「徒然虫」 15号

里山だより13ハルリンドウ

「春の訪れ3」

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 昨年度「里山」をテーマに連載させて頂き、ありがとうございました。私自身、とても勉強になりました。(勉強不足も痛感いたしました。)今年度はちょっと視点を変えて書いてみたいと思います。もうしばらくお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 さて先日、小野小学校の子ども達と学校近くの里山へ観察に出かけた時のことです。子どもというのはすごいもので、大人に見つけられないものを簡単に見つけてしまうことがあります。(顔の位置が地面に近いため、よく見つかるのでしょうが・・・)山道の木陰でちょっと休んでいると、「先生、かわいい花があるよ!」と袖を引っ張る子がいます。休んでいた私たちの足下に青紫色のかわいい清楚な花が3つ並んで咲いていました。「ハルリンドウの仲間だね!うれしいなあ。」と答え、どうしてうれしいのか、その訳を話してやりました。

 「このあたりはね、人が歩けないほどシノが茂り、暗い林になっていたんだよ。
下見に来た先生たちが迷子になってしまったくらいだ。ちょうど5年前から、小野小の子ども達がシノを刈り始めたんだよ。1年目に、山道のシノを刈り、歩けるようになった。2年目に、山道のまわりのシノを刈り、山道が明るくなった。3年目に、山道と山道との間のシノを刈り、林全体が明るくなった。4年目に、刈り残しや新しく生えてきたシノを刈り、とても歩きやすい山道になった。そして5年目の今年、こんなかわいい『ハルリンドウ』が咲いてくれた。みんなのお兄さんやお姉さんたちが一生懸命に汗を流してきれいにしてくれたから、この里山で『ハルリンドウ』が咲くことができたんだよ。うれしいね。」と。

 里山には、こんな宝物がたくさんあります。里山の宝物は、どれもみな「里山を使ってきた人たちの汗」が結晶したものばかりです。人が手を入れ続けることでしか守ることのできない里山で、今年はどんな宝物に出会えるでしょうか。

 5月13日のCS自然観察会では、こちらも5年目となる蕨の里山に出かけます。同じように見える里山でも、場所が変われば別の個性を持ったかけがえのない自然です。目の前に広がる自然をからだいっぱいに感じ、五感を開いて、ゆったりとした時の流れを楽しみたいものですね。元気いっぱいの子ども達も、快い疲れと未来への夢を感じ取ってくれることでしょう。

※この春のリンドウは「フデリンドウ(筆竜胆)」のようです。

2007. 4. 29 斎藤 靖明(abusaito)

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