「徒然虫」
23号
里山だより21「波紋の芸術(水切り)」
「水切り(フォーレの舟歌より)」
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「水切り(Stone Skipping)」という遊びをご存じでしょうか?水面に平べったい石を投げて、ちょんちょんと水面をはねさせる遊びです。私は、子どもの頃父につれられて河原に行き、一緒にやり始めました。自分は何回もできないのに、父は20回以上もできました。その後も河原に行くたびに練習していたものです。本格的に練習したのは高校に通っていた3年間です。富岡市のあちこちで昆虫採集をしていた富高生の仲良し3人組(四十万くん・関口くん・私)は、冬になって虫が少なくなったとき、鏑川の広い河原で水切りを始めました。
はじめの頃は、平らな石を探して「何回できるか」を競いました。上手に投げるこつは、@平らな石を水面すれすれから投げる。A水面に接するときの角度を合わせる。B石にできるだけ回転を与える。C石にスピードを与える。などです。特に重要なのはAとBで、Bは、石の角度を安定させ(角運動量保存の法則:走っている自転車は倒れにくくなる原理)、水をはじく(水の引力の軽減:水は空気よりも粘性が高く、運動を妨げる摩擦力が大きい)ために、とても大切です。
皆が20回を超えるようになってくる頃、いくつかの発見がありました。(右投げの場合)@水面上をはねていく石はS字型曲線(シグモイド曲線のような)を描いていく。A空中を飛んでいる平らな石はだんだん左向きに傾いていく。B水平よりやや下向きに投げた石は少しの間浮き上がる。C石の回転による風圧で繊細な波紋が一瞬できる。D少し角張った石に強い回転を与えると、途中で急に角度を変える。などです。中でも熱中したのは、Cの波紋を作ることでした。はじめは偶然の発見です。水面すれすれに投げようとした石が水面に届かずそのままポチャン・・・失敗でした。美しく繊細な無数の波紋を残して・・・。何しろ美しいのです。一瞬で消えてしまうその美しい波紋(作品)を「ゼロ回の無限大」と名付けました。さらに素晴らしいのは「1回の無限大」という作品です。投げられた石が一瞬だけ水に接し、その前後に無数の波紋が広がるもので、最高の石と水面、そして絶妙の技術が要求されます。
昆虫採集も水切りも、子どもの遊びといってしまえばそれまでですが、高校生の頃に熱中し、その奥義?を極めようとしたことで、感性や思考を磨くことができ、このことが自然の神秘や宇宙の調和を見つめ、ひいては音楽の美しい秘密に心を開いていくきっかけになったのだと思います。
2007. 12. 30 斎藤 靖明(abusaito)
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