「徒然虫」 19号

里山だより17「ツマグロヒョウモン」

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 この数年間で富岡の里山に起こった最大の異変は「ツマグロヒョウモン」というチョウの出現でしょう。右の写真がオス、下の写真がメスで、どちらも我が家の庭で育ったものです。「ヒョウ・モン・チョウ」は、名前の通り「ヒョウ(豹)」のような模様をもったチョウの仲間です。その多くが「スミレ類」を食草とし、年1回の発生で夏から秋に成虫が見られます。皆さんも信州などの高原で花を訪れるヒョウモンチョウの仲間を見かけたことがあることと思います。

 この「ツマグロヒョウモン(翅の先が黒いヒョウモンチョウ)」は、20世紀までは富岡周辺にいませんでした。私も2000年までは図鑑でしか知らない蝶だったのです。2001年の秋に富岡で初めて発見した時は、とても驚いたものです。翌2002年には夏にも見られるようになり、少し心配になりました。しかしいやな予感は的中し、2003年には春から秋まで見られるようになり、昨年からは富岡で最もよく目にするチョウの仲間となりました。

 このチョウは、他のヒョウモンチョウと異なり、条件さえ良ければ年に何度でも発生します。しかも、野に生えるスミレばかりか「パンジーやビオラ」など栽培されているスミレの仲間も大好きです。我が家の庭では毎年「パンジー」をプランターで育てていますが、6月ともなると「ツマグロヒョウモンの幼虫(黒地に赤い縦の筋、クロのトゲトゲ・・・、写真では紹介しかねます。)」が何十匹も群れています。繁殖力も食欲も旺盛なこのチョウが見られるようになったことで、他のヒョウモンチョウの仲間は少なくなってしまったように思います。何しろ他のヒョウモンチョウが眠っている間に、食草のスミレ類を食べ荒らし、仲間をどんどん増やしてしまうのですから、全くあきれたチョウです。

 もうお気づきのように、このチョウの北上は「温暖化」の影響の一つです。娘と調べてみたところでは、この30年の間に最高気温30℃以上の日が年平均44日から58日へと14日増え、35℃以上の日が年平均3日から11日へと8日増えていました。別の言い方をすれば、この30年の間に、夏が半月ほど長くなり冬が半月ほど短くなったということでしょうか。さて記録的な暑さの続く今年は・・・。はたまた、今から30年後は・・・!

2007. 8. 26 斎藤 靖明(abusaito)

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