皆既日食ツアー

屋久島皆既日食ツアー
今回の計画は3年前に始まった。
しし座流星群以来大きな天文イベントがなかった天文界、一生に一度見られるかどうかの日本における皆既日食だ。
しかしながら、島に渡る渡航手段がなかなかとれない・・・。
予約等で5連敗、ほぼあきらめかけていたが、夢が実現することとなった。
3年前からの準備が、たった1ヶ月前にとれるとは・・・。
ネット予約はたった30秒で一杯に、フェリー予約は電話が繋がるころには、完売しましたである。
最後の望みをかけて、出勤前の30分、リダイヤルでかけまくっていたら、偶然呼び出し音が流れた。
あわてて確認し、屋久島便高速ロケットの予約がとれた。数日後鹿児島便もとれ、屋久島行きが決まる。
それからはトントン拍子にレンタカー、テントサイト、民宿と次々と日程が埋まり、準備は整った。

あとは、運を天にまかせるだけである。
今回もいつもの三バカトリオで、前々から皆既が見えるところなら何処へでもというつもりで、予定していた。
結局、屋久島行きがとれたことで、日食前後に縄文杉まで行き、皆既日食を見、うまい焼酎が飲める、という甘い夢を見ながら予定線表を組む。
三連休の前の金曜日夜に出発、高速道路2100円(厚木〜鹿児島)片道15時間の旅に出たのでした。
三人で交代しながら運転、渋滞もなく、翌土曜日の四時すぎに鹿児島到着。
まず、今日の宿泊予定地、道の駅“いぶすき”へ向かう。
鹿児島は直射日光がさし、非常にくそ暑い。
道の駅は桜島が正面に見える位置にあり、ロケーションは非常によろしい。
テントが張れそうないい芝生もあり、バッチグーだ。道の駅で酒とつまみを買い、準備する。
売店が終了したのを見計らい、テントを設営する。
桜島を眺め、夕暮れの海を臨みながら一杯はじめた。
ほとんど寝てないので、酒の廻りが速い。早々にテントと車に分かれ、眠りについた。

19日は、長崎鼻から番所鼻と開聞岳の名所を尋ねたが、頂上付近は常に雲につつまれ、秀麗な全体像を望むことは出来なかった。
今宵の宿は天文館にあるカプセルホテル、まずは5日間預けられる近くの駐車場を探す。
天文館周辺には沢山の駐車場があり、料金もいろいろだ。
たまたま見かけた近くの駐車場で交渉し、4000円で成立(あとで歩いたところ1日500円というところもあった)。
まずは風呂で汗を流し、居酒屋が開く時間まで休憩しながらじっくり待つ。
そば打ちの先生から紹介されたという居酒屋へ行き、美味しい薩摩名物と芋焼酎を堪能した。
疲れと酔いもあり、カプセルでは良く眠れた。
早朝、ラジオ深夜便を聞きながら目を覚まし、大風呂で体調を整える。
ゆっくり時間をつぶし、10時前にホテルを出、車に戻り荷物を整理してから出発する。
徒歩5,6分で高速船乗り場に着く。
大きな県営駐車場があるが、時間貸しのみのため、1日の料金はかなり高い、ホテル近くに置いて正解でした。
20日、12時20分発のロケットに乗る、みんなかなりの荷物をかかえていて気合が入っているようだ。
少しうねりがあったが、高速船はほとんど揺れず、2時間弱で屋久島に到着した。
開聞岳、桜島の上は、相変わらず雲の中でした。
日食前後の天気予報から、先に縄文杉まで登ることにした。

レンタカーに荷物を載せ、まずはテント泊するキャンプ場の確認をする。
今日の宿泊予定は白谷山荘だ。
夜間、早朝は白谷雲水峡まで道路規制で入れないため、早目に出かける。
300円の入場料を払って、白谷川沿いの奉行道を登っていく。
まだまだ観光客もどきが多く、サンダル、水着で歩いている人達もいた。
1時間弱で白谷山荘到着、2,3の先行グループがいた。
ここは、陰気くさいとあまり評判はよくないが、寝る分には特に問題ないようだ。
場所取りをしてから、表のテーブルで一杯始めた。
フランス人の4人グループ、単独のイタリア人と国際色も豊かになってきた。
最終的には6グループ、15人くらいがここに泊まった。

フランス人がシャワーがないかと聞いたらしいので、水場を指し、ナチュラルシャワーじゃぶじゃぶと言ったら通じたらしい。
水場でパンツ一丁の裸になり、身体を拭いていた。
フランス人は片言の英単語しか通じないが、イタリア人は、2年ほど日本にいるということで、ほとんど日常的な会話は通じる、
間違ってイエスタデイ(明日はツモロー)フォーユーと聞いても、フォー永田と帰ってきたもんだ。
薄暗くなったのを潮時に、寝袋にもぐりこんだ。
気温的には、半袖で丁度良いくらいで、暑くもなく寝るにはまずまず。いびきや、床のかたさもあり、あまり良く眠むることは出来なかった。
うつらうつらしながら、4時すぎにおきる。早めにカップヌードルをすすり、5時半出発する。
夜中に星も見えていたが、曇り空に変わっていた。
さて、日食前日21日、明日の天気を気にしながら辻峠へ向かう。曇り空と森林帯なので、足元はかなり暗い。
小1時間で峠着、ここからはだらだらの下りで、森林軌道まで下って行く。
楠川分岐で森林軌道に出る。荒川口からのバス便の人達よりは早いはずで、ほとんど人は見かけない。
途中、仁王杉のところの清流に缶詰をデポし、軌道道を歩いて行く。

軌道からの分岐には、立派なトイレの建物と美味しい水があり、一息つく場所だ。
ここからが本格的な登山道になる。すぐにウイルソン株、内部からのハートマークを撮り、美味しい湧き水に入れ替える。
ここから先、屋久島特有である雨が降ってきた。
夫婦杉、大王杉と過ぎ、やっと目指す縄文杉に到着した。
前のテラスには10人ほどの登山客だけだったので、比較的撮影や見物はフリーだ。
雨も大粒になってきて、合羽を取り出す。適当に見物してから、登ってきた道を戻る。
だんだん人が増え、団体さんも多くなってきた。1番のバスで来た人達だろう。
だんだんすれ違うのも大変になってきた。あまり遠慮すると時間もかかるので、さっさと降りていく。
ウイルソン株にも朝の数倍人がいる。
森林軌道に降りれば、最早登ってくるひとは激減する。もう時間的には無理だからだろう。
仁王杉の前で昼食休憩、デポしていた缶詰が冷えていて、美味しかった。
楠川分岐から分かれると、さらにすれ違う人も少なくなる。
天候も回復し、きまぐれな屋久島の空が快晴近くになってきた。

辻峠にザックをデポし、行きに見送った太鼓岩へ登ってみる。空は快晴で風も強いが、眺めがいいところだ。
残念ながら、奥の山並みは雲にはばまれ、覗くことはできなかった。
白谷雲水峡は、日食の前日ということもあり、かなりの人達が歩いている、何かテレビのカメラらしき人達も稼動していた。
早めに宮之浦に降り、買出しにでる。今日からは2日間テント暮らしだ。
キャンプ場は簡易トイレ、ホースの先にシャワー口が付いて木に掛けてあるだけの原始的なところでした。
とても綺麗なオートキャンプ場とは較べるべくもない。
日影を探して酒盛りを始める、目の前は海だ。
誰もいないのをいいことに、あまりに暑いので、パンツのまま海に飛び込む。
フルチンでシャワーを浴び、少しは涼しくなった気がする。
何組か車が入ってきた、少しは同様に泊まる人達がいるようだ。
暗くなる前にテントに入ったが、暑くて眠れない。整地も悪く、下に切り株がある。
暑さと、蟻と蜘蛛に悩みながら、夜半過ぎ、少し眠りについた。
さて、日食当日、曇り空だ、予報は非常に良くない。皆既の時間と天候を考えながら、南に下る。

栗生の青少年旅行村まで行って見たが、雲の流れは速い。
ここの設備は良く、コインランドリーまであり、キャンプ場も賑わっていた。
最終的には、少し戻り、尾の間の海辺の空き地に車を止め、日食になる時間を車の中でじっと待った。
雨が降り始め、黒雲が山に向かって走るようになってきた。
部分日食が始まったが、太陽の姿さえ見えず。皆既時間近くになって、ようやく少し小降りになってきた。
車から出て、皆既の時間を待つ。だんだん薄暗くなってきた、10時57分、皆既の時間だ。真っ暗近くになる。
約4分間続き、再び明るくなってきた。太陽は見えずとも、神秘的な一瞬でした。
皆既後もしばらく待機していたが、太陽が出る気配がないので、観光に切り替える。
スーパーで弁当を調達し、大川の滝へ向かう。このころになって雨はやみ、少し明るくなってきた。
大川の滝は思っていた以上に落差のある滝だ。
このあと千尋の滝にも寄り、宮之浦のキャンプ場に戻る。
結局、今日1日太陽の姿を拝むことはできなかった。最悪の1日でした。
あとでニュースを聞くと、陸地の島や上海なども全滅らしい。
唯一、船で移動した北硫黄島付近で見られたらしい。

屋久島の何処かで見られたのなら別だが、何処もだめだったのを聞き、あきらめもついた。あとでNHKのビデオでも見るしかないか。
レンタカーの借り換えの都合で車をチェンジして、テントサイドに戻る。
さて、今晩もテント泊、昨日の暑さが気になったので、外でゆっくり飲み、近くの海岸に亀を見に行く。
22時過ぎ、亀が上がった跡のような跡があったが、亀の姿はなかった。テントに戻り、眠りにつく。
今日の気温はかなり下がり、暑さは感じなかった。鹿児島気象台での話では、夏としては、かなりの低温になったとのことだ、ラッキーでした。
皆既翌日、薄曇り、日の出を眺めながら、ゆっくり朝食をとる。
これで、このキャンプ場とはおさらばだ。さあ、今日は1日フリーの日、適当な観光地へ向かう。
ヤクスギランドを目指す。淀川の登山口を見物し、紀元杉を見物する。
外の気温は低く、半袖では寒く感じる。見終わったところで、観光客のバスがきた。
早々と立ち去り、ヤクスギランドの駐車場に車を止めた。
荷物は車に置き、軽装で150分コースを廻る。蛇紋杉、から仏陀杉へとゆっくり歩く。
仏陀杉までくると、気軽な観光客も多くなる。第一駐車場はすでに満杯でした。
トイレの上には太忠岳が望めた。下に降り、近くのガジュマルを覗いていく。
安房で遅い昼食を食べ、宮之浦に戻った。
さあ、最後の屋久島の夜、レンタカーを返し、民宿へ向かう。
海岸を散歩するついでに海に入る。屋久島の海には伊勢えびやサザエが簡単に取れるらしく、誰のお咎めもなく自由らしい。
海パンと水中メガネがあればの話しだが・・・。ゆっくり風呂につかり、夕食を待つ。
今日は屋久島最後の夜なので、船盛を頼み美味しい焼酎をいただく。
24日、12時過ぎ屋久島をあとにした。
鹿児島のターミナルから車を置いてある駐車場まで歩き、荷物を積んで帰路につく。
さあ、また交代で徹夜運転だ。熊本を過ぎたところで、かなりの雨が降り出してきた。
福岡付近では、どしゃぶりの雨、1時間100mmを越える雨であったらしい。
高速道路の情報を得ると、行きに通った中国道は一部通行止め、山陽道予定でよかった。
大雨は3時間続き、広島まで安全運転に徹した。
ようやく雨も小降りになり、安心して運転出来るようになってきた。
全走行距離、約3000KM、日本列島ほぼ縦断の距離を踏破しました。
2,3十万払っても見られない高いツアーがあったり、いろいろな話題もありましたが、我がツアーは7万円弱(8泊9日)、
これで皆既日食が見られれば万々歳でしたが、そんな甘いわけではありませんでした。
3年後の金冠日食、26年後の皆既日食に夢を馳せ、各地のみやげ物を買い、無事サバイバルツアーが終わったことに感謝し、
長生きしたいと思います。
白谷小屋――楠川分岐――縄文杉――白谷雲水峡
5:30 7:30 10:00 14:00
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