-ゴスドラマ過去ログ:21501-21600-
北山陽一「ココで療養中と言う事は所長には勿論、他の人にも秘密ですよ…貴方のリーダー生命にも関わりますしね。」
村上てつや「リーダー生命なんてどうでもいい…そんなもんは欲しけりゃ誰にでもくれてやるよ。」
北山陽一「…(ボソボソ)…迷ってるんでしょう、本当は…。」
村上てつや「あんっ?!」
ト書き「小声で言う北山の目は村上を見透かしているようだった。」
北山陽一「まぁ、村上さんは監禁って訳にも行きませんから報告書等を書きに事務所に戻ったりもしてもらいます。」
村上てつや「…黒沢と酒井を監禁して何するつもりなんだよ…。」
北山陽一「村上さんの気に触らない程度に…。」
安岡優「てっちゃんだって黒沢さんと冷静に話ししたいんでしょ?本当は。」
村上てつや「…勝手にしろ…疲れたから隣の部屋で寝てる。」
ト書き「上着のボタンを占めながら隣の部屋に荒々しく向かう村上。」
北山陽一「怒らすなよ、ヤス…。」
安岡優「だってぇ〜…どうしててっちゃんは素直になれないんだろうね…。」
黒沢カオル「てつは昔から変わってないよな…大変だろ?村上を扱うの…。」
ゴスペラーズ「(北山・安岡)>エッ!?」
ト書き「さっきまで険しい顔だった黒沢が優しい顔になり、普通に話している事に驚く北山・安岡。」
酒井雄二「ボス動かないでください。薬が塗りづらいです。」
黒沢カオル「あっ、悪いな……」
北山陽一「まぁ……安岡は別として、わたしは彼と既に2、3年の付き合いですから」
ト書き「もっとも、あなたには負けますが、と呟いて北山は手近にあった椅子に座った。」
黒沢カオル「いや、オレだってあいつと一緒だったのはそのくらいだった。10年のブランクがある分、君たちと変わりはないさ」
安岡優「ねぇ、昔のてっちゃんってどんな感じだった??」
ト書き「薬が染みたのか、やや顔を歪めて黒沢は考える。」
黒沢カオル「傍からみたら、でっかいガキ大将みたいな感じだった。けど…」
安岡優「けど?」
黒沢カオル「お前、胃痛持ちだろ!胃に穴開いてんだろ!……つーぐらい悩む面も有るし、気配り過ぎる面も有るな…今とあんまり変わらないかも知れないけど。」
北山陽一「変わってないですね…本当に。」
黒沢カオル「そんなだからてつに付いて行ってるんだろ?俺もそうだったし…。」
北山陽一「そうですね、頼りになるにはなるんですが、ほっておけない部分があるというか…。」
安岡優「てっちゃんと親友だったの?」
黒沢カオル「俺あんまり積極的な性格じゃなかったから友達とか少なくて…。」
北山陽一「それで村上さんが面白がって黒沢さんに声かけたんでしょう?」
黒沢カオル「そういう事…。それからてつは俺の傍にずっと居て…イヤ、俺が傍で付いて歩いてたって感じだな…自分とは全く違う村上に憧れてたんだと思う。」
酒井雄二「あんな人に憧れていたんですか…ボスは。」
ト書き「薬のふたを閉めながら酒井は不思議に思った。」
村上てつや「なに連れて来てんだよ、北山のヤツ…知らねぇからな…ったく。」
ト書き「ベッドに転がりながらブツブツと文句を言う村上。」
村上てつや「どうすんだよ…どうすりゃ良いんだよ、俺…。」
ト書き「とは言いつつもやっぱり黒沢の事が気になって仕方ない村上。」
北山陽一「村上さん…?もう寝てますか?」
村上てつや「起きてるよ。」
ト書き「ベッドの上で胡座をかき、入室者を迎える。」
北山陽一「湿布…持ってきましたけど。何ですかその顔は。」
村上てつや「ぁん?」
ト書き「本人の自覚無しに、不機嫌の表情をしていた為、一瞬北山は躊躇した。」
村上てつや「噛みつかねぇから…こっち来いよ。」
北山陽一「ホントですかね。」
ト書き「舌打ちして、再びベッドに寝転んだ村上に、椅子片手で北山は歩み寄った。」
北山陽一「すいません、どっちかの手で服持っててもらえますか。」
ト書き「椅子に腰掛けると、ベッドの上に治療用の道具を置いて北山は村上の服の裾を捲り上げた。」
北山陽一「……にしても、見れば見る程。素晴らしいですね。」
村上てつや「なにが。」
北山陽一「全部、急所外れてます。…こことか、打たれたら意識失う部分なのに。嘔吐して起き上がれなくなるぐらいの部所も、全部外れてます。」
ト書き「露になった腹部へ、湿布を張り付けテープで固定する。」
北山陽一「知らないのか、故意か。判りませんけどね。」
ト書き「村上は、テープを鋏で切っている北山を何か言いたそうに見上げた。」
北山陽一「何です? 今日の夕飯メニューとか聞かないで下さいよ。」
村上てつや「ちげーよ。……何で…何で、黒沢をここに連れてきたんだ。」
ト書き「鋏を持ったまま、視線を向けずに保護用シートを張り付ける。」
北山陽一「…そーですねー…個人的な好奇心ってのも在ったんです、が。」
村上てつや「『が』って…引っ掛かる言い方だな。」
北山陽一「引っ掛かるも何も。 あそこで向こうのアジトに戻られたら、村上さん又してもどん底に沈んで、飯喰わなくなった挙げ句に空腹だか何だかで暴れ出しそうなくらい苛々するでしょう?」
村上てつや「俺は猛獣か。」
北山陽一「猛獣の方が、余計な事を考えさせられずに、済みます。」
村上てつや「…お前には透視能力でもあるのか?いつも俺の思ってる事当てるけどよぉ…。」
北山陽一「そんな能力あったら今ごろテレビ局から引っ張りだこです…。ただ村上さんは分かり易いだけですよ。」
村上てつや「正直殴る時とか躊躇った…黒沢は本気だったみたいだけど、俺には黒沢を本気で倒すまで殴る事は出来なかった…。」
北山陽一「そうですね、すぐわかりましたよ。実際黒沢さんの方は、村上さんほどの傷や痣はありませんでしたから…。」
村上てつや「黒沢があんなにな強いとは思わなかったしな…。(苦笑)」
ト書き「少し淋しげな村上の微笑みに、北山は静かに治療用道具を持ち立ち上がった。」
北山陽一「…今なら、まだ『天災』だけで。済みますよ。」
ト書き「呟く北山に、村上はこわばった笑顔を向ける。」
北山陽一「犯罪は未然に防いだ方が、事後処理は簡単ですからね。」
村上てつや「おまえ…。」
北山陽一「まだ…もうちょっと時間は在りますから、後悔しないように行動して下さい。完治したら、直ぐに出て行くでしょうし、我々はそれをとめる権利を持っていません。犯罪を起こされたら、追う追われるの立場に逆戻りです。」
村上てつや「後悔しないようにか……」
ト書き「静かに閉まる扉を見たまま村上はため息をついた。」
安岡優「てっちゃん、まだ怒ってた?」
北山陽一「不機嫌そうな顔はしてましたけど…大丈夫だよ、多分。」
安岡優「さて、夜も遅いしそろそろ寝ようかなぁ〜。」
ト書き「時計はすでに深夜1時を回っていた。」
北山陽一「俺は色々調べモノがあるから。ヤス、酒井さんと黒沢さんを奥の部屋に案内してあげて、ハイこれ鍵。」
安岡優「りょーかい!じゃ、ついて来て〜!」
ト書き「鍵を受け取ると酒井・黒沢を連れて奥の部屋に向かう安岡。」
酒井雄二「なんか……。」
黒沢カオル「ん?」
酒井雄二「何か…不思議な感覚です。……酷く、もやもやした。…苦しいような…対処方法に困る、感じが…します。」
黒沢カオル「そっか。…自己成長型プログラムを組み込んでるから、俺にもそのもやもやが何か、判らない。」
安岡優「何してるの?」
ト書き「数メートル先を歩いていた安岡が、振り返り二人を見た。」
黒沢カオル「いや、何でも無い。」
ト書き「部屋の鍵を解錠している安岡を後目に、黒沢は酒井に聞き取れるだけの声量で言った。」
黒沢カオル「俺が、与えたんじゃない…酒井が自分で手に入れたモンさ。」
酒井雄二「‥‥‥。」
ト書き「自分の胸元に手を当て、『考え込む』表情をする酒井と、黒沢は部屋へ入った。」
安岡優「トイレとかは廊下の奥。近くにコンビニも在るし…。お風呂はすんごくちっちゃいから、広いのに入りたかったら銭湯にでも行った方が良いね。」
黒沢カオル「ありがと。」
安岡優「銭湯の場所は、明日……ってもう今日になっちゃうのかな。その時に教えてあげるよ。」
酒井雄二「銭湯…って。」
黒沢カオル「なに?とか訊くなよ。」
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