-ゴスドラマ過去ログ:13201-13300-
北山陽一「(良いですか?)……12時丁度。もう次の日だ、」
効果音「どんどんどんっ。」
ナレーション「もう一度勢いよく扉がたたかれた。」
小林社長「誰だこんな時間に…狸だって訪問するときは静かに来るぞ。」
ト書き「「狸が来るのかこの家は!?」」
ナレーション「まぁ、ト書きさん…”カオルは玄関の方に向かった”」
酒井雄二「で…その後に5人で暮らし始めて、早何年ってことですか…。」
北山陽一「話がイマイチ掴めないなぁ…真相は親父に聞くしかないのかぁ…。」
黒沢カオル「てっちゃん!!」
ト書き「その時、玄関から大きな声でカオルが叫んだ。」
村上てつや「カオル、なんでそうやって1人で行くんだよ!心配すんだろ、どうしてお前は…。」
ト書き「村上の怒鳴り声でリビングに居た3人が飛び出してくる。」
黒沢カオル「…てっ…てっちゃん…?」
ト書き「少し涙目の村上は下を向いた。」
小林社長「ナンダいきなり…おまえは本当に常識はずれな奴だなぁ…今何時だと思ってるんだ。」
北山陽一「まぁ、まぁ…親父、上がれよ…コーヒー飲むか?」
ト書き「陽一は村上の側に行き、背中を押した。」
北山陽一「雄二、コーヒー。一番濃いブラックでなっ…。」
酒井雄二「はいはいっ、少々お待ちを。」
ト書き「キッチンへ向かう雄二、残りの4人はリビングの椅子に座る。」
村上てつや「すみません、お父さん夜分遅くに…。」
小林社長「ったく、いくつになってもお前は…。まぁ、良い。」
ト書き「コーヒーを一口飲むとため息をつく小林社長。」
酒井雄二「はい、親父。」
村上てつや「…優は?…もう寝たか…?」
黒沢カオル「ぅうん…。」
ト書き「他人行儀なカオルと村上。」
北山陽一「…あっ…あの…」
黒沢カオル「てっちゃん、お願い!本当の事話して。…もう隠し事はなしにしよう、陽一も雄二もこんなに大きくなったんだし…ちょうどいい機会だから。」
ト書き「陽一の言葉をさえぎると、カオルは村上の目を見て言い切った。」
安岡優「…まぁまぁ…?…のどかわいたぁ…。」
ト書き「寝ぼけ眼の優がフラフラしながらカオルに歩み寄る。」
北山陽一「優ぁ、コッチおいで。ナニ飲みたい?」
安岡優「??…パパだぁ!」
ト書き「目を大きく開くと優は村上に手を伸ばした。」
北山陽一「はぁ…(いいタイミングで…小悪魔が)優、パパ疲れてるんだからコッチおいで。」
村上てつや「良いよ…。どうした?優…何飲もうか?歯磨きしなきゃいけなくなるからな、お水で良いか?」
安岡優「うん♪ パパお迎えに来てくれたんでしょ?早く一緒帰ろ♪」
村上てつや「今日はおじいちゃんのところでお泊りだ。お水飲んだら早く寝ろ、その前にトイレ行けよおねしょすんだから優は。」
安岡優「はぁ〜い!でもボクもう大きいからおねしゃなんかしないもん!」
村上てつや「わかったよ、ほらっ早く飲んで寝ろ。」
ト書き「カオルが持ってきたお水を優に渡すと村上は優を頭を撫でた。」
安岡優「ぷはぁ〜…。 おやすみなさぁい☆」
村上てつや「おやすみ。ちゃんとトイレ行って、布団かけて寝ろよ。」
ト書き「村上は腕の中から優をおろすと、ふぅとため息をつき下を向いた。」
北山陽一「親父…優の事なんだけどさ…親父たちの子供じゃないの?」
村上てつや「………。」
北山陽一「母さんはなんで行方不明になってたの?なんで記憶喪失になってたの?」
酒井雄二「陽一兄貴・…!」
村上てつや「………。」
北山陽一「黙ってないでなんとか言えよ!!母さんがどんだけ悩んで、苦しんでるか…なぁ親父!!」
ト書き「村上の襟元を掴み感情的になって怒る北山、それを止めようとする酒井。抵抗をしない村上。」
村上てつや「優は…正真正銘、俺の子供だ。もし、不安なら遺伝子検査でもすればいい。」
北山陽一「なら、どうして母さんはあんなにも不安がってる?あんたが……あんたが何も言わないから…。」
ト書き「涙声になり、顔を伏せた北山の肩を抱き寄せると2回軽く叩いた。」
村上てつや「……悪かった。」
ト書き「何よりも重い言葉に、北山と酒井が気押された。」
村上てつや「でもな…?俺だって…俺だって全てを知ってる訳じゃない。……カオルを見つけた時、あいつは俺の事も皆の事も忘れてたんだからな。」
酒井雄二「親父…珈琲入ったよ。」
ト書き「そう言って、酒井は村上の左側から珈琲を置いた。」
北山陽一「ひーふ…みの…あれ?」
小林社長「どうしたんだ?」
北山陽一「…あ、いいのか…ごめん、じっちゃん。ちょっとオトナの事情を考えてただけなんだ。」
黒沢カオル「…私は、記憶喪失の間の事、何も憶えてないんだね…だから、優を産んだ事も全然憶えてなかったんだ。」
ト書き「自分で、自分の身体を抱き黒澤は目を閉じた。」
酒井雄二「でも…いきなり、『これはお前の子だよ』って言われてそのまま育てる気になったよね。」
北山陽一「雄二っ!」
ト書き「北山は、酒井を諌めた。」
黒沢カオル「いいよ、陽一…雄二の言う通り。てっちゃんに生まれたばかりの優を見せられても疑問が浮かばなかったんだから。」
北山陽一「…子供を産んだ時、すぐに母親に抱かせたら…子供との距離がより親密になって、虐待とか…発展しなくなったって聴いた事ある」
酒井雄二「遺伝子とかだけの繋がり以上に何かあったんじゃないか、ぐらいに考えようや兄貴。」
北山陽一「親父、本当に母さんが生んだのか?本当に親父と母さんの子供なのか?優は。」
安岡優「うにゃあ〜?!なにぃみんなで何してるのぉ??」
ゴスペラーズ「(安岡以外)>優ぁ!」
安岡優「はにゃ??」
村上てつや「おい、寝たんじゃないのかよ?!どうした??」
安岡優「……パパ…?…ママ…?…ボク…ねっ…」
ト書き「息を呑んで優を見る5人。」
安岡優「ボク…ボク、パパとママの子じゃないの?」
黒沢カオル「優…!?」
安岡優「パパもママも…ボクのこと嫌いなの?!」
村上てつや「優…。」
ト書き「村上は周りの緊迫した雰囲気とは違う、優しく冷静に優を抱き上げ言った。」
村上てつや「優はパパとママの子だよ、どうしてそんな風に言うんだ?パパもママも優のこと嫌いって言った事あるか?」
ト書き「優は首を横に思いっきり振る。」
安岡優「だって…だってぇ…ぅっ…」
村上てつや「泣かないの、どうして泣く?…優、パパが横で寝たときなんて言ったか覚えてるか?」
ト書き「村上は優の涙を拭いてやり、抱きなおし体勢を整えた。」
村上てつや「『パパもママも陽一も雄二も、優を1人になんかしない。』そう言ったよな?」
黒沢カオル「優…心配しなくて良いの、優はパパとママの大切な、大切な、子なのよ。」
村上てつや「……聞いてたのか?優…。怒らないから言ってくれ…さっきパパ達がしていた話、聞いてたのか?」
ト書き「数秒してゆっくり頷く優。」
安岡優「お水のんでから…寝ようと思ったけど…でも、皆で集まってたし…気になって。」
ト書き「言葉がつまり、そのまま瞳に涙が溜っていく。」
村上てつや「聴いてたんだな…。」
ト書き「嗚咽を堪えながら、安岡は頷いた。」
酒井雄二「誰も…優の事を嫌ってないよ。嫌いだったら、俺みたいに郵便局の近くにあるバス停に捨てられるんだからな。」
ト書き「泣き顔のまま、安岡は息を飲んだ。」
黒沢カオル「雄二っ、何云ってるのっ!?」
酒井雄二「うちの両親にはホント感謝してるよ…拾い子の俺を育ててくれたんだから。」
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