-ゴスドラマ過去ログ:10401-10500-
村上てつや「『次』は押さねぇように、しこたま気をつけるさ。」
黒沢カオル「……うん。」
ト書き「カオルは小さくうなずいた。」
北山陽一「お前は何も心配することねぇんだよ。俺もヤスも、北山も酒井もお前を一生守る。」
村上てつや「俺のセリフ…。(泣)」
ナレーション「北山さん、ダメですよ! 気を取り直して、村上さんどうぞ。」
村上てつや「お前は何も心配することねぇんだよ。俺もヤスも、北山も酒井もお前を一生守る。」
ト書き「村上はカオルの目の奥を見るように顔を近づけた。」
黒沢カオル「てっちゃ……?」
村上てつや「誰にも渡さねぇよ…カオルは俺たち4人で守ってやる。」
ト書き「そう言うと村上は黒沢の涙を拭き、くちづけをした。」
黒沢カオル「;」
村上てつや「どうした?………嫌、だったか?」
黒沢カオル「嫌じゃない…イヤじゃないよ、でも…どうして…。」
村上てつや「ん?」
ト書き「村上は黒沢の後頭部へ手を伸ばし、その髪に指を埋めた。」
黒沢カオル「涙が…止まらないよぉっ…。」
ト書き「唇を噛み、必死に嗚咽を堪える黒沢を優しさをたたえた眼差しで村上は見遣った。」
村上てつや「ま…今は泣いて、後で一緒に大笑いしよーか。」
ト書き「な、と言われて黒沢は返事の代わりに額を村上の肩にぶつけた。」
ナレーション「酒井さんっ、さかいさぁんっ!さ〜か〜い〜さぁ〜んっ!」
安岡優「ナレーション…うるさいよ。」
ト書き「手術を終わらせて、緊張の糸が切れかけている安岡がうっそりと言い放った。」
北山陽一「いかんせん失血の量が多いですからね…。」
ナレーション「あぁ…もぉっ、こうなったらナレーション権限でっ…」
安岡優「こら。」
北山陽一「ったく…」
効果音「どぐっ・ごがっ」
ナレーション「きゃああぁぁぁぁ…………。」
ト書き「…ナレーションは、二人に殴られて遥か遠い星になってしまいました。」
安岡優「台本通りにやんないと駄目でしょーが。」
北山陽一「とりあえず、ヤスの台詞からだから。」
安岡優「えっと……今更こんな事言うのも難だけど、ホントに…ありがと二人とも。」
北山陽一「こちらこそ…私たちもあなた達には感謝しています。」
ト書き「そう言うと北山は立ち上がった。」
北山陽一「輸血しなければなりませんね、近くの病院に行ってきます。」
安岡優「血をもらってくるの??!無理じゃない?」
北山陽一「この近くに僕の友達が居るんですよ、院長ですからね彼は。」
安岡優「院長でしょ…会えるかすら分らなくなぁい?」
北山陽一「顔パスです。あはははは…行ってきます!」
ト書き「北山は出口に向かい歩きながら後ろに居る安岡の顔を見ないで手を振った。」
安岡優「顔パス…ねぇ。 でも血だよ…会うのは大丈夫でも貰うのは…。 」
ト書き「不安を抱きつつ、安岡は扉の向こうに消える北山を見ていた。」
安岡優「怖いなぁ〜………。」
ト書き「怖くもないのに、怖いと呟く安岡優。」
村上てつや「おい、ヤス!北山は?」
安岡優「血を取りに行ったよ、酒井さんの。」
村上てつや「あてがあんのかよ??」
安岡優「近くの病院の院長さんが、北山さんのお友達なんだって。それで頼むってさ。」
ト書き「片づけをしながら安岡は言った。」
村上てつや「さすがだなぁ…顔広いなぁ、北山って。」
ト書き「村上は煙草を取り出し火をつけた。」
安岡優「カオルちゃんは??!落ち着いてる?」
村上てつや「あぁ…向こうで寝転がってるよ。」
安岡優「そう…落ち着いたんだね、良かった。ビックリしたよ、取り乱しちゃってたから。」
村上てつや「俺もだ…つい手上げちまってな…。」
ト書き「村上は煙草を吸いながら右手をみつめ、唇に押し当てた。」
村上てつや「ふぅ・・・」
安岡優「てつ・・・てつ、ホントはどう思ってるの?」
村上てつや「・・・何がだよ。」
安岡優「カオルちゃんが、てつの事をどう思ってるか。カオルちゃんが、酒井さんの事をどう想ってるか・・・」
村上てつや「・・・ンな事、言わなくったって・・・!」
安岡優「勝ち目・・・あると思う?」
村上てつや「・・・勝ち目ってたって・・・・・・ンな物、あるわけ」
安岡優「ねぇ、てつ。俺達・・・カオルちゃんも含めてね、ずぅっ・・・っと、一緒にいただろ?」
ト書き「安岡が、村上の科白をさえぎっていった。」
安岡優「これからも、それは変わんないと思うよ・・・」
村上てつや「・・・お嬢は、そんな奴じゃねぇよ。」
安岡優「カオルちゃんは、優しいから・・・!てつの事も、大好きだから、だから、絶対離れて行ったりしないよっ!」
村上てつや「・・・違う。」
安岡優「てつ!」
村上てつや「・・・お嬢は優しいから・・・優しすぎるから・・・いつも、自分のことより、他人を優先させるから・・・」
安岡優「・・・」
村上てつや「酒井と想いが通じ合ったら・・・きっと、お嬢は・・・俺には会わない。絶対だ。お嬢は、俺の・・・俺の気持ちを知ってる。」
安岡優「じゃあ・・・てつは・・・てつは、そうなったらどうするの?」
村上てつや「俺は・・・消えるよ。」
安岡優「・・・・・・・・・・・・・・・なーんか、てつ、ちょーかっこわるーい!!!」
村上てつや「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?!何だとっ!お前に、俺の気持ちが・・・俺の気持ちが分かるかっ?!」
ト書き「村上は、安岡の胸ぐらを掴み叫んだ。その声が、壁に反射して妙なエコーがかかる。」
安岡優「だって、それって、絶対格好悪いよっ!」
ト書き「村上の手を払いのけ、安岡は強く言う。」
安岡優「・・・男はさ、好きな人の幸せを願えるくらい・・・その・・・余裕がないとね・・・。」
村上てつや「・・・余裕?」
安岡優「そう、ヨ・ユ・ウ。」
村上てつや「・・・余裕・・・か。」
安岡優「酒井さんだって、余裕あったよ・・・撃たれてるのに、ずっと「てつがいなくなってからの、カオルちゃん」の事考えてた・・・。」
村上てつや「……。」
ト書き「村上は安岡にせをむけた。」
安岡優「……それが、てつの生き方だって言うなら、僕はもう何も言わないけどさ。」
村上てつや「…どーせ俺はいつもいっぱいいっぱいなんだよ。俺はそういう生き方しかできねえんだ。」
ト書き「安岡が小さく溜め息を吐いた事に村上は気付かなかった。」
安岡優「ホントに、薫ちゃんは酒井さんの事、その…意識してるの?」
村上てつや「…なんだろ?酒井が撃たれた時、あんなにも取り乱してたしな。」
安岡優「取り乱す…かぁ、さぞかし心臓も『どきどき』してたんだろうねぇ。」
ト書き「言葉を聞いた村上はドアの手前で立ち止まると、安岡の方を振り向いた。」
村上てつや「なんだ…それ。」
安岡優「人を好きになる時の『どきどき』と恐怖感や緊張感の『どきどき』は、理由は違ってもどのみちどきどきしてる事に変わりは無いってコト。」
村上てつや「…は?」
安岡優「恋をするからどきどきするんじゃなくて、どきどきするから、恋に堕ちる…っていう説、知らない?」
ト書き「そう言って、安岡は外国語の唄の一節を短く歌った。」
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