-ゴスドラマ過去ログ:23401-23500- |
ナレーション「黒沢の寂しげな後姿を目で追いながら、村上は呟いた。」 ト書き「深く肺の中の息を吐き出してみても、胸中に生まれたモノは出ていってくれなかった。」 黒沢カオル「…子供っぽいって、笑われるかな。 離れたくないけど…その事に慣れるまで、どうしたら良いんだろ…。」 酒井雄二「何で落ち込んでるかはわからないけど、ゆた兄やてつ兄が心配するから悲しい顔はしない!」 黒沢カオル「雄二兄…。そうだよね、元気出さなくちゃね…!いつまでも心配かける弟じゃダメだもんね。」 ト書き「精一杯笑顔を作り部屋に行ってしまう黒沢。」 酒井雄二「嫌な予感がする…無事に事が過ぎるのを祈るのみ。」 効果音「ガチャッ」 村上てつや「入るぞ〜!」 安岡優「あのさぁ、普通扉開ける前に断るでしょ!?開けてから断っても意味無いじゃん!」 ト書き「起き上がった安岡は村上だとわかるとまたベットに寝転がる。」 村上てつや「お前、薫になんか言ったか?」 安岡優「…別に…てつやには関係ないだろ。」 村上てつや「!!関係無いなんて言うなよ!」 ナレーション「安岡の言葉に村上は本気の怒りを見せて怒鳴った。」 安岡優「……ごめん。でも、本当にたいした事じゃないんだ。薫、どんな様子だった?」 村上てつや「…すっげぇ寂しそうな顔してた。俺は、いや俺だけじゃねぇ雄二だって陽一だって、薫のあんな顔見たくねぇんだよ。お前だってそうじゃないのかよ?」 安岡優「うん…。そうだよな、親父達と離れて暮らすって決めたときに約束したよな。てつ、覚えてる?」 村上てつや「忘れるわけねぇだろ…。」 安岡優「…まだ迷ってる段階なんだ…だから…。」 村上てつや「何だよ、その迷ってる事って…。」 安岡優「……。」 村上てつや「双子の片割れとして聞く権利はある…今まで一緒に色んな事乗り越えただろ?話せよ…。」 安岡優「家を出ようかなぁって…もちろんバイトのお金の少しはこっちに入れるつもり、」 村上てつや「なんでだよ…もう5人でく暮らすのが面倒なのか?」 安岡優「違うよ、そうじゃなくて…俺もそろそろ弟離れしなくちゃなってさ、そう思ったの。」 村上てつや「後悔する道を自ら選ぶなよ…この前もそうだったんだからな。…長男のプライドか何かしらねぇけどよ、両親代わりだって事は忘れるなよ。」 安岡優「てつ…?」 村上てつや「飯、もう出来るとさ…。」 ト書き「静かに部屋を出る村上。」 北山陽一「優兄、呼んでくれた?早くしないと冷めちゃうよ。」 村上てつや「あぁ、先に食ってて良いとさ…よし、食うか。」 酒井雄二「お先頂いてます。」 村上てつや「おう!じゃ、俺もいただきます。」 北山陽一「どうした?薫、マズイ?結構上手く出来たと思うんだけど…隣の家の加藤さんの奥さんが教えてくれたんだけど。」 黒沢カオル「うん?ううん、凄い美味しいよ…!あっ、1時になったら友達の家に行ってくる…帰るのは夕方だと思う。」 北山陽一「宿題ちゃんとやったのか?」 黒沢カオル「う、友達とやるから…。」 酒井雄二「友達とやると言うのの大半はやってないが…。」 村上てつや「薫ならちゃんとやるよな?俺は信じてるぞ、なっ。」 黒沢カオル「う、うん!ちゃんとやるよ…。」 ト書き「痛い所を突かれた黒沢はゴハンをかき込むと味噌汁を飲み干した。」 安岡優「今日のお昼のメニューは〜♪…なんだ、ご飯か。」 北山陽一「文句があるなら別に食べなくても良いんだけど…?!」 安岡優「いいえ、トンでもないです!いただきまあ〜す!」 酒井雄二「パンでも食いたい気分だったんかい?」 安岡優「小麦粉系…かな。」 村上てつや「なんだよそれ?」 北山陽一「だったら、『すいとん』作りますか? 戦後の食料事情を支えた立派な小麦粉料理を。」 安岡優「パンとか…ナンとか……そういうのが食いたかっただけ。 すいとんは止めとけ…」 北山陽一「あぁ、そうですか。残念だった。」 酒井雄二「…俺は作り方知らんからな…。作れって言われようとも出来ん事は出来ん!」 村上てつや「いや、お前には言ってないから…。」 酒井雄二「俺が今日の夕飯当番!!」 ト書き「卵焼きに手を伸ばしていた村上が、動きをとめる。」 効果音「かちゃん。」 黒沢カオル「ごちそうさま。じゃあ、行ってくるね。」 ナレーション「箸をテーブルの上に置いて、立ちあがりかけた黒沢の腕をやんわりと掴む村上。」 村上てつや「あ〜俺もちょっと出掛けるから、その辺まで一緒に行こうぜ?」 黒沢カオル「うん、いいけど。」 北山陽一「薫、誰の家に遊びに行くの?」 黒沢カオル「むっちゃん家…。」 酒井雄二「むっちゃん…?ああ、竹内君かぁ。あの今時珍しく坊主頭の。」 黒沢カオル「野球部なんだよ、むっちゃんは…。」 北山陽一「1年生でレギュラー入りしてるんだろ?噂で聞いたけど。」 村上てつや「やるじゃん。坊主。」 黒沢カオル「うん。格好いいんだよぉ!野球してるむっちゃんって。」 村上てつや「それじゃまるでしてない時はカッコ悪いみたいじゃねーか?」 黒沢カオル「う?そんなことは無いよ?ちょっと変なトコあるけど…。」 酒井雄二「変、とは?」 村上てつや「雄二みたいだって事か?」 酒井雄二「なんだと?!あんた、失礼だなっ!!」 黒沢カオル「違うよぉ。なんかね、やたらと世話を焼きたがるっていうか…。僕に話し掛けるときも敬語だし。」 安岡優「硬派なんだね、その竹内君って子。」 村上てつや「ごちそうさん…行くか?薫。」 黒沢カオル「う、うん。」 村上てつや「ほんじゃ、行ってくるわ!俺の事は心配するな、教授にレポート出してくるだけだから!」 北山陽一「てつ兄の事は別に心配してないから、逆にご心配なく。」 ナレーション「そんな陽一に言葉は無視して、薫とてつやが家を出ていった。」 村上てつや「優のこと避けるような事するなよ…アイツはお前の事1番考えてんだからな。」 黒沢カオル「避ける事なんて…!むっちゃんと約束があったからたまたま…。」 村上てつや「今日お前の高校の野球部は練習試合だろ?学校新聞に書いてあったぞ…?!」 黒沢カオル「…ぁっ…。」 村上てつや「お前等が貰って来てる手紙は一通り目通してるんだからぁ〜、わかんだよ嘘ついても。」 黒沢カオル「…むっちゃんじゃなくて…タナベぇーの家だった・・・そうだ!」 村上てつや「田辺の家は家族揃って今旅行だろ?田辺兄は俺と同級なんだぞ?」 黒沢カオル「あっ…そうだっけ?…じゃあ!」 村上てつや「もう、イイ!お前も一緒に大学来い…ったく、今度から嘘つくのは厳禁!わかったな?」 黒沢カオル「…ゴメン。」 村上てつや「高校1年なんだからもうチョット上手い嘘つけよ…俺が高1の頃は誰にもバレなかったぞ?!まだまだだな、お前は。」 ナレーション「そう言う問題なのだろうか?村上てつや…。」 村上てつや「な、薫。お前がそこまで優に執着するのって、それは…。」 ト書き「言いかけて、薫の様子をみるてつや。」 村上てつや「優が、あいつが…。」 黒沢カオル「何?・・・」 ナレーション「言葉を選ぶために黙る村上」 黒沢カオル「優兄のこと、心配するのって…変? 身内を心配しちゃイケナイの?」 村上てつや「そういう事じゃねぇよ…。」 黒沢カオル「僕はただ…もう家族離れ離れになるのは嫌なだけ。父さんも母さんも僕たち5人を置いて外国に行ってるでしょ、中学の時凄く寂しかったから…。」 村上てつや「…兄ちゃん達だって本当は寂しかったよ…薫だけじゃねぇ。」 |
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