-ゴスドラマ過去ログ:20501-20600-
村上てつや「悪ぃ。ちょっとだけ…話がしたいだけなんだ。」
酒井雄二「……じゃぁ、お話が終わるまで待ってます。」
黒沢カオル「わがまま言って悪いな」
酒井雄二「いえ。構いません。」
ト書き「事務的な口調で答えると、酒井はなるべく二人と距離を取り、明かりの届かない場所へ移動した。」
黒沢カオル「…で?」
ト書き「腕を組んだ体勢で、そのまま後ろの壁へ黒沢は体重を預けた。」
黒沢カオル「話ってのは?……死刑囚への情ってトコ?あんころ餅くいてーっていったら。渋茶付きで持ってきてくれんの?」
村上てつや「なんだそりゃあ……その前に、お前は甘党じゃねえだろ。」
ト書き「毒気を抜かれた村上が、考えを纏めているのか髪の毛の中へ手を突っ込んだ。」
黒沢カオル「最初に言っとくけど、俺を説得しようとしてもムダだから。どれだけ『地球征服』を語って日本某所でしか活動をおこなってないとしてもね。」
村上てつや「幼稚園とか、保育園の送迎バスは襲わないんだな?」
黒沢カオル「襲ってどうすんだよ。」
酒井雄二「……(流石に『王道』は走らないですか)………。」
ト書き「聴覚センサーを上げて、村上と黒沢の話に聞き耳を立てていた酒井。」
黒沢カオル「オレには酒井がいるし、ね。」
村上てつや「あんだと…?」
黒沢カオル「酒井は、世界中が敵に回っても俺の味方をしてくれる。もし…それが、それが……間違ってる事でも。」
村上てつや「じゃあ聴くがな。…お前が老衰、暗殺…何らかの原因で死んだ場合、その酒井はどうなるんだよ。」
ト書き「動揺を隠していた黒沢だったが、眉が僅かばかり動いた。」
村上てつや「お前と同様に、老衰で死ぬ訳にもいかねぇ…お前が造ったんだからちょっとやそっとじゃ壊れねぇだろうし。そもそも知能も高いから、何が起こったのか…理解出来るだろ。」
酒井雄二「…。」
村上てつや「あいつは、昔のお前みたく……お前が生きてきたのと倍以上…いや累乗数っても良いかもな。それだけの時間を狂うまで独りで生き続けるんだぞ。」
ト書き「村上は更に続ける。」
村上てつや「お前は、…お前は良いだろうさ。このまま、掴まって死ねばそれで終わる。でもな…お前の我が侭で造られた酒井の、造った責任ってやつを少しぐらいは理解しろ。」
黒沢カオル「悪いけど、てつに指図される覚えは無いし…酒井の事は俺が良く知ってる、てつに語る権利は無いよ。」
村上てつや「お前いつから”地球征服”なんてバカな真似しようって考えたんだよ。」
黒沢カオル「生まれた時から俺はそう言う運命だったんだよ…それがなんだよ?」
村上てつや「高校時代のお前はなんだったんだよ…優しくて真面目で誠実で、俺とは全く逆の性格でよ。」
黒沢カオル「偽りだよ…”仮面”を被ってたとでも言おうか…。」
村上てつや「今回のお前の目的は何だよ?”地球征服”語ってるけど、他に目的はあるんだろ?」
ト書き「壁に寄りかかりながら溜息をつき視線をそらす黒沢。」
黒沢カオル「…どうするべきかな…」
村上てつや「お前が”地球征服”以外を企んでても俺は阻止する…。俺の仕事は全てを守る事だからな。」
黒沢カオル「俺の造った”心”を持たない冷たい怪人を今回は試す…酒井とは全く違うタイプ…。これだけ言えばもう充分だろ?」
村上てつや「本当にそれだけか……?」
黒沢カオル「他に何があるの?」
村上てつや「本当に俺と戦うつもりなんだな……。」
黒沢カオル「言うまでもないと思うけど。昔の思い出に溺れるなよ…卒業と同時に”村上てつや”とは【さよなら】したはずだ。」
村上てつや「そうか…わかった。」
ト書き「掴んでいた腕を放すと路地から出ようと向きを変える村上。」
村上てつや「昔の思い出を美化したがってたんだな、俺…。黒沢、お前と闘う時は俺の全てをかける…、お前の存在を抹殺する。」
ト書き「静かに路地を出る村上を見ながら酒井は居た堪れない気持ちになった。」
黒沢カオル「今日は中止!行くよ、酒井。」
酒井雄二「…ボス、良いんですか?”地球征服”をしたくない訳でもなく、ボスが嫌いになった訳でもないんですが…ボスには後悔はして欲しくないです。」
黒沢カオル「俺には酒井が居る独りじゃない、酒井を独りにもしない…。てつとは”永遠の別れ”をしたんだよ、未練があるのはてつだけだよ。」
酒井雄二「…わかりました。では全力を尽くしましょう!”地球征服”は現実になります、ボスの為にも私は精一杯頑張ります!!」
黒沢カオル「ありがとう、酒井。お前を造って本当に良かったよ…(てつと似てる)…さぁ、戻ろう。」
ト書き「黒沢に優しい表情が戻り、安心した酒井は黒沢の手を引きながら路地奥へと更に進んだ。」
酒井雄二「さあ、我が家へかえるとしましょう!」
黒沢カオル「よし、帰ろう!!」
ト書き「二人は街灯の明かりも届かない場所から去って行った。」
村上てつや「……。」
効果音「ぴぴーっ ぴぴーっ」
ト書き「唐突に鳴った電子音に、村上はぎくりと身体を強張らせる。尻ポケットから携帯電話を取り出して、通話ボタンを押した。」
村上てつや「あい…もしもし?」
安岡優「もっしもーしっ!安岡だけどー今何処にいるのー?」
村上てつや「…あ、っと……車のすぐ近く。」
安岡優「そー。じゃ、すぐに戻るねー。怪しい人は、ただの酔っぱらいだったからぁ、そんじゃね。」
ト書き「一方的に電話は切れた。」
村上てつや「…あいつらにも迷惑かけるな…。私情は挟まないって…割り切るにはどうしたら良いんだよ…。」
ナレーション「と、とても複雑な気持ちでやりきれない村上は、黒沢の後ろ姿をけしたのにもかかわらず、ずっと目で追っていた」
安岡優「あーっいたいた」
ト書き「村上を見つけて安岡は駆け寄ってきた。」
安岡優「探したんだよ、もう。何処行ってたの?」
村上てつや「ん…いや、ちょっと。」
ト書き「その時、二人のリストウォッチ型通信機器が派手に音を鳴らす。……普及した文明の機器も、立場がない。」
村上てつや「…誰だよ…?」
安岡優「本気で判んないんなら、福沢諭吉の肖像画あげるよ。」
ト書き「付属されたスピーカーから、珍しく慌てた北山の声が発せられた。」
北山陽一「『二人ともっ、何やってるんですか!こっちに怪獣が現れて……うわぁっ!』」
村上てつや「あんだと…?」
安岡優「センセ!?……駄目だ、切れちゃった。」
村上てつや「そんな…あいつは、だって、今……。」
ト書き「呆然と立ち尽くしている村上の背を押し、安岡は車に乗り込むよう促した。」
安岡優「てっちゃん!行くよ!」
村上てつや「………あぁ。」
ト書き「顔の右反面を右手で覆い、村上は俯いていた頭を持ち上げる。」
村上てつや「(ちっ……く、…しょ…。」
ト書き「エンジンの回転数をあげ、安岡は村上が乗り込んだ事を確認すると、車を急発進させる。」
安岡優「てっちゃん!電波が何処から発信されたのか…ちょっと!聴いてる?」
村上てつや「ああ…聴こえてるよ…。そこの…コンビニの角曲がった、10メートルの範囲だ。」
安岡優「よーし、行こう!!」
ト書き「ハンドルを切り、コソビニの横に有る月極駐車場へ無断駐車する……罰金は勿論払わない。」
安岡優「目視出来んじゃない?」
村上てつや「…つか、あれだろ絶対…。」
黒沢カオル「あ……バリ忘れてきちゃったかも……」
酒井雄二「なんですとォっ!?」
黒沢カオル「やばいなー…戻るか。」
酒井雄二「なんでそんなに呑気なんですか!」
黒沢カオル「短気は損気っていうじゃん。」
酒井雄二「現状でその言葉を使う事は相応しく有りません!」
黒沢カオル「はいはい…落ち着けって。」
酒井雄二「貴方が慌てなさいっ。…少しぐらいは…ホントに…。ボス。」
ト書き「二人は今来た道を戻り始めた。」
北山陽一「ヤスっ!リーダー!」
安岡優「やーほー。ばっちし変身してるね。センセ。」
ナレーション「北山は着流しを着て、片手に持つ武器は…『ドス』という良く判らない格好だった。」
村上てつや「敵は?…ここに居ないのか?」
北山陽一「シャッターを食い破った後、そこの倉庫で現在動きを止めてます。多分『エネルギー補給中』なんでしょう」
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