎖を辿りながら、へつりぎみに、雌滝の下に行く。
大釜のある雌滝到着、なんとかここまでは来れた。 これからは、残雪がかなりあり、大変そうだ。
撮影後、巻きにかかる。 冷たい水に濡れた鎖を掴み、雪渓の下に隠れたところまで登る。
そこから、左の尾根に逃げ、少し登る。
巻き道は右側の中間尾根のようなので、雪渓トラバース地点を探る。
傾斜が緩く、幅も狭い地点を選び、トラバースを開始する。
滑って落ちれば、一気に雌滝下の岩場に転落だ、ここは慎重に足を運ばなければならない。
木で穴をほじくり、垂直のステップを確実に付け、1歩1歩渡る。
幸、気温が高いので、雪は柔らかく、楽に踏み込める。
たかが、5Mほどだが、ここが一番緊張した。

中間尾根に上がると踏み跡がある、なるほどここが巻き道か。
この巻き道も簡単ではない、這いつくばって登るようだ。
途中、雌滝を俯瞰的に眺めると、落ち口上左岸に滑滝が見えた。
雄滝は雌滝よりほんの100M上流だ。 巻き道途中から、下に降りる道がある。
堂々とした大瀑で、さすが阿武隈川本流の滝だ、風格がある。
落差は60〜70Mくらい有りそう、近寄っても意味がないので、しばし、眺めながら撮影する。
両岸は滝以上に切り立ち、巻くのは非常にきつそうだ。 中間尾根の巻き道に戻り、どんどん登る。
かなり高度をかせぐと、トラバース的に右斜上する。
上部に窓が見え、トラロープが設置してあるガレ場だ。
下は雪渓、落ちれば一気に雄滝直下だ。 トラロープは滑る、慎重に体重をかけないよう、足元に注意しながら登った。
さて、次の沢へはどうやって行くのだろうか。 踏み跡は左右にあり、どちらに進むか。
とりあえず、目印があり、はっきりしている左に行く。
少し登ると、小ピーク、その先は判然としない。

尾根沿いに下り、傾斜の緩い部分を拾いながら、下って行く。
緩やかに流れる沢が見える、多分、天狗滝沢だろう。
沢に降り、下を見ると滝があるらしい、天狗滝の上に出てしまった。
この滝は帰りに見ることにして、本流方向に下る。
本流を見ると、水量多く、小滝あり、右岸に残雪ありと、降りても難しそうなので、眺めるだけにとどめ、さらに巻いて行く。
前方に小広くなった赤滝沢との出会いが見える、傾斜の緩いところを探しながら、出会いに降りた。
なんとか、ここまでは、あまり残雪の影響もなく辿り着くことが出来た。
雪の少ないのに感謝感謝、暖かい日差しにも感謝感謝。
さあ、今日の最終目的地に着いた、あとは、赤滝と霧降滝を堪能するだけだ。
天気は快晴、雲一つない、これがくせもの、コントラストが強すぎて撮影には向かないのだ。
少し日陰になっている霧降滝へ先に向かう。
20Mほどの幅広直瀑だ、水量が多く近づくことが出来ない。
瀑風を浴びながら、右斜面を登る、丁度見下ろす感じだ。
上のゴルジュも眺められ、展望台のようなところだ。
この滝は、左からはつまらない、右斜めから撮影すると、本当に幅広く舞い落ちているように撮ることができる。
今日は水量が有りすぎ、撮るのも難しい、贅沢な悩みだ。
続いて、赤滝を覗きに行く。 水量多く、特徴あるゴジラの背中の両サイドからは溢れんばかりの水がほと走っている。
ついに眺めることが出来た、感無量である。

ゴジラの背は日陰、右半分は太陽が当たる、どうしてもうまく撮れない。
目で見ているとすばらしいのだが、写真に撮るとどうしてもさえない。
飯でも食べていれば、そのうち雲でも涌いてくるかと期待し、ゆっくり、おにぎりをほうばる。
なかなか雲が涌いてこない、昼食後少したって、ようやく待望の雲が出てきた。
なんとか日陰になった赤滝の姿を収め、帰路に着く。 右岸を少し登り、本流と並行に歩く。
天狗滝沢出会い付近で、本流まで降り、出会いの滑滝を巻いて、上流の天狗滝下へ向かう。
この滝も落差がある、50Mくらいか、水量もあり、なかなか見ごたえがある。
ここから、窓までどう上がるか。 朝きた、天狗滝上へ右から出れば、比較的楽だが、左もなんとか登れそう、木をつかみながら登って見る。
上部岩塔だ、左に巻き上を眺めると、岩塔と岩塔の間に傾斜のきついザレ斜面がある、登れそう。
はいつくばって登ると、だんだん踏み跡らしき道になる。 ザレを越えるとはっきりした踏み跡になる。
忠実に辿ると、窓に出た、この道は朝見た右の道にあたる。
あまり沢への下りには使用しないほうがベターだ、ザレの下りが難しい。
下りのトラロープは怖い、慎重に降りる。巻き道もきついので、ロープを使用しながら降りる。
さあ、一番気をつけなければ、いけないところだ。ロープを出し、雪渓をトラバースする。
鎖を掴み、雌滝下まで降りる、もう怖いところはないので、一安心。
ひとまたぎの所で水量が多くなっているのに気がついた。ひとまたぎも少し危なっかしくなってきている。 気温が高く、雪解けが進んだせいだろう。
今日は疲れた、早く大黒屋の風呂に入りたいなあ。雌滝までは、自分の足跡以外に別の足跡が付いていた。

3時半過ぎ、車に到着、簡単に着替え、大黒屋に行く。
日帰り入浴は630円、風呂は洗い場がないので、ただ浸かるだけ。 石鹸で汗や汚れを流したかったが、秘湯だというのでしょうがない。
ぬるめの風呂で、20人くらい入っていた。ゆっくり筋肉をほぐしながら、時間をつぶす。
風呂上りに売店でビールを買い、通路に掲げてある滝の写真を眺める。
さあ、今宵は、明るいうちに酒盛りだ。酒を飲んだら、眠くなった、明るいうちに寝こむ。
目を覚ますと22時半、もうあまり眠れないが、時間が早いので、なるべく眠るよう努め、寝袋にくるまっている。 薄く満月が見える、明日もいい天気だろう。
夜中2時すぎ、少し寒くなったので、エンジンをかけ、ヒーターで暖を取りながら、FM・ラジオ深夜便を聞く。
4時からのインタビューはいつ聞いてもいい話しが多い、以前聞いた小栗上野之介を逃がした農民の話しを思い出す。
群馬昆虫館の館長さんの話しだが、子供の質問で”なぜ昆虫観察などしなければならないの”という質問があったという。
答えには困ったが、なぜそんな質問をするのか、脳裏に現在の子供は、こんなに接する機会がないのかと思ったという。
「昆虫や動物の世界には、すべていじめがある、しかし皆一生懸命生き様としている、自ら死のうとすることがない。
自殺するのは人間だけだ。狭い人間社会のカプセルの中での考え方しか出来なくなってしまったから困ったら自殺する。
小さい時から、野山を駈け、狭いカプセルから外の世界を覗いてごらん。
一生懸命生きる昆虫達を見たら、いじめや、死のうなどと思わなくなるでしょう。自分の世界が広がるのです」 と答えたという。
カップラーメンをすすりながら、涙が出てきた。
なぜ、自分はいつも一人で誰もいない危険なところへ行くのだろう。絶対に死なない、怪我をしない、元気で帰るぞーと改めて思う。
二日目、今日の予定は一里滝沢を右俣の天水滝まで行って引き返し、最後に白水沢にある衣紋の滝を見てから帰る予定。

5時50分出発、風もなく、日差しが眩しい暖かい朝だ。
林道を10分ほど歩き、正面に見える南沢の窪目指し、降りる尾根道に入る。
一里滝沢は南沢の30M上流に出会っている。本流と同様な水量の多い沢だ。
すぐにF1の滝が立ち塞がっている。本流には釣り師の姿が見えた。F1は右尾根に上がり巻く。
しばらく沢と並行に歩き、緩くなったところで、沢に戻る、どうやら釣り師達が付けた跡らしい。
一里滝沢は明るい沢だ、日差しが燦燦とふりそそいでいる。
歩き始めて1時間、左岸の高い所から落ちる、一里滝に到着。
昨日林道を歩いていて見えたのは、この滝の上部だろう。
それにしても落差のある滝だ、100Mくらいあるだろう。
直瀑の下にカモシカがいる、カメラを出している間にいなくなってしまった。
この滝には正面から太陽が当り、きらきら光っている。しばらく写真を撮ってから、本流を登る。
10分ほどで三条・黒滝、右俣との分岐だ、水量比3:2。ここは水量の少ない右俣に入る。
右へ曲がると10Mの滝、その奥に天水滝の上部が見える。
雪が沢を塞ぎ、水流が見えない。慎重に雪上を歩く。
ここは、左のザレ斜面から大きく巻き、小尾根を乗り越す。
正面に二段の大きな天水滝の姿が望める。落差は35〜40Mくらいありそうだ。ロープを使い、滝前に降りる。
全体像を見るには、尾根からがいい、下に出ると、上部がほとんど見えない。
今日はここまで、帰路は手前枝沢を少し登り、傾斜が緩くなったところで、尾根に上がる。
ロープを出し、10M滝横、枝沢にある雪渓に乗る。ゆっくり、雪渓を下り、本流に戻った。
下りながら、単独の釣師、F1上部降り口付近で二人の釣り師に出会った。
F1の下に降りようとしたところ、また三人の釣り師に会う。今日朝一で本流にいた人達だった。 「二組いるよ」といったら、あきらめて戻った。
出会いで、ゆっくり昼食、南沢出会いにテントが一張り、まきを拾い集めている人がいた。
今日は歩き6時間だが、昨日の疲れが残る、ゆっくり車まで戻り、大黒屋を通過し、登山道を歩く。
登りになると、足が重い、温泉神社から右に分かれる衣紋の滝コースへ行く。
一尾根越し、白水沢に降りる、道はここまで。滝は右に曲がったところにあるので、沢を少し辿らないと見えない。
二人の夫婦者がはだしになって辿り、滝前にいた。
正面はつまらない、滝前に上がり右岸斜面を少し登る。アングルを考えながら、撮影、落差は20Mほどか。
戻るのを待ち構えるように、シャッターを押してほしいという。 はだしでは、本当に冷たいという、ほんの50Mほどだが。
さあ、これで予定はすべて終了、ゆっくり足をひきずりながら車に戻った。
13時40分出発、289号から国道4号に出る。ひたすら一本道、途中、疲れから来る眠さにひっしに耐え、道の駅庄和まで走る。
休むと筋肉のあちこちが痛い、連休の渋滞もなく、スムーズ、都内は一発通過、246に出る。
ここは右折ラインがないところが多いので気を付けなければならない。
多摩川を渡ると安心だ、予定より早めに自宅に着いた。

車――阿武隈川――雌滝――雄滝――赤滝――天狗滝――車

6:30 7:00   8:10  8:50  10:40  13:05  15:35

 

車――一里滝沢出会――里滝――天水滝――車

5:50  6:10   7:05   9:00  11:40

 

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