大猫山・大猫平


8月8日(日)快晴のち曇り。
ふと目にした記事を見て、むしょうに大猫山へ行ってみたくなった。 剣岳の眺めがいいらしい。
高校時代、初めて登った3000Mを越える北アルプスの山だ。 それが翌年の測量で2998Mになってしまった。
3000Mを切ったのは残念であるが、それでも、堂々とした剣の姿は目に焼き付いている。
厳しい岩稜のため、長い間、測量のための基石が山頂へ運べなかった。 それが今年設置され、標高も再測量されるという。
60kgもある基石を、高校生がリレーで室堂まで運び、山頂へはヘリで運ぶそうだ。
立山側から見る剣は、女性的な姿をしていたが、大猫山は反対側にある山で、岩の殿堂にふさわしい姿が見られるらしい。 登山道は3年前に開かれたばかりで、最近序序に人気が出てきつつあるという。
しかし、いざ行くとなると日本海側から回り込まねばならないため非常に遠い。 夏休みを利用し、ようやく決行とあいなった。

前日、ゆっくりと一日車を運転し、松本、糸魚川、魚津と一般国道を走る。
日本海は波もなく穏やかで、所々海水浴の家族連れで賑わっているが、湘南などと違ってこじんまりしている。 山側は雲に覆われ、雄大な北アルプスの姿を拝むことはできない。
黒部川を渡る。これがあの有名な黒部川だと思うと胸が高鳴る。
国道脇のスーパーで食料を調達し、冷えたビールはもっと近くで買えばいいやと、酒類は買わなかった。 国道を左折し県道に入ると、すぐに山道になり、民家もぐっと少なくなる。
コンビニはおろか、店の存在もあやしくなってきた。 それでも酒屋くらいはあるべと思いながら走るが不安になってくる。
馬場島に至る県道に入り、ますます民家がなくなる、やっと酒屋の看板を見つけ、ほっと一息ついた。 国道から馬場島まで商店はこの民家風酒屋のみだったため、買い物は早めにすることにこしたことはない。
なんとか酒も調達でき、安心した気持ちで馬場島に着いた。 時間は16時、まだ早いので、登山口までの道を探る。
無料駐車場の先から左に折れる林道があり、この道がそうらしい。

川沿いのダートをゆっくり進み、工事用に気持ち盛られたコンクリート道を走る。 最初の橋のところで通行止めの看板が出てきた。
橋手前には3台ほど登山者のらしい車が止めてある。 車を止め、橋の先の道路を点検すると、まだ行けそうだ。
ゆっくり走り、もう一つの橋を渡るとほどなく終点の堰堤横の駐車場に着いた。
ここに止まっていたのは工事用の車3台のみで、一般車は止まっていなかった。 工事の人に聞いてみたが、ここに止めるには特に問題なしとのことで、日曜は休工とのことである。
駐車場脇の登山道入り口を確認し、少し気が引けるので、最初の橋際まで戻る。
当初は、馬場島駐車場で寝ようと思っていたが、戻るのもめんどう、ここは静かで誰もいないし、剣の一部も見える、ここで寝ることに決めた。
飲むにはまだ早いので、ビールを沢に浸し冷やしておく。
ゆっくり景色を眺めていたら、なんと大型ダンプが橋を渡って行くではないか。 ダンプは白萩川への道を曲がっていった。工事個所がすぐ先にあるらしい。
次にバックフォーがガラガラ降りてくる、さすがに橋は渡れない、見ていると簡単に橋の下の川を渡ってくる、なるほどなあと感心してみていた。 車を止めた手前にバックフォーを簡単に止め、空のダンプが運転手を助手席に乗せ、これで今日の工事はおしまいと去っていった。
堰堤脇で工事していた人達の車も降りてくる、さあこれからは静寂なひとときだ。
雲も徐々になくなり、茜色に染まる峰峰を眺めながら、美味しくビールをいただく。 酔いも廻り、そろそろ寝なくっちゃ、とうつらうつらしていたら、ラジオからなつかしの歌謡曲特集が流れてきた。

近頃は涙線が緩くなり、あまりのなつかしさについポロリとでてしまう、歌はいいなあ・・・・。 歌を聴いているとだんだん眠気もさえてきた。
外に出てみると満天の星空、快晴無風、半袖でも寒くない。 久しぶりに、はっきりした天の川を見る、光害のない星空は何年ぶりだろう。
実に贅沢な気分だ、夕焼けの山、なつかしの歌謡曲、満天の星空、川のせせらぎなどなど。 車に戻り、あっというまに熟睡、目がさめたら3時すぎだった。
空には下弦の月がこうこうと光っている。 雲一つない快晴だ、山の天気は変わり身が早いので、朝一の登山に備え、早めに準備する。
朝食中の薄暗い中、早くも2台車が入っていく。 さあ、自分も早くと、林道を10分ほど歩き、登山道入り口に立つ。
先行者はどこに登るのだろうか。 いきなり急登が続く。

直径が2Mを越える立山杉の巨木が、登山道脇に多く見られる。 登山口が950M、大猫平が1850M、標高差は900Mもある。
途中、朝日を浴びる剣岳や大日岳がとてもきれいだ。 残念なのは、剣岳方向が逆光になってしまうことだ、午前中は剣の真上に太陽がある。
しかし、贅沢はいえない、鋸状の剣の尾根がシルエット状によく見える、すばらしい眺めだ。
大猫平までが遠い、少し先が明るくなると、そろそろかなあ、と何度も思うことの繰り返し、なかなか着かない。 3つくらいの尾根を越えて、やっと大猫平の端に着いた。 ここまで3時間半もかかってしまった。
大猫平は規模こそ小さいが、小さな池糖が丘状の地形に幾つかちらばってあり、ほっとする雲上の楽園だ。

ここからの剣の眺めは雄大ですばらしい。 ちんぐるまや、残りの日光キスゲが咲いている美しいところ。
大分雲が出てきた、だんだん山頂付近を覆いだしている。
曇ってくると早い、大猫平から少し登ったところで、大猫山山頂はあきらめ、少し大猫平を楽しむことにした。 ぶらぶら写真を撮っていると、早くも上の方にガスがかかってきた。
まだ10時前なのに、朝の快晴の天気がうそのようだ。
頂上(2055M)に行かなかったのが正解だろう、それほど眺めがかわるわけではないし、剣も充分見られたことだし。
これ以降、剣岳の姿が見えることはなかった。 下りは上りより少しは早く歩けるだろうと、思っていたが、ほぼ同じ時間がかかった。 これは、いかに上りがきつい登りだということがわかる。
頂上まで行っていたら、さらに往復2時間はよけいにかかる計算だ。
しかし不思議だ、誰にも会わないのだ、下の駐車場に止めてある数台の持ち主は何処へ登ったのだろうか、地元でない私にはかいもくけんとうがつかない。
登山道はしっかりしており、滑りやすいところにはトラロープがあって、歩きやすかった。 運良く初日が晴れたため、今日中に称名の滝を見て、家路に向かうことにしよう。
馬場島から、上市経由立山町に入る。 称名の滝までは、一本道でどんづまりのわかりやすい道だ。
さすが、落差日本一を誇る、名瀑のため、観光客で一杯だ。 写真を撮る位置もだいたい決まってしまう。
ここは記念写真程度にとどめ、早々に車へ戻った。 さあ、あとは一気に帰るだけだ、着くのは何時ころになるだろう。
帰りは飛騨市から安房トンネルを抜け、松本にはいる。 昼間の疲れが出て、非常に眠い、夜の運転は疲れる。
どうにも我慢できなくなって、2度ほど道の駅で仮眠する。 とどめはパーキングエリアで朝まで寝てしまった。
家には夜半過ぎには着くと電話しておいたのだが、着いたのは翌朝の7時半であった。 少し強行軍だったかな、家でまた半日寝てしまった。

登山口――大猫平―――――登山口――――称名の滝

5:30  9:00(10:30)  13:30     15:30

 

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