「徒然虫」 1号

アシナガバチ大好き

 先日、ある生徒が、キアシナガバチの巣をとって、私のところへ持ってきました。 ハチの巣を見ると胸が躍ってしまう私は、早速その巣をもらい受け、巣のあった場所へ行ってみました。 その場所(廊下の窓の外)では、巣を失った母バチが、ブンブン飛び回っています。 ここに巣を戻すわけにもいかないので、我が家の軒下に引っ越しさせることにした私は、母バチも一緒にビニール袋に入れ、家につれ帰りました。 引っ越しで、巣を軒下につける時に威力を発揮するのが「瞬間接着剤」、ホントにありがたいものです。すぐに母バチを巣に帰そうと思いましたが、天気が良かったために、一日ほど待ってもらいました。
(見ず知らずの土地で、すぐ飛びたってしまったら、巣に戻れなくなってしまうのです。)

 1日後、天気が下り坂になるのを待って母バチを巣に帰そうとすると、何と「虫の息」。 すでに後足、中足は動かず、前足、触角、アゴがわずかに震える程度・・・。危篤状態でした。 次第に中足、前足、触角と動かなくなり、最期はアゴをギュッとかみしめ、口惜しいかのようにして亡くなりました。こんなことなら、巣に帰してもよかったかと・・・。

 こうなっては、巣の中に残された子供たちのことが気がかりです。そこで考えたのが、「養母」をもらうということ。 近くの河原の石崖に、娘の夏希が見つけたキアシナガバチの巣があったのを思い出しました。6月上旬といえば、そろそろ娘バチが誕生する頃です。 河原の巣の娘バチを、1匹養母に迎えれば、我が家の巣の子供たちも元気に暮らしていけることでしょう。


 翌朝、娘と一緒に河原へ行ってみました。すると、河原の巣は、見あたりません。 草刈りをした痕があったので、おそらく草刈りのついでに、巣は落とされてしまったのでしょう。 娘の夏希が「人間に、殺されちゃったのかなあ。」と、みつばちハッチの台詞を引用して聞いてきました。

 次の瞬間、ブーンと羽音が・・・。 巣をなくした母バチが戻ってきたのです。

 この時、私の脳裏をよぎったのは「巣のない母と母のない巣の関係」です。 善は急げ?と、河原の母バチを家につれていき、我が家の巣にとまらせました。河原の母バチは、触角でトントンたたきながら巣の様子を調べ、巣をきれいにしてくれました。


 翌朝には、我が家のハチの巣から、娘バチが生まれ、河原の母バチに体中をなめてもらっていました。 私も一安心・・・と思う間もなく、翌日に巣から飛び立っていった河原の母バチが、まだ戻ってこないのです。
別のところで、新たな巣をつくることにしたのでしょうか・・・。

 我が家の巣は、羽化したばかりの娘バチが、自力で面倒を見ていくことになるのでしょうか・・・。しかし、そのためには、この娘バチが物心のつくまでの数日間、誰かが巣の面倒を見なくてはなりません。 いつの日か、元気なアシナガバチでいっぱいになった我が家の巣を夢見ながら、面倒を見ていきましょう。

 一度手を加えた自然というものは、なかなか人間の手には負えないもののようです。


1998. 6. 10 斎藤 靖明(abusaito)

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