-ゴスドラマ過去ログ:10501-10600-
安岡優「同じ、ラインにいると思うんだよね。カオルちゃんは一杯不安になったり緊張したりして『どきどき』したから。」
村上てつや「おい…。」
安岡優「これだけ説明して、判らない?……カオルちゃんは、いつも『誰』を見てたのさ?」
ト書き「足を組んで、安岡は頬杖をついた。」
村上てつや「ナニ言ってるかさっぱりだよ…!!」
安岡優「てつの方こそ…弱虫なんじゃないの?俺そう思うよ・・・。」
北山陽一「…だっ、ただいまま…!」
安岡優「おかえりなさい。血は貰えましたか??!」
北山陽一「はい。理由を説明したら何とか…どうしたんですか?」
書き「北山は村上と安岡の話を少し聞いていたのだか、知らないふりを装った。」
安岡優「ううん、なんでもないよ。それより早く輸血しよう。」
北山陽一「チッ…。」
安岡優「んん??何か言ったセンセ?」
北山陽一「あぁ…いや…なんでも。」
ト書き「北山は何かを言おうとしたが村上を見てためらった。」
村上てつや「ヤス、俺は確かに弱虫かもしんねぇ…。けどよ、俺だって怖いんだよ…アイツ…カオルの側でずっと守ってやれるか…わかんねぇからよ…。」
安岡優「……センセ、行こう…。」
ト書き「安岡は村上の言葉に反応を示さず北山の手を引っ張り処置室へ向かった。」
安岡優「不器用なんだよねぇ…あのおにぃちゃんは。」
酒井雄二「『おにぃちゃん』、って、村上のこと?」
北山陽一「起きてたんですか?」
酒井雄二「今し方、ね。」
ト書き「酒井は前髪をかきあげると、口元を歪め笑みを造った。」
安岡優「おにぃちゃんはねぇ…ほんとにもーあの二人は見てて苛々するね、幼稚園児と小学校低学年の恋愛から未だ発展して無いんだから。」
酒井雄二「い、苛々する?」
安岡優「カオルちゃんは酒井さんのコト好きだって、考え始めたらぐるぐる回って悩んでるの。」
北山陽一「そういう…あなたも、カオル君の事を好きなんでしょう?」
安岡優「僕は、二人とも友達範囲内。」
北山陽一「…ホントに?」
安岡優「困ってたら、手を貸そうか?って訊ける距離で満足。…そういう風に育っちゃったし。」
北山陽一「はぁ…で、当の本人は村上さんの事、気付いてるんですか?」
安岡優「さぁね?とりあえず今の自分の気持ちに戸惑ってるんじゃないかなぁ。」
ト書き「安岡に同意を求められて、酒井は答えに困った」
酒井雄二「俺の事…カオル君は好きなの?」
安岡優「心拍数が一定以上を超えるとね、恋に堕ち易いって云う学説があるんだけど。」
北山陽一「確信は持てないって訳です?」
安岡優「結構、実験とかもやってるんだけどね。」
ト書き「無言の酒井を二人が見ると、思いっきり鼻血を吹いていた」
安岡優「うわ…」
北山陽一「酒井さん…入れたモン鼻から出してどうするんですか。」
酒井雄二「ごべん…でぃっしゅとって…?」
ト書き「鼻を拭って、ようやく落ち着いた3人は話を再開した。」
北山陽一「えー…どこまでいきました?」
安岡優「カオルちゃんの気持ち…酒井さんはどう思ってるの?」
酒井雄二「う〜ん…嫌いではないけどね」
ト書き「酒井は言葉を詰まらせた。」
酒井雄二「俺さ…人に好かれるって考えた事ないしな…人を好きになるってのも考えた事ないし…。」
安岡優「どういうこと?」
酒井雄二「前にも話した通り、世間の目は俺に冷たいからね、ココ何年も。」
北山陽一「わからないと訳ですか、好かれるとか好きになるとかの感覚が…。」
酒井雄二「冷たい風の中に長い間居たらなぁ…一線置くって言うかさ…。」
安岡優「コワイの?人を好きになったり、人から愛されたりするのが。」
酒井雄二「優しさとかが全部『裏』に見えちゃうって言うのかな。」
北山陽一「心の病ってヤツですか…。」
酒井雄二「ウマイねぇ〜北山くん!座布団1枚!!」
ト書き「酒井はわざとその場の雰囲気を変えようとした。」
黒沢カオル「てつ兄ちゃん…。」
村上てつや「どうした?なんかあったのか?」
黒沢カオル「酒井さんどうしてる?ヤスくんと北山さんは?」
村上てつや「…あぁ、そっちの部屋に居るよ。」
黒沢カオル「行っても平気??」
村上てつや「あぁ。」
ト書き「黒沢は何も言わずとなりの部屋へ向かった。」
黒沢カオル「酒井…さん…??」
酒井雄二「おぉっ!カオル君、大丈夫か?」
北山陽一「噂をすれば何とやらって奴ですね。」
安岡優「切り替え早いね…酒井さんって…。」
ト書き「安岡と北山は小声で言った。」
黒沢カオル「俺は…大丈夫だよ。それより酒井さんは?」
北山陽一「脳硬塞と盲腸を併発して、後一週間の命です。」
安岡優「ついでに、腰痛と糖尿病と心筋梗塞も。」
黒沢カオル「ホントにっ!?」
村上てつや「本当か?それっ!!?」
黒沢カオル「酒井さ〜〜ん……。」
村上てつや「酒井――……。」
ト書き「さめざめ涙を流す、二人。」
酒井雄二「っく……俺、はもう駄目です……。」
北山陽一「(結構ノるなぁ…。」
安岡優「そう、もう駄目だよ。今生の別れだから、何か伝えたい事ある?」
ト書き「涙でうりゅうりゅの黒沢と、涙をどばどば流している村上に少しひきながら安岡は演技を続け、言った。」
村上てつや「助けられねぇのかっ!?」
北山陽一「駄目ですね、もう、一週間しか生きれません。」
酒井雄二「村上…さん、北山……ヤス…、俺が死んだら…カオルちゃん、頼むな。」
北山陽一「…はい。」
村上てつや「そんな事言うんじゃねーよっ、カオルはお前の事好きなんだぞっ!?」
黒沢カオル「………へ?」
ト書き「瞳から涙を流す黒沢が素頓狂な声と表情をとった。」
黒沢カオル「てっちゃん…今なんて言ったの?」
村上てつや「だから、お前は酒井の事がっ…!」
黒沢カオル「俺…確かに酒井さんの事は憧れてるし、好きだけど。それは恋愛感情じゃないよ?」
村上てつや「はぁ?」
北山陽一「言いましたね…本音。」
安岡優「ホント、世話かけさせるんだから。」
酒井雄二「憧れられてる…か。」
ト書き「どことなく、安心したように酒井は呟き、身体を起こした。」
黒沢カオル「ちょっ…酒井さん、起きちゃ駄目っ!」
酒井雄二「良いんです、嘘なんですから。」
黒沢カオル「う……そ…?」
岡優「ごめん、かつぐのも何だし、ばればれの嘘だと思ったんだけど。」
北山陽一「見事に引っ掛かりましたねぇ。」
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