富士見ファンタジア文庫 <卵王子>カイルロッドの苦難 A 出会いは嵐の予感

著:冴木 忍 挿絵イラスト:田中 久仁彦

 あらすじ 

  「どうして俺が神殿から指名手配されなくちゃならないんだ」
  フェルハーン大神殿がばらまいた手配書を見て、カイルロッドは怒りを覚えた。
  母親から卵として生まれた<卵王子>とはいえ、狙われる理由がさっぱりわからないのだ。
  しかし、次から次へと刺客は彼に襲いかかる!

  とある町に立ち寄ったカイルロッドたちは町の支配者、ツァオ一族に捕まってしまった。
  カイルロッドにかけられた莫大な賞金が目あてなのか!?
  しかも、カイルロッドはそうとは知らずに、封印されし魔物を目覚めさせていた……。
  不幸を背負って今日も行く、カイルロッドに明日はあるのか――――。

 登場人物 

         
   街の創始者ツァオの子孫。一族の長は弟のシャオロンだが、
  実際に仕切っているのはメイリンである。
   見た者を金縛りにする”魔眼”の持ち主。
  沈着冷静で厳しい性格に見られるが、弟を大事に思っている。
          シャオロン
   ツァオ一族の若長だが、気が弱く、周囲から”お飾り”と
  言われている。
   繊細な気質ゆえに荒事が苦手で、ツァオの血筋を重荷に
  感じる一方、長としての責務を姉に任せきりにしている事も
  また心苦しく思っている。
         ハ ル ト
   街外れの荒野で行き倒れている所をカイルロッドに拾われる。
   山中の神殿に奉納するはずの銀杯を、ツァオ一族のゴロツキに
  奪われてしまい、探していた。
   一旦眠り込んでしまうと、ちょっとやそっとでは起きない図太い
  神経の持ち主だが、なかなかに器用で料理も得意。


   家具を持ち上げようとしたが、ただでさえ重いのに、揺れがおさまらず足場が安定しないので、
   なかなか動かせない。

  「僕はここで死ぬ。僕がいなければ、姉さんだって幸せになれるんだ。だから君も早く逃げてくれ」
  「いい加減にしろ!」

   すっかり諦めた様子に腹を立てたカイルロッドが、シャオロンの横顔を平手打ちした。

  「あんたが死んだら、メイリンが悲しむんだから!悲しんでくれる人がいる以上、簡単に諦めるな!
   自分で駄目だと思ったら、本当に駄目になるんだぞ!」

   ひっぱたかれ、シャオロンは鳩が豆鉄砲をくらったような表情で、カイルロッドを見上げていた。

1巻・旅立ちは突然に へ                                   3巻・愁いは花園の中に へ

 卵王子の入り口へ 

2巻「出会いは嵐の予感」より抜粋させて頂きました。
封印を解かれた蛇によって突如起きた地震に、街もツァオの邸も崩れだし、
逃げ遅れたシャオロンをカイルロッドが助けに来たシーン。

シャオロンは右足だけ家具に挟まれてしまっている状況なんですが、
上絵だと下半身全部挟まれてるっぽくなってしまいました;;
メイリン達、今回限りの登場ですが良いキャラです。