-ゴスドラマ過去ログ:23301-23400-
酒井雄二「あっ、父さん薫が帰ってきたから代わるよ。」
村上てつや「早ぇな…おかえりさん薫、優。」
黒沢カオル「もしもし、父さん!?俺、薫だよ…うん、元気!イタリアはどう?そっかぁ〜、良いなぁ…。」
ト書き「目を輝かせながら電話で父親と話す薫。そっと立ち上がり優の傍によるてつや。」
村上てつや「相変わらず人の話を聞かない親だよなぁ…。」
安岡優「てつやと似てるじゃない…!何だって言うの?」
村上てつや「似てねぇよ…。別に大した用は無いみたいだけどよ…人が言いたい事言わせろってんだよな。」
黒沢カオル「優兄、母さんから…!」
ト書き「差し出された受話器に耳を当てる安岡。」
安岡優「もしもし、お袋?てつやの話もちゃんと聞いてやってよ…って聞いてるの?」
ト書き「満面の笑みを浮かべ北山の居るキッチンへ向かう黒沢。それを目で追う安岡と村上。」
安岡優「1年に1度か2度は帰ってきてよ…聞いてるの?薫がてつやみたいにひねくれたらどうすんのさ?!」
村上てつや「お前は一言多いつーの!」
佐々木真理「(電話)イタリアの仕事が一段落したら1回帰るわよ♪でも、てつやも優も居るから心配ないでしょ!2人とも頼りにしてるんだからぁ〜ねっ!」
安岡優「あのねぇ〜、高校生3人の弟を面倒見るのって大変なんだよ?俺等だって学校あるんだし…。」
ト書き「安岡から受話器を奪う村上。」
村上てつや「もう3年も帰ってきてねぇんだぞ?顔出すぐらいしろよ…俺等はともかく下の3人は思春期を親と過ごしてないんだからな!?」
佐々木真理「(電話)もう、すっかり大人になっててつやも優も…母さん何も心配する事無いわ。」
村上てつや「心配しろよ!!ったく…ともかくこのまま俺等の事ほったらかしにするのはやめてくれよな……お袋?オイ、聞いてんのか?…ったく先に切るなよ。」
安岡優「相変わらずみたいだね。あの二人は…。」
村上てつや「ったく!…お前、せっかく薫と出掛けたんだから飯くらい食ってくれば良かったじゃん?」
安岡優「ああ、俺はそう言ったんだけど薫がさ、てつや達と一緒に家で食べるって言うから。」
村上てつや「あの両親からどうやったらあんなに可愛い弟が生まれんだろうな?」
安岡優「薫は俺達の育て方が良かったからだと思えば?その方がずっと悩まなくて済む…だろ?」
村上てつや「まぁ、な」
酒井雄二「声聞いたのは3年ぶりだよなぁ…てつ兄と優兄は連絡取ってたの?」
村上てつや「全く…薫だけはこまめに電話してたみたいだけどな。そうだろ〜?薫〜!?」
黒沢カオル「うん!手紙もよく送ってたし、電話も2週間に1回はしてたよ。みんな手紙読むだけだったの?」
北山陽一「手紙すら読まない時もあったな……」
酒井雄二「それひどすぎ……」
安岡優「でもまぁ、向こうも元気そうでよかったよ。久しぶりに帰って来るみたいなこと言ってたし」
村上てつや「ちょっとぐらい元気がないくらいでちょうどいいんだけどよ」
安岡優「そんなこと言わないの。さてと、お昼にするか。今日の当番は……」
北山陽一「あぁ、俺。すぐ用意するから、みんな着替えてきちゃいなよ」
酒井雄二「手伝うか? 一人じゃ大変だろ?」
北山陽一「大丈夫だよ。雄二兄は今日の夜当番だろ? メニュー考えといた方がいいよ」
酒井雄二「そう言えばそうだった……あとで冷蔵庫のぞいとくか……」
ト書き「昼の準備をしている陽一を尻目に、雄二たちはそれぞれの部屋に戻った」
村上てつや「なぁ、陽一……」
北山陽一「あ、いたんですか? なんです? てつ兄」
村上てつや「そんな言い方すんなよな……まぁ、それは置いといて。お前昨日優と一緒に出かけただろ? あいつ、なんか言ってなかったか?」
北山陽一「いえ、別に。ただバイトの数が多すぎるって話はチラッとしましたよ。今、ゆた兄のバイト昼夜合わせて4つ……まぁ、昨日のところは辞めるつもりのようだったから今のところは3つですか……」
村上てつや「確かに多いわな。そのうち2つは、ごく最近増やしたふしがある」
北山陽一「これは俺の憶測ですけど……ゆた兄はなにか思うところがあるんじゃないかと……」
村上てつや「まさか、またなにかやらかそうとしてるとか?!」
ト書き「冗談じゃないとばかりに吐き捨てると、てつやはそのままテーブルに突っ伏した」
北山陽一「確証はないですよ。俺もなにげなしに聞いてみましたけど、見事にはぐらかされましたから」
村上てつや「俺も夕べ遠まわしには聞いたけど、はっきり言わなかったな……」
北山陽一「ゆた兄はなんでも自分の中に押し込めてしまうキライがあるんですよね。責任みたいのを一人で背負っちゃうというか、それでいて、どこか負い目を感じてるような」
村上てつや「とにかく、今の状況だけは守りたいよなぁ……」
ト書き「てつやの言葉に、陽一も深く頷いた」
安岡優「はぁ、どうしようっかなぁ……」
ト書き「部屋に戻った優は、荷物を机の上に置くと、溜息をつき棚に置かれていた一冊の雑誌を手に取った」
安岡優「あっちのバイト辞めるとして、次の見つけないと……」
ト書き「椅子に腰かけ、ページをめくりながら、どことなく心ここに在らずと言う感じの優」
安岡優「(とにかく、今出来ることをしておかないと……時間があるうちに……)」
効果音「トントン・・・」
安岡優「あっ、は〜い。どうぞー?」
黒沢カオル「……。」
安岡優「薫?どうした?」
黒沢カオル「…ゆた兄、家出て行くつもりなんでしょ?」
安岡優「え?!な、なんで?そ、そんなこと…。」
ナレーション「あまりに突然図星を刺され、動揺する安岡。」
黒沢カオル「…やっぱり。おかしいと思ったんだ。最近急にバイト増やしたりして…。僕達に少しでも貯金残していこうと思ったんでしょ?」
安岡優「薫、お前…。他の奴らも気付いてるのか?」
黒沢カオル「ううん。多分、僕だけ。何かおかしいと思ってるとは思うけど。」
安岡優「そっか。でも、まさか薫から追求されるとは思って無かったよ…。」
黒沢カオル「なに、それ?僕だってね、分かるよ…。大好きなゆた兄の事なんだもん!」
安岡優「薫……。」
黒沢カオル「ゆた兄、何かやりたい事があるんだよね?その為に家を出るんだよね?それだったら、僕…寂しいけど我慢する。」
安岡優「薫、俺は…。」
黒沢カオル「……僕達の事、嫌いになったからじゃないんだよね?」
ナレーション「黒沢の口から出た意外なセリフに安岡は大きく首を横に振って答えた。」
安岡優「そんな事あるわけないじゃん!何言ってるんだよ!」
黒沢カオル「それならいいけど…」
ナレーション「ほっとした表情と同時に、黒沢は少し寂しそうな顔をした。」
安岡優「薫・・・俺・・・」
黒沢カオル「いいよ、無理しないで。…そうだよね、ゆた兄だって大学生だもんね…いつまでも弟の面倒は見てられないよね。」
安岡優「違うよ、そうじゃなくて」
ト書き「寂しい微笑を浮かべて部屋を後にしようとする黒沢を止めようとするが、安岡にこれ以上の言葉が出なかった。」
安岡優「…薫…違うんだよ…。」
ト書き「雑誌を投げつけ、ベットに倒れこむ安岡。」
村上てつや「薫?どうした、そんな顔して…。」
黒沢カオル「てつ兄…。」
ト書き「村上が座るソファーの横に座る黒沢。」
村上てつや「どうしたんだよ、元気ねぇぞ?」
黒沢カオル「…てつ兄は今やりたい事とかあるの?」
村上てつや「やりたい事?そうだな……特にねぇけど、あえて言うなら楽な生活がしてぇな。」
黒沢カオル「…楽な生活…?」
村上てつや「親父もお袋も家に居て、5人がそれぞれやりたい事に専念できるような生活だな…俺だって大学行ってんだから勉強位はまともにしたいし。」
黒沢カオル「ゆた兄も?!…ゆた兄もそう思ってるの…?」
村上てつや「両親が居るに越した事は無いと思ってるだろうけどな…。どうしたんだよ?急にそんな事聞いて…何かあったのか?」
黒沢カオル「…僕は父さん母さんが居なくても寂しくは無いよ…けどてつ兄やゆた兄、陽一兄や雄二兄と離れ離れになるのは嫌だ…。」
村上てつや「そんな事ねぇよ…まぁ誰かが結婚すれば別だけどな、お前は心配しなくていいよ。」
黒沢カオル「…うん。」
村上てつや「ほらっ、飯食う前に宿題やってこい!…夜はどうせ雄二とゲームやるんだろ?早く終わらせておけよ。」
ト書き「肩を軽く叩くと村上は立ち上がりリビングを後にした。」
黒沢カオル「…宿題、しなくちゃ…。」
ト書き「そう言って自分の部屋に向かう黒沢」
村上てつや「優のヤツ…」
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