-ゴスドラマ過去ログ:21301-21400-
黒沢カオル「俺は今やっと自分の夢を掴んだ、誰からも縛られない自由な生き方をしてる…。」
村上てつや「お前の夢…『自分の造ったもので、世界の人を助けてあげる』ってのは何処行っちまったんだよ・・・。」
黒沢カオル「それはこれから…てつを倒してからだよ…。」
村上てつや「…どうしても俺を倒すんだよな…。」
黒沢カオル「…てつを倒してから俺の全ては始まる…。」
村上てつや「…(後悔はしたくねぇ…けど…俺どうすれば良いんだよ。)…。」
北山陽一「…村上さん…。」
安岡優「…てっちゃん…。」
ト書き「二人は複雑な面持ちでにらみ合う二人を見守った」
酒井雄二「さて…お二人とも暇でしたら、我が輩の相手でもして下さいませんか。」
北山陽一「じゃあ……近くの喫茶店にでも入って、暫し歓談でも?」
安岡優「敵同士、じゃないの?」
酒井雄二「のんびりしてる場面じゃ…ございませんからなっ!」
ト書き「酒井が唐突に、二人との距離を詰めた」
安岡優「っ…くっ。」
ト書き「自衛の為に、反射的に動かした腕を取られ、そのまま乾いた地面へ安岡は倒された。」
酒井雄二「はい。そちらの方。動かないで下さいねー。動くと腕がどーなるか…あんたの想像力次第だけど。」
安岡優「う……うぅっ」
ト書き「後ろに捻り上げられた腕を動かそうとすると、激痛が走る。背中に乗った酒井の膝の感触を味わいながら安岡はもがくのを止めた。」
北山陽一「卑怯……っと、これは悪者の専売特許でしたね。」
酒井雄二「御理解戴けて光栄です。」
ト書き「安岡を拘束する力は緩めずに、顔の筋肉を動かして酒井は愛想笑いを浮かべた。」
村上てつや「おい、ありゃあ…。」
黒沢カオル「外野に口出しはして貰いたくなかったからね。…それに、最後の最後で逃げられても困るから。」
村上てつや「なんだと…?」
ト書き「村上の疑問口調に、黒沢は無表情で切り返す。」
黒沢カオル「てつは逃げる気がなくても、二人で力をあわせれば…てつの身体を担いででも、ここから脱出出来るだろう?」
ト書き「村上は言葉の意図が判らず、一瞬考え込むような表情をした。」
黒沢カオル「お前は……、俺には勝てないって事だよ。てつ。」
村上てつや「黒沢……俺は!!」
ト書き「黒沢は、少し哀しそうな表情になり…それを、顔に滑らせた手で、消した。」
黒沢カオル「さて。」
ト書き「先に、仕掛けたのは黒沢だった。 器用に足下の石を蹴り飛ばし、村上の額に当てるとそれに気を取られた隙に、距離を詰める。」
効果音「ごっ」
ト書き「黒沢のフックが、村上の腹部に決まった。」
村上てつや「…っぐぅ…っ」
酒井雄二「………何をしてるんだ…ボスは。一気に片を付けてしまえば良いものを/」
北山陽一「肉弾戦…ははぁ、成る程。」
ト書き「状況を赤外線センサーで視認していた酒井は、音のみで判断を下した北山へ顔を向ける。」
北山陽一「やーすっ。聴こえてるかい? 寝てたら承知しないよ…寝てるって判れば明日V字腹筋200回な。」
安岡優「寝てないって! 普通こんな状況で寝れる?」
北山陽一「起きてたか…つまらん。」
安岡優「酷ーい!少しは心配してよぉ!」
酒井雄二「つまるつまらんの状況ではないんだがね、キミタチ。」
ト書き「うっそうと呟く酒井に、北山はその場で腕を組んだ状態で話し掛けた。」
北山陽一「あー…サカイ…さん? 出来ればうちの可愛い後輩を離して欲しいんですが。」
酒井雄二「可愛い?……こいつを可愛いと言うのか!?」
北山陽一「ええ。外観じゃなくても、中身とかそれを基に起こす動作とかね。可愛いってのは、外観だけを…上辺だけ見て言う言葉じゃないし。」
安岡優「…日本語ってむつかしーね…。」
酒井雄二「滅茶苦茶、同意見。」
北山陽一「さて…。」
ト書き「組んでいた腕を解き、北山はぼそぼそと呟く。」
北山陽一「ヤスを離してください。」
酒井雄二「それは出来ねーっつってんだろ。」
北山陽一「荒げても、ねえ?」
ト書き「北山の手許から不意に、何かが高速で打ち出された。それを避ける筈もなく、酒井に命中する。」
酒井雄二「うっ……。」
ト書き「路上に落ちた物は、衣類に使用される四つ穴ボタンだった。」
北山陽一「指弾って、知ってます? 中国とかで達人の域になれば、それこそレンガも打ち抜けるそうです。」
ト書き「酒井の手がゆるんだ隙に、安岡は、肩を使って身体を跳ね上げた。」
北山陽一「はい。状況逆転。……チェックメイト、とでも言いますか。」
ト書き「安岡が体勢を直す前に、北山は酒井との距離を詰めていた。」
安岡優「センセ…。」
ト書き「腰のホルダーから銃を抜き、ゆっくりと酒井へ向ける。」
北山陽一「一つ尋ねますが…貴方のボスは、“変なシュミ”に該当する性癖を所持していませんよね」
酒井雄二「は?……んな状況に遭遇した事も、体験した事もないが?」
安岡優「『体験』って言えるトコが凄いよねぇ…」
ト書き「安岡は、今だに少々痛む腕をさすって、二人のいるだろう方向を見た。銃声は、聴こえない。」
村上てつや「っのヤロ!」
黒沢カオル「だぁっ!」
ト書き「殴っている音と、殴られた方の声。そして…明らかに取っ組み合っている、音が聴こえてくる。」
北山陽一「やっぱり。 ……殆ど『子供の喧嘩』でしょ?」
安岡優「どうしよう、止めるべき?」
北山陽一「やらせておきましょ。…貴方だって、俺達の足留めを命令されたに過ぎないんでしょうし。」
ト書き「ねぇ?と同意を求めると、図星を突かれたのか酒井は視線を反らす。」
酒井雄二「ボスは…もっと幸せになっても良い人だ。いや、なるべきなんだ。あの男と対峙することでそれが少しでも現実に近づくのなら、俺は…。」
北山陽一「貴方はボスのこととても大事に想ってるんですね…」
酒井雄二「・・・・・べっつに〜」
ト書き「それで北山は悲しい笑顔を見せた」
酒井雄二「なんだよ・・・おれはさ・・・ただ」
北山陽一「幸せを願える人なんだね…あんたって俺は…自分のことで精一杯ってゆうか…考えてないから」
酒井雄二「一緒にしないでくれ…。」
北山陽一「え?」
ト書き「予想外な酒井の顔に北山はビックリした」
黒沢カオル「なんだよ、毎日鍛えてるくせにその程度なのか?高校時代と変わってないな!オリャッ!」
ト書き「黒沢の拳が村上の腹部を何回も強打する。」
村上てつや「ぅうぁあっ…うるせェ…っての・・・ぅっ…」
黒沢カオル「なにが『正義』だよ、人や自分を守る事が『正義』ならなぁ、俺だって『正義』って看板背負うってんだよ!」
村上てつや「はっ!? 看板の重さも判らねぇくせに!」
ト書き「村上は脚を引っ掛けて、黒沢を転ばせる。」
村上てつや「……背負う事は誰にだって……出来ンだよっ!」
黒沢カオル「っ?」
ト書き「身体を転がし、村上の攻撃を避けると黒沢は素早く立ち上がった。」
黒沢カオル「俺が…重さを分かってない…だって?」
村上てつや「…理解してねぇだろ…。誰だって、『行動の自由』を叫ぶけどなぁ、それに伴う『責任』ってやつを果たそうともしねぇ!」
ト書き「疲労が色濃い動きをかわし、黒沢は一旦村上から離れた。」
黒沢カオル「俺に説教するな!」
村上てつや「お前が先に説教してんだろ!」
黒沢カオル「てつは誰のために『正義』をかざして歩いてんだよ!」
村上てつや「俺自身っ。俺が、…俺が…後悔しねぇよーにだぁっ!」
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