富士見ファンタジア文庫 <卵王子>カイルロッドの苦難 C 面影は幻の彼方

著:冴木 忍 挿絵イラスト:田中 久仁彦

 あらすじ 

  カイルロッドは今日も追われていた。もちろん宿敵ムルトが放った化物に……。
  「どうしてこう次から次へと、化物が現れるんだ」
  思わずカイルロッドの口からぼやきが洩れる。

  イルダーナフの鉄鎖術により、危機を脱したカイルロッドたち。だが、ムルトの追撃の手はゆるみはしなかった。
  旅の途中で立ち寄った村に、再びムルトの下僕が襲いかかり、村は大きな被害を受けてしまった。
  気落ちするカイルロッドに、イルダーナフがまたもや難題を投げかけた----。

 登場人物 

           メディーナ       
      魔法・治癒術に加えて剣まで使いこなす美女。
     荒野のオアシスに師・ゲオルディと共に暮らしており、
     なんとイルダーナフの娘。
     父親譲りか口が悪いが、冷たい訳ではない。
          ゲオルディ
     「赤い山(アル・アタ)の魔女」と呼ばれる大魔法使い。
    イルダーナフとメディーナの魔法の師でもある。
    笑い上戸で、素直な王子をからかうのが好き。
                 
     カイルロッドと名乗り、手当たり次第に街や村を壊滅
    させている。
    王子と瓜二つな上、戦闘能力も同等かそれ以上を有する。
    ためらいの無い破壊と殺戮の正体は…


       「さっさとやれ」
        イルダーナフに促されたが、カイルロッドは動かなかった。動けなかった。

       これまでも何回か力を使ったことはあるが、無辜の人々に向けたことなどなかったのだ。
        カイルロッドがためらっていると、火を恐れて離れた人々が遠巻きに家を取り囲み、
       一斉に口を大きく開いた。

        シュウゥゥゥ……。
       細い音がして、人々に口から色く光る糸のような物が出た。無数の糸が吐き出され、
       カイルロッド達のいる家を覆いだした。

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       ミランシャは強気だった。イルダーナフもいないのだから、下手に挑発しては危険だと
       わかっているのだが、腹がたって仕方なかった。
       ムルトといい、フェルハーン大神殿の刺客といい、こいつらのせいでどれほどカイルロッドが
       傷つき、苦しんでいるかを思えば、嫌味や皮肉も言ってやりたくなる。

       「けど、もしここに王子がいても、あんた達なんかに殺せるわけがないじゃない。
       これまでで証明済みだもの」
       鼻で嘲笑してやると、短剣が動いた。調子にのりすぎたとミランシャは後悔した。

       が----。
       短剣はミランシャの喉を裂くことなく、男の手の中で泥細工のように崩れてしまった。

3巻・ 愁いは花園の中に ヘ                                    5巻・ 野望は暗闇の奥で ヘ

 卵王子の入り口へ

4巻「面影は幻の彼方」より抜粋させて頂きました。
旅の途中助けた青年・タジの村に厄介になる王子達一行、
しかし王子を狙う魔物が村人達を殺し、操って王子達を追い詰めていくというシーンです。
このお話で見せるイルダーナフの厳しさ(死を認識させるか、させないか)がどちらが良いのか
王子は判断を付けかねますが、何度も読んでる私にもいまだにどちらが良いのか分かりません…

下段は4巻中盤、メディーナの格好良い!登場シーン。ミランシャの強気っぷりも可愛いです。