第一章 年金制度上における性差の問題 第二章 離婚時年金分割の解説 |
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第一章 年金制度上における性差の問題 |
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1.老齢給付にかかる性差 基本的に男女差はありません。配偶者加給や振替加算なども、専業主婦、専業主夫どちらにも同じように支給されます。 こんな初歩的なことがわからず、テレビで年金の説明をした有名なカリスマ女性経済評論家もいましたが(妻が夫を扶養してたらどうなるの?と聞かれて途中で立ち往生してしまった)、老齢の制度上の性差は原則ありません。老齢に男女差はありませんからね。 ただ、受給要件と支給開始年齢に関しては、若干の男女差があります。いずれも女性が有利に扱われています。 (1) 受給要件の男女差 (略) 年金加入期間が25年ない人の厚生年金の特例の適用年齢が異なっています。 普通の人は関係ないですけど、興味ある方は別途お尋ねください。 (2) 支給開始年齢での男女差 昭和16年4月2日生まれの男性から昭和41年4月1日生まれの人の厚生年金 ⇒ こちら 女性のほうが5年遅れで有利です。 |
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2.障害給付にかかる性差 これも基本的にありません。 障害者になって働けないけれどお金がかかるという障害状態には、男女に差はありません。だから男性と女性を区別して考える必要はないですよね。 |
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3.遺族給付にかかる性差
遺族給付に関しては、これは絶対男女差を抜きにしては語れません。最初から夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合は別物として(独身の場合の男女の性差はないので区別の必要はありませんが)考える必要があります。詳しくは 5 で解説してあります。 |
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4.形式的性差をおいて、実質的な性差を考える
年金制度上で形式的には上のような性差があります。 |
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5.遺族年金の男女差について Aさん一家(夫、妻、子供2人(小学生)) 夫会社員 妻専業主婦 Bさん一家(夫、妻、子供2人(小学生)) 夫自営業 妻会社員 Cさん一家(夫、妻、子供2人(小学生)) 夫婦共働きで会社員 の3つの家庭を例に考えます。A,B,Cとも夫は40歳、妻は38歳です。 まず、上の例の家庭でいずれも夫が死亡したとします。 その場合の年金は、
子供が高校を卒業したら遺族基礎年金がなくなりますので、
ところが、これが逆に妻が死亡した場合は、
子供が高校を卒業したら、
※ 国民年金については、妻の死亡の場合、配偶者たる夫がいれば年金が停止される決まりです。 これをみるだけでも、厚生年金は「男は外で働き、女は家庭で家を守る」という家族像で年金が作られていることがお分かりかと思います。妻が死亡しても、夫が稼いでいるから、家事のことはともかくお金には不自由はしないだろうということですね。 |
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6.遺族年金も年を取ったら男女の性差はなくなる。 男性が65歳、女性が65歳の夫婦がいたとします(※注)。 この場合は、遺族厚生年金に関しても 5 の説明とは異なり全く性差がなくなります。男女別に考える必要がなくなる。 夫が自営業で、妻が会社勤めが長い時に、もし妻が先に亡くなった場合に遺族厚生年金を夫が受取ることも可能です。 ※ 正しくは、夫が55歳以上の場合は60歳から妻の死亡にかかる遺族厚生年金が支給されます。 ですから、夫が自営業、妻が会社勤めが長い場合で年老いてから妻が先立ったという場合には必ず年金関係をご確認ください。 |
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7.寡婦年金という制度 国民年金に25年以上加入されている場合の奥さんは、60−65歳の間は、「寡婦年金」という年金を受取ることができます。 これは女性限定の年金。しかも60−65歳までの5年間だけ。 要件はいろいろありますが、ポイントは2つ ○自営業で、国民年金を25年以上払った(会社勤めの時代を混ぜてはいけません)。 ○結婚していて10年以上経過した。 ◎具体的にはこういう場合 八百屋の八つぁん、高校卒業後に親の八百屋を継いで働いていた。 家は自営業なので国民年金、20歳からこつこつ毎月の保険料を払っていたが、不幸にも50歳の時死亡してしまった。 この場合に、八つぁんの奥さんと八つぁんが結婚10年以上経過していたら、八つぁんの奥さんが60歳から5年間は年金をもらえます。八つぁんの奥さんも年金が全期間自営業だと65歳からの支給開始になるので、いわば繋ぎの年金ですよね。 ☆金額は 年間約45万円。(60万円×4分の3) 仮に八つぁんが60歳の時死亡だったら60万円(80万円×4分の3)でした。 寡婦と名前のついている通り、この年金は妻が先立った場合の夫には支給されません。 完全に女性だけを対象とした片面的な年金です。やっぱり遺族がらみは女性優先ですよね。 |
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8.女性は大切にされているのか軽く見られているのか? 遺族年金に関する種々の男女差は5−7の間に書いたとおりです。で、5 の通り、女性のほうが格段に保護されています。女性は大切にされていると考えても良いです。 ところが、働く女性から見るとまたこれも不公平の1つでもあるのです。 男性の厚生年金の保険料は自分の老後のため、障害のため、そして自分の家族(主として妻)のため使われていると考えられる。 しかし、女性の厚生年金の保険料は自分の老後のため、障害のため、であっても自分の家族のために使われることに制限がかかります(若い夫には支給されない)。いわば保険料1円の重みが男性の保険料より軽いのです。軽いという意味では、独身男女の場合も同様ですが、結婚して子供がいる場合などはそう簡単に割り切れるものではないようです。不満があってもおかしくはありません。 夫婦の稼ぎを合算してその一家は一人前に暮らしているのにその片方(夫)がなくなったら保障がありもう一方の場合(妻)は保障がない。 このことは、働かない妻(専業主婦)は大切にされるけれど、その妻が亡くなっても家計には影響がないだろうという前提での年金制度を如実にあらわしたもので、働く女性からみると自分たちが低く見られているとも捉えられるのです。 |
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第ニ章 離婚時年金分割 前段 平成16年の年金改正で、離婚時の年金分割という制度が設けられました。 いま、この離婚時年金分割に興味をお持ちの方がたくさんいらっしゃるようです。ということは、離婚待ち? それも良くないですよね。 しかしまだまだ施行まで時間があるせいか、細かい運用については、取扱通達等が出ていないのでわかりません。 ですから今現在時点でわかっている範囲内でその制度内容を説明したいと思います。 実際にはこれと異なった取扱をされる場合があるかもしれませんのでその点はご理解ください。 |
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1.はじめにご注意 ◎巷にこんな誤解が溢れています。ご注意ください。 ☆ 今までに離婚した人も年金を分割してもらえる。 → こんなことはありません。 離婚を平成19年4月1日以降にされた方限定です。 すでに離婚された方、残念ですがあきらめてください。 ☆ 夫の年金の半分を分割してもらえる → 間違いです。 厚生年金の、しかも婚姻期間が対象で、さらに最高が半分です。 なおかつ、申し出が必要で、夫との合意がなければ家庭裁判所の決定が必要。 そんなに簡単なものではありません。 「分割を受ける額も思ったより少ない」と覚悟されておかれたほうが無難です。 ☆(補足) 我々が年金相談をする時、40年働いた夫の年金額を聞いて「えー、これだけー」とがっくりされる奥さんは10人いたら8人くらいいらっしゃいます。それほど年金は期待したほど多くはない。その年金を更に分割するのですから額は少なくて当然です。 |
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2.離婚時年金分割の基本 離婚時年金分割には2種類の方法があります。 1 婚姻期間中の年金分割制度 2 平成20年4月1日以降の第3号被保険者への50%分割制度 1.婚姻期間中の年金分割制度について
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2.イメージ図 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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◎ 専業主婦の場合は、ご自分の年金がないので分割図式は簡単です。でも次の平成20年からの第3号被保険者の年金分割と違って、専業主婦でも必ず半分が分割されて支給されるものではないことには十分注意してください。 |
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3.分割されるのは標準報酬であって年金額自体ではありません 年金の中で一番難しいので、わからない方も多いでしょうが、年金計算の基礎となるのは、働いた時の報酬です。その報酬を調整率(再評価率という、物価上昇などを調整する)を掛けて修正したものを使って年金額を具体的に計算します。 その報酬を、離婚時に分割しようということが今回の法改正の目玉です。 じゃ具体的にどうするか。 とっても簡単な場合を考えて見ましょう。 A夫妻、結婚して1年後に離婚(ちょっと早いけど)。夫は給与30万円、妻は給与20万円で働いていた。 その場合 夫 → 30万円(再評価を1と仮定) 妻 → 20万円(再評価を1と仮定) ですから 夫から妻に分割できる年金は1円から5万円までの間。 仮に、分割を最高の5万円で決定したとすると、 夫の厚生年金の記録は25万円を12ヵ月 妻の厚生年金の記録も25万円を12ヶ月 とすることになります。 分割が2万円で決定したとすると、 夫の厚生年金の記録は28万円を12ヶ月 妻の厚生年金の記録は22万円を12ヶ月 と修正することになります。 すでに年金をおもらいの方の離婚の場合には、いきなり年金額が変わるということで年金に反映されると思いますが、若い方(受給年齢に達していない方)は、上のような記録を修正し、ずっと年金を貰うまで、待つということになります。 |
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4.実際に話はそう簡単ではない 上の話は、わかりやすくするためにものすごーく単純な実例を持ち出して説明しました。でも実際はこんなに簡単な制度ではありません、というのは刻々と夫、妻ともに、働きに出たり辞めたり、あるいは給与が変わったりという風に、実際の年金記録が変わっていくのです。だから専業主婦のようにそうは簡単には話が進まない。 ほんの一例ですけど、こんな場合はどうなるか考えて見ましょう。 |
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実例で簡単ではないと思われる部分を考えて見ましょう。 例・・・結婚から離婚まで婚姻期間は4年 1年目 夫が報酬30万円 妻が20万円で働いていた。 2年目 夫が失業 妻が報酬30万円で働いていた。 3年目 夫が報酬28万円 妻が報酬35万円で働いていた。
さてどうなると思いますか? 現実にはこういう場合は頻出してくるでしょう。 ・結婚後、月によって夫の月給を妻が上回ったり下回ったりする ・結婚後、暫くは共稼ぎでそれから後妻が専業主婦 ・結婚後、妻が会社勤めで夫が自営業などで国民年金のみ 其の他いろいろ。考え出したらキリがありません。 場合によってはこちらのほうがケースが多いかもしれません。 |
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(要注意)ここからは、自分の想像を交えて書きます。 細かい取扱通達等の資料がまだ整備されていない以上、想像を働かせて書くしかありません。 離婚時の年金分割の現実の取扱いが、本HPで書いてあることと違っていても責任は一切負えませんので、くれぐれもご注意の上お読みください。 |
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5.3で見たとおり「標準報酬を分割する」 と書いてある。これをどう読むか。 みなさんは資格画面というものをご覧になったことがありますか? これには、その年に幾らで働いたという記録が書いてあります。 たぶんその数字を計算し、修正するのだと思います。 |
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以降鋭意、作成中(2005.7.21) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||