丹沢・石小屋沢


平成10年夏石小屋沢。
石小屋沢は今まで行ったなかで唯一、滝から落ちた経験のあるほろにがい沢。 ユーシンから先の沢は、林道歩きが長く、一日の行動時間がかかるので、 昼間が長い夏場しか入ることが出来ない。
10年前頃までは、一般の車もユーシンまで入れた。ここまで車でくればアプローチ は楽なのにな、と過去の思い出が頭に浮かぶ。 朝早く家を出、ゲート前の駐車場に6時頃着く。
ユーシンロッジに二時間弱で到着。小屋じたいがなんとなく寂びしそうだ。
小屋の前の林に鹿が数頭、伐採された枝の若芽を食べていた。 鹿は私に気づかずゆったりと食べている。 普通に近づいていくと鹿はあまり早く逃げない。 少しなごりおしそうに、遠くでみつめながら逃げていった。
檜洞は初めてなので道を確認しながら進む。 公衆トイレとユーシン小屋の間の小道に入り、どこかの大学の薬学部 とかかれた小屋の前を通り、発電所方面に向かう。
途中、発電所への道を見送り、踏み跡のある道を沢方向に進む。 この道は数カ所ザレていて分かりにくいが、沢が下に見えてきたので早めに沢に降りる。 降りたところは発電所の取水口の少し上のところ。
少し行くと、腰まで入ってのへつり、ロープがある。
しばらくいくと、今度は水しぶきを浴びて小滝の裏に潜り、そこからトンネルのように抜ける。 本流自体が結構おもしろい。
石小屋沢出会いには目印の大岩がある。
すこしいくとF1(8M)チョックストンの滝、あまり水流がない。 ここは左を登る。
続いてF2(10M)の滝、右側から登り、あと一歩、てがかりがあればと思うところに 錆びたハーケンがある。 それを利用し、落ち口に水を浴びながらはい上がる。
しばらくしてF4(15M)の滝、二等辺三角形の形をしている。 ここは右側から高巻く。
続いてF5(8M)ここも右側から巻く。
F6(10M)の滝はトイ状の斜瀑、ここは水流を直登。
そしてこの沢の大滝ともいえるF7(15M)の滝
これ以上は水流も少なくなり、大きな滝もないので、ここで昼食と休憩。 ここまで似たような滝と滑が続き、ゴーロの無い、さわやかな沢だ。
休憩後、慎重に元来た道を、足下を確認しながら降りる。 F6,F5,F4,F3と順調に降りてきた。
F2の落ち口から下を覗くと、いまいち足を置く位置が難しい。
残置ハーケンを利用して行けば何とかなるかな、 と気軽な気持ちで、ハーケンに手持ちの麻ロープをカラビナを利用して結び、降り始める。 どうしてもハーケンの下部に降りるには、ロープにぶら下がらなければ足場がない。 登りは大丈夫だったので、思いきって全体重を掛けてぶら下がろうとした。
その瞬間、体がふあと宙に浮き、空中をそのまま落ちた。 何が起きたかわからない、あっという間だった。 落ちるとか、怖いとか、を感じないまま、頭と右肩から滝壺へ落ちた。 落ちた瞬間、ズボと水の音がし、頭が底の砂に当たった。
落ちたんだなあと感じ、すぐ頭、手足等、をさわりまくり、傷や血が出ていないかどうか夢中で調べまくった。 不思議と血も出てないし、手足も動く。
ああ、何とも無かったんだなあと、ほっとし、手に持ったままのロープを見ると、 なんと、先に錆びたハーケンがくっついている。 ハーケンがそのままスッポリ抜けたのだ。
落ちた滝壺をよく見ると、深さは30CMほど、底にザレタ砂が10cmほど積もっており、 それがクッションの役目をしたようだ。 落ちた高さをみると7Mくらい、周りの岩にも当たらず、宙を飛んで柔道の受け身 のごとく、頭と右肩からつっこんだらしい。
それにしてもよく何とも無かったものだ。落ちてから状況を色々推移してみるととてもラッキーだった。 落ちたすぐ横には岩があり、水もあまり無かったのに。まあこれも経験かと、げんきんなもの。 しかし、ここでけがでもして動けなくなったら、誰がいつ発見してくれるのだろうと思うとゾッとする。 これからは慎重に行こう、残置利用は良く確かめなくては、と改めて思った。
ザックも半分上が水に浸かったので、カメラはどうかなと見ると、水に濡れている。 試しにシャッターを押してみると大丈夫のようだ。 とにかく、少しでも早く下ろうと思い、慎重にユーシンまで下る。
ここまで気が張っていたのか、あまり痛みは感じなかったが、 林道を歩いていると、なんとなく歩きがぎくしゃくする。 結構足腰に打撲があるようだ。
途中、カメラを使用しようと電源を入れたら、モニターが出ないし、再生画像も見られ無くなっていた。 水が入り、ショートしていかれたらしい。あとはとにかく早く帰らねば、と車まで急ぐ。
2、3日打撲の影響で、会社でのラジオ体操が出来なかった。
後日、カメラを修理に出したが、メインメモリーがいかれて修理不能だという。
せっかく撮った画像なのに、保存だけはしたいのだが、いうことをきかない。 また、あの落ちた石小屋沢には行きたくないのに。
帰って来たカメラを何日か画像が取り込めないかと操作していたら一週間後くらいに、 画像の取り込みだけは出来るようになった。 行ったことが無駄にならなくて本当に良かった。 しかし、カメラの撮影機能はついに不能のままで、そのままおしゃかになってしまった。

駐車場―――ユーシン―――出会い―――大滝―――駐車場

6:00  7:50  9:00  11:30 16:00
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