石砂山・ギフチョウ


4月9日(土)晴れ。
春の女神を訪ねて、石砂山。
カタクリの開花と同時に、華麗な舞いを見せるギフチョウを、一度は 見たいと思って、神奈川県で唯一見られることができる、石砂山に出かけた。
ギフチョウは、日本の蝶愛好家にとって、ゼフィルスと並ぶ人気の蝶で、春の女神と呼ばれている。
早春のカタクリやすみれ、桜などで吸蜜し、モンシロチョウなどと違って年一回の発生のみで、短い将来を終える。
発生時期は、3月下旬から4月下旬までだ。 昭和3、40年代は丹沢周辺の至るところで見られたという。

しかし、今では、神奈川県で唯一残る自然発生場所は、この藤野町にある石砂山周辺のみである。
今では、町や県の保護が徹底し、この時期に行けば、自然な姿を見ることができるようになった。 日本における東限が、ほぼこの石砂山だ。
藤野町にある石砂山にギフチョウがいることは知っていたが、そうは簡単に見られないだろうと思い、今まで行くことを躊躇していた。
一度は見てみたい、との思いから、丁度桜も満開になった週末に出かけてみた。 今年は、ほとんどの場所で同時満開となり、今日はどこも花見客で一杯だろう。

牧馬峠から篠原地区に下り、適当な路肩に車を止める。 東海自然歩道になっている、石砂山への道だが、入り口がわからず少しうろうろ、道路脇にあった道標を発見し、反対側にある、狭い山村道路に入っていく。
雰囲気のいい山村道路を歩いて行くと、民家の前から、左に登る登山道になる。 あまり、傾斜のない山道を尾根沿いに登り、最後に少し急登すると石砂山の山頂にでた。
ここまで、ギフチョウの姿はなく、山頂でも見ることができない。
山頂には、二組ほどの先行グループがいたが、彼ら達にも、まだギフチョウの姿は発見できないらしい。
しばし、周辺を探したりしながら散歩したが、見ることができず、あきらめてビールを飲みながら、すごす。
また、一人登ってきた。 それとなく話しを聞いていると、「17年通っているが、満足できる写真は2,3枚、合えれば幸運ですよ」なんて言っている。
なんとなく、山頂から、牧馬峠方向の方が比較的よく見れるらしいので、地図にない牧馬峠への道を降りる。
急ザレを下ると、比較的楽な尾根道になる。 道はしっかり踏まれ、登山道と変わらない。
小さな女の子を連れ、おにぎりを食べている若いお父さんに出会った。 蝶を見ませんでしたかと聞くと、「その辺にいました、写真も携帯で少し撮れました」という。

およよ、なんていうことだ、がぜん張り切る、ぜひ、俺もと、周辺を探しながら、下る。
中沢地区への分岐を過ぎ、いくらかつつじが咲いていたので、目をこらしながら歩くも、一向に姿が見えない。
少しルートを変えて、とある小尾根を登り出した時、目の前を一匹の蝶が飛んで行った。
”いた、ギフチョウだ”、すぐにカメラの電源を入れ、周りを見回す。 すると、二匹の蝶が、尾根沿いの道を行ったり来たりしている。 時折、木の葉や、道端の倒木に止まる。
静かに、飛び方や習性を眺めていると、何回か羽を広げて止まるので、比較的撮影しやすそうだ。
数枚撮り、さらに小尾根の頂上に行くと、一人のアマチュアカメラマンが、写真を撮っていた。 そこには、数匹のギフチョウが間断なく、飛び交い、時折羽を休める。
それとなく聞くと、小1時間でフィルム1本撮ってしまったという。 しばらく一緒に写真を撮り、その人が去ったあと、私一人でまた小1時間撮っていた。
その後二人のカメラマンが来たので、その場所を譲り、下山する。 あまり、満足する写真は撮れなかったが、なんとかカメラに収めることができたので、満足満足。
どんなところに止まり、どんな姿で見られるのか、最初の一匹を見るまでは良くわからなかったが、だいたいの習性が分った。
日の出1,2時間頃から活動を始め、気温が上がるとともにだんだん動きも活発になり、だんだん山の上の方に上がってくる。
オニヤンマみたいに、一箇所を行ったりきたりしながら、仲間とともにぐるぐる回る。 時には目の前を数匹の蝶が飛び交う。

撮影は比較的簡単で、時折地面の枝や木の葉の上に羽を広げて止まるので、それまで静かに待っていればいい。
しかし、仲間がちょっかい出すとすぐに飛び出すので、短い間で数秒、長くても10秒程度の間がシャッターチャンスである。
飛んでいる姿はとても早く、非常に撮影は難しい。 気温の上昇とともに、動きが活発になり、止まる時間も短くなる。
かなりの個体が見られるようになった。 戻る途中にも、何人か蝶と静かに格闘している、写真家の姿に出会う。
まあまあの写真が撮れたので牧馬峠に下った。 朝、一台しか止まっていなかった峠の車も、道路脇には十数台も止まっている。
道路に出てから、ふと目の前に一匹のギフチョウが飛んでいるのが目に入った。
ああ、朝方あれほど見たいと思って見られなかったギフチョウが、ここでも簡単に見られるんだ、と思いながら、飛び去る行方を眺め、感慨にふけりながら、篠原に下る。
帰り際、篠原川の出会いにあるらしい”青田の滝”を覗いて行こうと、相模湖畔日連地区に入り、モテル先の道路に車を止める。
簡単に、出会いまで行けるだろうと思ったので、カメラだけを持ち、湖畔の山道を行く。 なかなか湖が切れず、反対側にある道路に出てしまった。
さらに、民家の先から、湖畔沿いを藪こぎしながら進む。 なかなか、出会いが見えてこない、おまけに湖岸沿いは険しく、巻いていくのも大変だ。 ロープを持ってこなかったことを悔やむ。
なんとか、出会いらしい音がするところまできた。 滝らしい音がするのだが、対岸の正面に廻らなければ、その姿は見えない。
出会い付近の両岸は切り立ち、簡単に人を寄せ付ける雰囲気ではない。 なんとか、上からでも覗いて見たいと思い、トラバースを試みたが、ロープなしでは行けず断念した。 近いうちに、別ルートで攻略して見たいと思う。
帰りは、すぐ上に見えた涸れ沢の石積み堰堤まで上がって見ると、山道らしきかすかな踏跡があった。 それを忠実に辿って行くと、廃屋と重機がある林道にでた。
町道に出たところには、町の立ち入り禁止と書いてある看板と鎖がかかっていた。
まあ、滝は付録みたいなもんで、今日は念願のギフチョウが見られただけで満足の一日でした。

車―――石砂山―――――車

7:30  8:30   11:00

 

トップへ戻る