中津川・朱滝訪問紀


福島県にある、中津川・朱滝を見る作戦計画を練った。
今年の夏休みに、一度考えて見たのだが、ちょっと難しそうなので、あきらめて秋田行きにしたのだが・・・・。
9月に三連休が2回あるため、再度考えなおしてみる。 天候と気温も不可欠、寒くなれば、万が一のビバークでもなるとつらい。
@案。
浄土平から入り、谷地平から中吾妻山の鞍部を越え、吾妻山神社から、破線ルートをとり、朱滝に至るルート(谷地平避難小屋泊)。
A案。
天元台から、ロープウェイ、リフトを乗り継ぎ、源流から下るか、又は破線登山道を下る(西吾妻山避難小屋泊)。
B案。
グランデコスキー場からゴンドラで登り、西吾妻山避難小屋経由、源流を下るコース(西吾妻山避難小屋泊)。
以上、幾つか考えたが、A案に決めた。
それは、どうも破線の登山道が廃道近いこと、中吾妻経由は不安が残る。
ただ、天元台ロープウェイの始発は8時20分(土日祝は8時)、下り・リフト最終は16時とのことなんで、まず日帰りは無理。
ヤケノママまでの登山道が無理でも、沢を下れば辿り着ける。 最悪は、沢中ビバークだが、天候さえ良ければ問題ない。
日帰り用のバッグしかないため、いつもの持ち物に、寝袋を加えるだけだ。
さて、いよいよ決行の三連休、天気は良さそう、気温もまあまあのようだ。
9月16日(金)午後2時出発、246で日本橋を目指し、昭和通りから国道4号線を北上する。
思っていた以上に都心が込んでいて、通過するのに大分時間を消費する。 4号線バイパスに入るとスムーズに流れ、なんとか目標の午前0時前までに、近くまで行けそうだ。
9時間走りぱなし、いささか疲れたころ、猪苗代湖に到着、セブンでビールを仕入れ、桧原湖岸まで走る。
11時40分、車中泊予定の桧原湖岸横の駐車スペースに着いた。 やっと美味しいビールが飲める、簡単な食事をし、すぐに眠りに付いた。
午前5時、やや肌寒い感じがして目を覚ました。 外はそれほど寒くはないのだが、安い寝袋は薄くてだめだ、天候は快晴。
湯を沸かし、カップヌードルを食べ、一息、まだ早いのだが、早めに出発。
途中、白布峠から、朝日の当たる磐梯山と桧原湖が眼下にきれいに見えたので、写真を撮る。 道路横の不動滝を撮り、天元台ロープウェイ乗り場に着いた(6時半)。
ロープウェイ上の駐車場は、ほぼ満杯近く、かなり人もいる。 心配になって、係員に始発の時間を聞くと、”まもなく7時から動きます”とのこと。 あわてて、仕度をし、乗り場に並んだ。
今日は、グラススキーの大会があり、臨時便が出るのだそうだ(時々あるそうで、9月25日市民ハイクの日もそうだ)。 これは、ラッキー、1時間の余裕が生まれる。
3便目、7時15分ゴンドラに乗り込んだ、周りは、大会関係者ばかり。 リフトは動いているが、誰も乗っていない、快晴無風のさわやか気分で、リフト3本を乗り継ぎ、北望台に着いた。
さあ、大凹経由で源流を下ろう。 かもしか展望台経由、湿原と地糖が光る大凹まで30分、ガスもなく、周りは良く見える。
誰もいないと思っていたら、先行者が3人いた。 靴を履き替え、誰もいなくなったところで、湿原に足を踏み入れる。
湿原の原を突っ切り、低い所を目指して歩くと、水音がする。 少し藪を掻き分け、細い水流に降り立つ。
すぐに、沢幅は広がり、緩く蛇行して流れていく。 滝もない、緩やかなゴーロをひたすら、下っていく。
分岐や、目印になりそうな所は振り返りながら頭に叩き込み、たんたんと下る。 左岸に幾つか分岐の沢を確認しながら、ヤケノママを目指す。
それにしても、以外と時間がかかる、ヤケノママがやけに遠い。
途中から、岩魚の姿も見え出す、深い淵では、水面近く堂々と泳いでいた。
似たような、赤壁が時折でてきて、これがヤケノママか、いや煙がない、違うなあと何度も訂正。
やっと、かすかに煙りたなびく、本物のヤケノママに着いた、ここまで大凹から2時間30分かかった。
周囲をあまり観察する余裕もなく、朱滝落口を目指す。 滑滝が出てきた、朱滝落口も近い。
ここまで、ひたすらゴーロ歩きだったが、ちょっとしたキャニオニングの気分が味わえる。 巻きは簡単で、朱滝落口まで5,6個のくねくねした深い釜のある滑滝が続いていた。
さあ見えました、落口が、高い、下が遠く見える。 覗き込むと吸い込まれてしまいそうだ。
うまく巻き道が拾えれば、1時間で降りられるかな、これでうまくすれば、明るいうちに、登山道へ戻れるな、と甘い考えで、巻きに入る。
巻きは滝上から、左岸に続く小尾根ですぐわかった。 朱滝上部を眺めながら、やせた小尾根を登りきると、平らな疎林帯に出る。
滝音と崖を確認しながら、水平に200Mくらい下る、さあそろそろ沢に降りられる道があるかなあと、覗いてみるが、まだ急な崖らしく、降りられそうもない。
何度か、ちょっと降りては、また上り返しと繰り返し、だんだん下流の方へ追いやられる。 たしか、2,300M下流、対岸に沢がある近くが巻き道らしいのがあるってことだが・・・・。
時間も刻々と過ぎ、いささかあせりぎみ、かなり疲れてきた。 対岸に20Mくらいの滝が見えるところ付近で、ぎりぎり降りられそうだったので、少し降りて見る。
一見降りられそうだったが、急な草付きになり、滑れば下まで落ちそう。 中途から、木のある上流に逃げ、岩の下を巻くように下ると笹藪帯。
その中に水の無い小窪があり、笹を掴みながら、ゆっくり注意して降りると、沢が見えてきた。
最後笹を掴んで、2Mくらい崖をおりて、ようやく沢床に降り立つ。 なんと、落ち口から沢に降り立つまで2時間30分かかってしまった。
もう、喉はカラカラ、足はガクガク、今日上に巻き登る力もない、沢でビバークを決めた。 小沢の冷たく美味しい水を飲むと生き返る。
朱滝の50M下流の大石下に、平らで綺麗な砂地のいいビバークサイトがあったので、今宵はここに泊まることにした。 こうなれば、あとはゆっくりだ。
疲れをとり、寝袋を出してゆっくり、ビバークの準備をする。 十分休んでから、朱滝見物へおもむろに向かう。
丁度太陽が真正面にあり、虹が大きくかかっていた。 滝下だと全景が入らないので、少しがれ斜面に登る。
ゆっくり、時間にとらわれず、60M大滝の華麗なる姿を眺めることが出来るのは、最高の贅沢だ。
贅沢なほど虹が出ているので、スローシャッターが切れない、スロー写真は明日の朝までお預けだ。 快晴で雨の心配がないのもうれしい。
さあ、日没まで酒でも、飲みほそう(ビール飲みたいが重いので車に置いてきた)。 火がないので、焚き火ができないのは残念、一人乾杯しながら、夕方まで滝を眺めつつ、ゆっくり飲む。
少し暗くなったところで、寝袋に入り、3時間ほど熟睡した。 目が覚めると、やや、寒く感じる、カッパを着込み、月明かりの星空を眺める。
そうだ、明日は仲秋の名月、月明かりの滝は撮れないだろうかと考えた。 丁度、朝方になれば月が正面に回ってくるはずだ。 それまでは、寝返りを打ちながら、夜明け近くまで過ごす。
3時ころ、月が見えてきたので、カメラを取り出し、月明かりの滝写真を試みる。 以外と暗くて、滝がはっきり写らなかった。 また、寝袋に入り朝まで過ごす。
気温はそれほど低くなく、多分12,3度だろう、風もない。 やっと夜が明けてきた、今日も快晴だ。
十分明るくなってきてから、起き、パンをかじる。
出発の準備をしてから、朱滝の写真を撮りに行く。 スローの写真を撮り、滝に分かれをつげ、戻る。
ここで、少々失敗したことに気づいた。夜ASA感度を200にしたままだった。 でもまあいいか、多少ノイズが多くてもと、撮り直しにはいかなかった(ほんの2,3分なので行っとけばよかったな)。
さあ、疲れも少し取れたし、美味しい水も仕入れ、気合を入れて、登り返さなくては。
6時50分出発、昨日降り、目印をした小窪下まで下る。 ここは、右岸に美味しい水の流れ落ちる小沢と滝がある沢との中間付近だ。
ほとんど昨日歩いた道を拾いながら、朱滝落ち口に迷わず降りる事ができた、巻き上がりに、約1時間かかった。 もう迷うところもなく、危険なところもない。
登山道上がりを12時過ぎ頃と考え、今日はゆっくり、周りを眺めながら歩く。
ヤケノママの近くで川が白く濁っているところがあり、濃いところを触ってみると、やや熱く、温泉が出ていた。
二俣近くで釣り人と会う、藤十郎方面から入ってきたらしい。 しばらく会話をする。仲間がきて、もう一人中吾妻方面から来た釣り人がいたらしいが、また消えたといっている。 各々一匹しか釣れていないらしい。
この辺を釣って、釣り下がり、また戻るらしい(この辺は釣り下がっても釣れるらしい?)。
ヤケノママまでは、何とか道はあるらしいが、沢沿いの道は、彼らにも見つからないらしい。 登りも下りも2箇所の横断地点を注意深く見てきたが、自分にも、かいもくわからなかった。
釣り人でも、人に会うとほっとする。 10分ほどして彼らと分かれた。
さあ、長い道のりをたんたんと詰めよう。
中津川本流の水は、飲めない、なぜならば、源流が地糖で生暖かく少し濁りがある、それに温泉も混ざっているからだ。
途中、小さな岩間滝があるところに、右岸から染み出している冷たい水が美味しい。 ここで、水を入れ替える。
やっと、細く狭く源流の雰囲気になってきた。 降りてきた記憶を頼りに、確かこの辺だったなあと思って、藪をこいで沢から上がったら、少し地糖はあったが、笹藪が続く。 少し沢から出るのが早すぎた。
藪を漕ぎながら、地糖のある草原を拾って行くと、前方に登山者が見え、降りたところと同じ、大凹の木道に出られた。
時間は12時40分、少々かかったが、フィナーレとしては、最高だ。 ゆっくり休みながら、靴を履き替える。 草原を吹き抜けて行く風が涼しく気持ちいい。
西吾妻山は100名山になっているが、展望はなく、またそういう気持ちもないので、ゆっくりリフトまで戻るだけだ。
まだまだ、下から登ってくる人もいる。 石の階段のような下りは、足にこたえる。
リフト3本、ロープウエイとたんたんと下る(14時20分)。 三連休の中日で、日中込んでいたらしい。 駐車場横の路上にも、入りきれない車が沢山止まっていた。
グラススキー大会は、今日もあったらしく、後片付けをしていた。 一串100円の、コンニャクが美味しかった。
温泉に入って行こうかとも思ったが、手の切り傷がしみるのと、長時間の運転には、かえって疲れるのでやめて、着替えを終え、一路帰途につく。
途中、連休で少し渋滞する個所があったが、わりあいすんなり走れ、都内だけは、首都高を使って抜け、23時40分、自宅に着いた。
天候に恵まれて、希望通り朱滝まで行かれ、虹の滝、月光の滝、朝一の滝と満足の旅でした。

 大凹―――ヤケノママ――朱滝落口――朱滝下   朱滝下―――朱滝上―――大凹

 8:40   11:10  12:05   14:30    6:55    8:05   12:40

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