「徒然虫」
7号
里山だより05「秋来ぬと・・・」
「小さな夢・第2番」
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9月生まれのためかどうかわかりませんが、秋は特別に好きな季節です。その秋の始まりは「風と雲」。「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(藤原敏行:古今集)」と歌われているように、わずかな風の涼しさに秋の近づいたことを感じ、空を見上げて秋雲の上まで思いを飛ばします(紙飛行機も)。すると必ず目にはいるのが「赤とんぼ」です。「夕焼けこやけの赤とんぼ・・・」のメロディーを口ずさみ、日本の心(里山文化)に思いを巡らせる一時です。
赤とんぼには、たくさんの種類があります。よく目にするのは、ナツアカネ、マユタテアカネ、アキアカネ、ミヤマアカネあたりでしょうか。この他に、とてもかわいらしいヒメアカネ、美しいリスアカネ、なども目にすることがあります。 ちょっと高い山ではノシメトンボやコノシメトンボなどの赤とんぼの仲間、さらに高い山ではムツアカネを目にします。尾瀬で出会うハッチョウトンボ(腕時計の文字盤と同じくらいの大きさ)も印象的です。ちなみに、庭や田んぼの上で群れて舞っているトンボも赤とんぼと言っていいのでしょうが名前は「ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)→」で、実際に手に取ってみると確かに黄色いトンボです。
私は小さい頃から赤とんぼたちを見ていて、2つの異変に気づきました。1つは「ウスバキトンボが5月頃から見られる」ということです。もともと日本で冬を越せないウスバキトンボは、温かくなるにつれて沖縄の南の方からやってきて、池や田んぼに産卵し羽化しながら(生育期間は30日ほど)次々と北上し、やがて私たちの庭先にもやってきます。 (枝の先に留まって休むより飛んでいる方が楽なようです。)以前は6月にならないと見られなかったはずですが・・・。2つめは「アキアカネが少なくなった」ということです。枝の先に留まる赤とんぼといえば「アキアカネ、次がナツアカネ」だったはずですが、今ではアキアカネはナツアカネよりずっと少なくなってしまいました。秋に田んぼに産み落とされた卵は、そのまま冬を越し、田んぼに水が入るとヤゴになり35日ほどで羽化し、高い山地へ移動して避暑、秋になると里山の田んぼへ舞い戻ってくる。そんな日本の気候風土にピッタリ合った暮らしをしていたアキアカネ。なぜ少なくなってしまったのでしょう?
『宇根豊著:「百姓仕事」が自然をつくる』の本に詳しい考察があります。機会がございましたら、是非ご一読下さい。
2006. 8. 27 斎藤 靖明(abusaito)
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