-ゴスドラマ過去ログ:13501-13600-
北山陽一「…優。父さんの所行ってきたら?」
安岡優「パパの…トコロ…?」
ト書き「涙で濡れた顔を袖で拭きながら優は首を傾げた。」
北山陽一「…ほらっ。」
ト書き「陽一は優の背中をポン押すと微笑んだ。」
安岡優「でも……。」
ト書き「何も言わずただ見送る陽一と雄二。 外に出ね優。」
安岡優「……パパ…。」
村上てつや「ぅんっ?…優、どうした?目は真っ赤だし、頬ほっぺたも濡れてるし…オイオイ、洋服まで。」
安岡優「パパぁぁ〜!」
ト書き「泣きながら村上に抱きつく優。」
村上てつや「おっ、おい…優、どうしたんだよ…優?泣いてちゃわかんないだろ…。」
ト書き「煙草を携帯用灰皿に捨て、村上は泣いている優を抱き上げた。」
安岡優「ボク…僕、イイ子になるから…。イイ子になるから…だから…だから、ママの記憶返してあげてっ…!」
村上てつや「…優…。」
安岡優「僕の記憶…消して良いからっ…それでパパ」
ト書き「泣きながら喋り呼吸が乱れ、言葉が詰まってしまった優。」
安岡優「…それでパパが…僕のこと嫌いじゃなくなるなら…僕…僕もう良いから…。」
村上てつや「優…。優の記憶が無くなったら、優はパパの事忘れるんだぞ…ママの事も陽一、雄二の事も…。」
ト書き「村上の言葉が今の優には重すぎ、更に泣いてしまった。」
安岡優「イヤだぁっ!イヤダァッ!イヤだぁ〜〜ッッ!!」
ト書き「村上の腕の中で大泣きしながら暴れる優。何も言わずただ静かに優を抱く村上。 」
村上てつや「忘れる方も忘れられた方も、凄く辛いんだ。…だから…パパの事を忘れるなんて、言わないでくれ。」
ト書き「息を吸い込んだ安岡の喉が、ひゅう、と音を立てた。」
村上てつや「(忘れられて辛い思いをするのはカオルの時だけで…あの時だけでいい。)」
ト書き「村上は優が落ち着いたのを見計らい、そっと自分の腕からおろした。」
村上てつや「もう泣くな…優は男の子だろ?泣いてたらカッコ悪いぞっ!?」
安岡優「だってぇ…だってぇ…ぅ。」
村上てつや「泣きながら飯食ったらママが”不味いのかな?”って思って、研究に没頭しちゃうだろ…顔洗って来い、パパもすぐ行くから。」
ト書き「コクンと頷く優笑顔で」
ナレーション「『コクンと頷く優の頭を笑顔で撫でながら、村上は家のほうに優を向かわせた。』……ト書きさん、ちゃんと言って下さい!」
黒沢カオル「あらっ?どうしたの、優。目がうさぎさんみたいになってるわよ?」
ト書き「台所でお味噌汁を作りながらカオルは優の顔を覗き込んだ。」
安岡優「ううん…なんでもなぁぃ…。」
ト書き「優の背丈では届かない高さの蛇口に精一杯手を伸ばし、水を出し顔を洗う優。」
黒沢カオル「あらららっ、お洋服ビショビショじゃない…着替えてきてからご飯ね。」
ト書き「優の肩をそっと押しながらカオルは台所からリビングへ向かった。」
酒井雄二「優ぁ…首の所ビショビショじゃないかぁ…着替えに行くぞっ!」
ト書き「カオルから優を引き受けると雄二は手をつなぎ部屋へ向かった。」
黒沢カオル「どうしたのかしら優ったら…。あっ、ごめんね陽一もうすぐご飯だから。」
北山陽一「あ、はーい。」
効果音「バタン!!」
村上てつや「ふぅ…。」
北山陽一「…親父かぁ…。」
村上てつや「俺で悪かったなぁ…。」
北山陽一「そう言う訳じゃないけど…。」
ト書き「冷め切ったコーヒーを口にし、村上は流し目で陽一を見た。」
北山陽一「で、オレに何か用ですか。」
村上てつや「…別に…。 陽一、お前俺の事嫌いか…?」
北山陽一「なんだよ…いきなり…。」
村上てつや「お前が俺を見る時の目…違うからな…。」
ト書き「コーヒーを飲み終えたカップを机に置き、村上はテレビのスイッチをつけた。」
北山陽一「違うって…?」
村上てつや「何ていうか…ライバルを見る目つき?!そんな感じ。」
北山陽一「…少なくとも、嫌いじゃない…な。ライバルだから嫌う事も無いと思うんだ…今は。」
ト書き「そう言って、北山は思考にふける際の視線で村上を見た。」
北山陽一「父さんの事を、『ライバル』として見てるのかぁ……。」
村上てつや「そんな感じがしただけだ。別に…そうとは限らないだろ。」
北山陽一「『ライバル』って、言葉の意味知ってます? 好敵手と…匹敵する人。あと他にもう一つあるんですよ。」
村上てつや「…なんだよ。」
ト書き「村上の視線に少し、楽しげな表情を浮かべ北山は答えた。」
北山陽一「……“恋がたき”。」
ト書き「呆気に取られる村上をその場に残し、北山は部屋を出ていった。」
酒井雄二「親父…テレビ見ながらアホ面するのやめてくれる?…子供の教育に良くないよ?!」
ト書き「優を連れて戻ってきた雄二は、村上の顔を見てため息をついた。」
村上てつや「…あぁっ…(陽一って…カオルの事好きなのかぁ…?)…。」
ナレーション「ったくぅ〜鈍感ですねっ!村上さんって。」
黒沢カオル「どうかしたの?あら、陽一は?」
酒井雄二「あ、着替えてくるって。なんかあったの?めずらしくニヤニヤしてたけど…。」
村上てつや「恋いがたき…ねぇ〜…。」
酒井雄二「はい?コイがどうかしましたか?」
村上てつや「ッあぁ…嫌別に…それよりカオル飯まだ!?」
黒沢カオル「出来たわよ♪手伝ってくれる?雄二と優。」
酒井雄二「はいっ、こしこまりましたっ! じゃ〜優はおじいちゃん呼んで来てくれ、それが終わったらお箸並べてな。」
安岡優「うん、わかったぁ!」
ト書き「色々考える村上、それを見て不思議に思うカオル。雄二は台所に、優は小林社長を呼びに言った。」
ナレーション「呼びに行った…でしょ!!」
黒沢カオル「ちよっと、いくら名前呼んでないからって、ぼーっとしてないで、てっちゃんも少しは手伝ってよ!」
村上てつや「んっあっ?…俺?」
黒沢カオル「もぉ〜!てっちゃんったら…。」
ト書き「ボーっとしている村上をほって雄二の待つ台所へ向かうカオル。」
村上てつや「…恋いがたき…ねぇ〜…。」
ト書き「まだぼやく村上。 もっしも〜し?大丈夫ですか?村上さん。」
北山陽一「…って、あれ?父さん、飯は?」
村上てつや「出来てるよ。」
ト書き「素っ気無い言い方の村上に、先程の発言を思い出す北山。」
北山陽一「親父…俺は母さんの事を、『母さん』以上には見れないよ。大体向こうとは生まれた瞬間から顔突き合わせてるんだから。」
村上てつや「なら、何でさっき“恋敵”とか言ったんだ?」
北山陽一「父さんの、知識とボキャブラリィを増やしてあげようと思って。増えたでしょ?」
ト書き「北山が眼鏡の奥で、悪戯好きの猫の様な笑みを浮かべる。」
村上てつや「紛らわしい事してんじゃねぇっ。」
北山陽一「ははっ。でも、親父とは不本意ながら同じ考えを持ってる部分があるからね。多分…ライバルとして見てるのは無意識のうちに、じゃないかな。」
村上てつや「…また、恋敵とか云うんじゃないだろうな。」
北山陽一「さぁね…そこん処は父さんの想像と推測に任せるよ。っと、俺も手伝ってこようかな。」
村上てつや「…だぁ〜〜〜っっ!もう訳わかんねぇ〜!!」
ト書き「北山の発言に付いて行けなくなり、頭をワシワシとかく村上」
黒沢カオル「ナニてっちゃん大声出して…どうしたの?」
北山陽一「さぁね…親父って面白いなぁ…。」
酒井雄二「兄貴…親父遊びするのやめろよ…。」
北山陽一「ハハハッ。母さん、ナニ運べばいい?」
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