-ゴスドラマ過去ログ:21801-21900- |
安岡優「なになに??」 酒井雄二「無理だって分かってるんですけど……わたし、ボスと同じ人間になれたらって、そう思ってます。同じ人間であれば、ボスと同じように笑ったり泣いたり怒ったり、なんでも出来るじゃないですか」 北山陽一「それは・・・・・・」 酒井雄二「今だって、充分に人間に近いと思います。ボスが苦労に苦労を重ねて作ったプログラムですから。でも、どんなに高性能でも作り物は作り物なんです。」 安岡優「酒井さん……」 酒井雄二「さっきボスが言った通りです。わたしが信じると言ってもそれはプログラム設定上だけで、決してわたしの本心ではないんですよね。わたしだって時々分からなくなるんです。信じてるって言ってもそれが本当なのかどうか。ただボスが作ったプログラムで計算された言葉だとしたら、それはそれで悲しいです」 黒沢カオル「酒井・・・・」 酒井雄二「もし…有り得ない事で、人間になれたら……この能力は失われてしまうでしょうが。…それでも、それでも。」 黒沢カオル「人間になったら、お前は俺のそばにいてくれないんだろうな…。」 安岡優「黒沢さん!」 黒沢カオル「きっと人間になったら俺の嫌な所が全部見えてきて、結局離れていくんだよ…。」 北山陽一「嫌な所をひっくるめて今の彼方が好きなんではないんですか?」 黒沢カオル「人間的な判断能力は組み込んであるけど、やっぱり人間とは違うんだよ…。」 安岡優「それでも親なの!?黒沢さんの事こんなに考えてくれてるんだよ!?それなのに、酒井さんがかわいそうだよ…好きでロボットに生まれてきたんじゃないんだよ!」 村上てつや「ヤス…!黒沢だって色々と…。」 安岡優「てっちゃんもてっちゃんだよ!!なんで黒沢さんの味方するの?昔仲良かったから?親友だから?救ってあげたいから?そんなのおかしいよ!!」 酒井雄二「安岡さん、もう良いです、もう充分ですから…。」 安岡優「良くないよ!!黒沢さんもてっちゃんも逃げてるじゃん!自分の殻に閉じこもって、外の明かりなんて全く見ようとしてない!」 北山陽一「ヤス、言い過ぎだぞ!」 ト書き「怒りをあらわにしている安岡を止めようとする北山。」 安岡優「何を守りたいんだよ!人?地位?名誉?自分?そんなの全部勝ってだよ!」 ト書き「”勝手”ですよ…安岡さん…。」 安岡優「うるさいなぁ! ともかく!自分の心にもう1回聞いてみなよ!本当に自分はこの道で良いのか、自分はこれで後悔しないのかって…!!」 村上てつや「待てって、ヤス!!」 効果音「バタンッッ!!」 ト書き「村上の静止も聞かぬまま、安岡は部屋を出て行った。」 北山陽一「相変わらず感情を抑えきれない人ですな…まぁ、村上さんと同じですけど。」 村上てつや「俺はあんなにも小動物じゃない…。」 ト書き「髪の毛を引っ掻き回して、村上はうっそりと言った。」 村上てつや「は〜あ…黒沢に言った事を繰り返すべき人員が、ここにもいるとはな〜…」 黒沢カオル「『自由』に伴う、『責任』ってやつ?」 村上てつや「ああ。」 ト書き「下唇をつまみ、頷く。」 村上てつや「自分の発言には気ぃ付けねぇとなぁ…。 逆鱗逆撫でて、そのまんま逃走するとは…良い根性してんじゃねーかよ。」 ト書き「“正義の味方”であるにも関わらず、何故か村上の顔は…悪役っぽく歪んでいた。」 北山陽一「…と、ところでお二人さん。ホット・ポーなる飲み物が在るんですが。…如何です?」 黒沢カオル「ああ、戴くよ。……酒井は?どうする?」 酒井雄二「お邪魔して、宜しいのならば。」 北山陽一「んじゃ…行きましょっか。」 ト書き「各々無言で、部屋を出る。村上だけは当然、といった雰囲気で離れていった。」 北山陽一「寒いでしょ。今暖房入りましたんで、直に暖かくなります。」 ト書き「椅子を引き出して座る事を促すと、北山は人数分のカップとまだ熱い電気ポットを持って来た。」 北山陽一「来客用で…安物なんですが、勘弁して下さい。」 黒沢カオル「構わないさ。 俺の方こそ…声をかけてもらって、あの時は心底吃驚したけど」 ト書き「カップに粉末を投入し、お湯を注ぎ入れると丁寧にかき混ぜて二人へカップを渡す。」 北山陽一「いえいえ。一回、悪の組織ってのはどうしてあんなコスチュームなのかを問いたくてですね。…見た所、黒沢さんと酒井さんは普通ですが。」 酒井雄二「…ホントに、あんた正義の味方なんですかい…?」 北山陽一「『正義』ってのは、自分と対する敵が存在するからこそ、証明出来る自己満足の一遍でしょう。」 酒井雄二「はい?」 北山陽一「俺の場合は、我が身に降り掛かった火の粉。です。それを払う事が、良い事なのかどうか、後から結果が付いて来てるだけです。」 ト書き「其処まで言い、呆気に取られている二人に北山は気が付いた。」 北山陽一「う〜〜ん…すいません。口が過ぎました」 酒井雄二「いえ…何かちょっと…」 黒沢カオル「北山…さぁ。一歩間違ったら、こっち来てたんじゃねぇの?」 北山陽一「そうですかねー…。ま、原因が原因ですから。」 ト書き「笑顔で切り返す、北山だったが。二人はその原因を『妹の誘拐』だとは知る由も無い。」 酒井雄二「ボス・・・」 黒沢カオル「原因って何?」 北山陽一「それは……ね、」 黒沢カオル「ゴメン。話したくなかったら、いいんだ。無理言って悪かったな…。」 北山陽一「他人に話す程の事じゃ…ないですから」 村上てつや「気にすんなよ」 北山陽一「え? …リーダー??」 ト書き「安岡らしき人影が、ドアの外に見えた。」 村上てつや「捕獲すんのに手間取った…あーあ。怪我人に労働させやがってよぉ。」 ト書き「勝手に出て行ったのは、アンタだ。とは誰も言わない。」 黒沢カオル「お前、無茶するところは全然変わらないな…。」 村上てつや「何事も全力が一番だってな!」 北山陽一「はいはい。安岡、そんな所居たら寒いだろ?ココアがいい?牛乳たっぷり入れてあげるよ。」 安岡優「いらない…!言っとくけど、俺は認めないからね!てっちゃんの考えてる事も、黒沢さんが考えてる事も!」 村上てつや「だからって外に逃走する事ないだろ?」 安岡優「おやすみ!!!」 ト書き「怒りを露にし部屋に入る安岡。」 北山陽一「当分機嫌が直りそうにないですね…無理して連れてこなくても…。」 村上てつや「北山も冷てぇな、相変わらず…。」 ト書き「言いながら、安岡の部屋のドアにももたれる村上」 村上てつや「安岡、さっきも言っただろ?別に俺は黒沢を見逃そうとはしてねぇんだよ…ただ黒沢には正しい道ってモノを分かってほしいからこうやってるんだって…。」 北山陽一「村上さん…ほって置きましょう何言っても聞きませんよ。」 安岡優「【地球特別指名手配犯NO.5/黒沢薫】…前科10犯。そんな人見逃すわけに行かないでしょ!一緒にてっちゃんも宇宙警察地球支部に入れようか?」 酒井雄二「ボス…。」 ト書き「黒沢は静かに立ち上がりドアへ向かった。」 村上てつや「…黒沢…。」 黒沢カオル「どいて、てつ…。」 ト書き「村上を押しのけドアの前に立つ黒沢。」 黒沢カオル「君は本当に正義の味方なんだね…てつより数倍も正義感が強い…本当は俺がこんな所に居るのは間違ってるんだよ。」 安岡優「……。」 黒沢カオル「俺は酒井と共に”地球征服”をする、誰に何を言われても…君に捕まらないように、これから俺たちは知恵を働かす…君が俺たちを捕まえるのが早いか、俺が”地球征服”するのが早いか…楽しみだ。」 村上てつや「黒沢、お前…。」 黒沢カオル「戻るよ、アジト…。今度は本当に勝負だからな、村上てつや…。」 ト書き「酒井のところに戻り、北山に軽く挨拶をする黒沢を見ながら立ち尽くす村上。」 北山陽一「行っちゃいましたね……」 村上てつや「あぁ・・・・・・」 安岡優「…僕は間違ってないからね!」 ト書き「壁越しに、膨れっ面の安岡のイメージが浮かぶ二人であった。」 北山陽一「これからが本当の戦いかも知れませんね、村上さん。」 村上てつや「あぁ、これからだな。」 ト書き「にしても。と村上は北山に向き直る。」 村上てつや「あいつは俺達の知らねぇところで、どーいう犯罪犯してやがんだ。」 北山陽一「確かに、表立ってくることは殆どありませんね。」 村上てつや「…俺達の方に、届いてないとなれば…。」 |
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