「徒然虫」 21号

里山だより19「尾瀬」

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 変わらない豊かで素晴らしいものを目の当たりにした時、何を感じ何を考えるか。それは自分の心を観ることになるのだと考えています。例えば尾瀬を訪れることは、私の心を鏡に映して観ることでもあります。

 さて、15年ぶりに尾瀬(尾瀬ヶ原)を訪れました。前回訪れた時は、普通の中学の理科の先生でしたが、今回訪れるまでに里山での活動を経験し、デジカメというツールも手にしました。尾瀬は私の心にどのように映るのか、とても楽しみでした。果たして観るものは以前より美しく輝きを増し、足下の些細な現象に一喜一憂する濃密な時間を過ごすことができました。そして、近い将来、急激に悪化するであろう尾瀬の環境に限りない哀しみもおぼえました。この確実な悪化を食い止めるすべはありません。人間が尾瀬を訪れることによる影響よりもはるかに大きな影響を与えることになる温暖化は、今後確実に加速し、尾瀬を入山禁止にしても、尾瀬の環境を変えてしまうでしょう。尾瀬ヶ原だけではありません。至仏山や隣の笠ヶ岳(昔の至仏山のような高山植物の宝庫といわれている山)などの環境も、そこに生息する生き物たちも、変化し絶滅していってしまうことになるでしょう。

そんな思いや哀しい未来を知ってか知らずか、尾瀬はやはり美しいのです。花もなく虫もいないこの時期でさえ、その魅力は特別で、山の紅葉も、草紅葉も、苔紅葉も見事でした。期待が大きかったにもかかわらず、その期待を少しも裏切らないどころか、期待以上の喜び・楽しみを与えてくれた尾瀬・・・。しかし気になるのは、木道を歩いていくだけの人が多いように思えることです。立ち止まれる場所が少ないからやむを得ないのかもしれませんが、美しい景色の中を歩くだけでは、とてももったいない思いです。里山など身近な自然に親しむと、尾瀬で過ごす時間も豊かになってくるはずです。

<美しい苔紅葉>

2007. 10. 28 斎藤 靖明(abusaito)

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