-ゴスドラマ過去ログ:11201-11300-
ト書き「建物に密接して発生している森の木の上で、両人は溜め息を吐いた。」
北山陽一「戻ろっか?」
安岡優「あい。」
ト書き「二人は気配を隠して、木から降りると、真理女史の元へ戻った。」
村上てつや「久々だな…その格好見るの。」
黒沢カオル「そお?あ…てっちゃんに殺されそうになってから、全然人前で髪下ろしてなかった。」
村上てつや「殺すつもりはなかったって…説明しただろっ」
酒井雄二「あははのはー。」
ト書き「黒沢をまん中に挟んで、二人ともSP宜しく後宮へと戻ってきた。」
安岡優「おかえりー…なんか、ちょっと遅かったね。」
ト書き「バケツプリンを取り分けて居た安岡が、3人を見て片手を振る。」
酒井雄二「何…してるんすか。」
北山陽一「戻ってきたら、…『おやつの時間』だそうで。プリンの他にも…」
ト書き「北山が指した先に、色とりどりのケーキや冷菓が取り揃えてあった。」
酒井雄二「まだ、朝の10時だよ…?」
ト書き「呆然と呟いてみるが、その呟きは誰も耳にも届かなかった。」
北山陽一「カオル君…先程は、すいません。酷い言い方をしてしまいました。」
黒沢カオル「良いよ。もう、気にしてないから。」
村上てつや「スゲェな…甘いもんばっかじゃねぇか…。」
黒沢カオル「わぁ…美味しそう…こんなの作れたら楽しいだうなぁ。あとでレシピもらおっと!」
北山陽一「黒沢さん素に戻ってどうするんですか…。」
黒沢カオル「あぁ…つい…。」
ナレーション「恥ずかしそうに頭をかく、料理長黒沢カオルであった。」
安岡優「さて…今後の身の振り方でも考えようか。」
北山陽一「…本心に気付いたんなら、それに従ってみるのも一興ですよ?」
黒沢カオル「うん…。」
ト書き「目の前のカップを手にとって、珈琲を口に運んだ。」
黒沢カオル「ユタカ…一つ、お願いゴト。頼まれてくれる?」
安岡優「良いよ。」
ト書き「安岡は即答する。」
黒沢カオル「国民の前で…盛大に『王女』を殺して欲しい。」
安岡優「うん………って、えぇえっ!?」
ト書き「黒沢以外の同席者が呆然とした表情をする。」
黒沢カオル「この国を継ぎたくないの。だからね?んー何て説明したら良いのかなぁ…例えば、火薬と血のり使って、撃たれたのを偽装して…『即死』したって診断書書いてくれれば。」
北山陽一「それでいいんですか?」
黒沢カオル「だって、…そう思い込むんじゃないの?」
酒井雄二「いや…そうじゃなくてね?」
黒沢カオル「私ね思ったの、人の為じゃなくて自分の為にそうした方が良いって…。」
北山陽一「自分の為…ですか…。」
黒沢カオル「後悔したくないの、だからココでけじめ付ける…もう自分から逃げるのは辞める。」
安岡優「カオルちゃん…」
村上てつや「……(けじめ…かぁ…)。」
黒沢カオル「てつ兄ちゃん、良いでしょ?お願い…。」
村上てつや「…よし…わかった、俺がカオルを殺す…。」
ト書き「村上以外の同席者は一瞬動揺した。」
村上てつや「カオルは俺が責任を持って殺す…それが俺のけじめだ…。」
安岡優「てつ……それで良いの?」
村上てつや「どうせ、偽装だろ?…カオルがやりたいって自分の意思を表に出したんだ、協力するのが俺らの宿命だろ?」
黒沢カオル「ありがとう…。」
ナレーション「その時、村上はその仕事を黒沢との最後の別れとし、決心した。」
ト書き「時間が過ぎ、酒井と村上は2きりでベランダに立っていた。」
酒井雄二「良いんですか…それで…。」
村上てつや「カオルはお前を選んだんだ…俺は居ない方が良いだろうよ…。」
酒井雄二「カオル君を殺すという演技をした後、あなたはどうするんですか?」
村上てつや「…居なくなるよ…カオルの前からもヤスの前からも…酒井、北山の前からもな。」
酒井雄二「後悔しないんですか…。」
村上てつや「お前らしくねぇ質問だな、後悔しない為にカオルを殺す、後悔しない為にカオルの前から居なくなる…。俺もけじめ付けるんだよ。」
酒井雄二「そうですか…。」
ト書き「銜えた煙草に火を着けようとしたが、ライターが無かった為村上は舌打ちして煙草を指で摘んだ。」
酒井雄二「どうぞ。」
ト書き「酒井が、村上にマッチの箱を渡した。」
村上てつや「…わりぃな。」
酒井雄二「いえ。」
ト書き「箱を振って、音を鳴らすと村上は中の箱を押し出してマッチを取り出す。」
酒井雄二「あなたとこうやって話すことが出来るのも最後ですか…。」
村上てつや「…色々悪かったな…。」
酒井雄二「何がですか?」
村上てつや「…いきなり銃向けたり…俺の代わりに撃たれたり…」
酒井雄二「…気にしないで下さい…今こうやって居るのも、あなたは見かけによらず良い人だって分かったのも…そういう事があったからです。」
村上てつや「…明日は最後の仕事か…みんなには言うなよ酒井。俺が居なくなるって事、居なくなった事もな…。」
酒井雄二「聞かれた場合はどうしますか?」
村上てつや「…言わないでくれ、カッコ悪いからな…。」
酒井雄二「分かりました…。祈ってますよ、すべての成功を…。」
村上てつや「あぁ…お前もカオルを幸せにしてやれよ…絶対だからな。」
ト書き「そういうと村上はその場を後にし、酒井の方を向かないで手を振った。」
酒井雄二「絶対なんて…あり得ないのに。」
ト書き「マッチの箱を、ポケットにしまうと、酒井は指を組んで呟いた。」
酒井雄二「俺は…万能じゃないのに、どうして期待するのかなぁ。」
ト書き「独りごちて、酒井は空を仰いだ。」
ナレーション「翌朝、城の周りにはたくさんの国民が集結していた。」
安岡優「よし!これでカオルちゃんの準備はバッチリ!」
北山陽一「ご苦労様です。しかし凄い人ですねぇ…この人たちみなさんがだまされると思うと…」
黒沢カオル「可哀想かなぁ、国民…。」
北山陽一「面白いですね。楽しくなってきましたよ!」
効果音「ズルッ!!」
ト書き「まるでドリフのように、北山以外がいっせいコケた。」
安岡優「センセってばぁ…」
黒沢カオル「とっ…処で、てっちゃんは?」
酒井雄二「ぎく。」
北山陽一「そう云えば見かけてませんね…。」
村上てつや「へ?」
酒井雄二「あ、ああ良かった、まだ居たんだ。」
村上てつや「ああ…喫煙室居たんだよ。」
北山陽一「これ…ペイント弾です。今のうちにどうぞ。」
村上てつや「…カオル、ちょっといいか?」
黒沢カオル「えっ…なに。どうしたの?」
村上てつや「これ、やるよ。」
ト書き「村上は黒水晶のロザリオを黒沢に渡した。」
村上てつや「先に、出る。」
黒沢カオル「え…てっちゃん?」
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