「徒然虫」 18号

里山だより16「夏の想い出」

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 夏になると決まって想い出すことがあります。それは「クロアゲハの無尾型」「ミヤマシジミ」そして「シルビアシジミ」との出会いです。その後一度も再会できないこれらの出会いは、今も鮮明に記憶に残っています。私は、これらのチョウとの再会を求めて、里山の環境を守ろうとしているのかもしれません。

 中3のある夏の日、家の近くの水たまりで黒く輝く美しいアゲハチョウを見かけました。急いで家に帰り、弟と一緒にその場所に戻ると、チョウはまだ吸水していました。「クロアゲハの雄」に間違いないのですが、切れた様子はないのに「尾」がありません。また、普通のクロアゲハより黒さに艶がありとても美しいのです。まだ、昆虫を標本にしていなかった頃だったのですが、特別に展翅(てんし)し標本を作りました。高校に行ってから友人のチョウ博士「四十万(しずま)君」に見せたところ、ごくまれに見られる「無尾型」だということでした。

 「ミヤマシジミ」に出会ったのは、高三の夏です。南後箇の大塩湖近くにある我が家の畑の土手で、コマツナギの花に群れ飛んでいました。その羽の鮮やかな紫色と朱色、花のピンク色が印象的でした。これも四十万君の話によると、富岡では小野や丹生だけにいる比較的珍しい種で、ため池や湖などの土手にはえるコマツナギに集まるということでした。
 「シルビアシジミ」との出会いも、全くの偶然です。やはり四十万君と安中市の昆虫類を調査している時、30mほど先で「おかしな飛び方をしているヤマトシジミの雄?」を見つけたので、走っていって網に入れてみるととても珍しい「シルビアシジミ」でした。その時は写真も撮らずすぐに逃がしてしまったのですが、実は10年以上も西毛地域で確認されていない大変なチョウだったのです。
         「シルビアシジミ」→

 「クロアゲハの無尾型」や「シルビアシジミ」との再会が難しいのはわかっていましたが、「ミヤマシジミ」との再会も果たしていません。あれほどたくさんいたのに、人が環境を少し変えただけで姿を消してしまったのです。いつかあの鮮やかな斑紋ときらびやかな舞いをもう一度見てみたい。いや、富岡のあちこちで見られるようにしてみたい。これは、私の夢の一つです。
←「ミヤマシジミの雄」

(画像はhttp://butterfly.sakura.ne.jp/より転載させていただきました。)

2007. 7. 29 斎藤 靖明(abusaito)

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