-ゴスドラマ過去ログ:23901-24000- |
村上てつや「心配するなって、大丈夫だからよ。」 ト書き「心配そうな弟に対し、精一杯の笑顔で答えるてつや。」 北山陽一「無理してるってバレバレな雰囲気ですね……」 酒井雄二「てつ兄はウソつくの上手いけど、時として顔に出るからねぇ……」 北山陽一「どっちにしても……」 酒井雄二「苦労人だねぇ」 ト書き「そう言って二人は溜息をついた」 安岡優「そう言えばさ……」 ト書き「イタリア組3人はレストランにはいると、それぞれにメニューを注文した」 佐々木真理「なぁに? 優」 安岡優「オレさ、こっちに来たの、もうひとつ理由があったんだ。」 小林社長「もうひとつの理由?」 安岡優「うん、どうしても確かめたいことがあった。てつとか雄二、陽一、薫がいない、オレと親父たちだけがいるここで、確かめたかったんだ」 佐々木真理「なによ、改めて。何を確かめたいって?」 安岡優「親父たちが知ってるホントのことと、オレが持ってる想像が一致するのかどうか」 小林社長「それはまた難しいことを……わたしたちがお前たちに隠し事をしているとでも思ってるのか?」 安岡優「それは思ってないよ。親父もお袋も、オレたちが聞きたいことに関してはちゃんと包み隠さず教えてくれた。でも、一つだけ、間違ったことを言ってる」 ト書き「優はうつむいたまま、言葉を選んで話し始めた」 安岡優「オレたち兄弟のこと。親父は、薫にもてつにもオレたち兄弟はいろんな事情で引き取られて来たって話してたよね。でも、どうしてそんな嘘ついたの?」 佐々木真理「ウソだなんて……そんなことないわよ。それはホントのこと。間違いないわ」 安岡優「言葉だけならなんとでも言えるよ。オレも実際そう思ってた。でも、これ見たら信じられなくなった」 ト書き「そう言って優が出したのは、彼の家の戸籍謄本と数枚の書類」 安岡優「こっちはうちの戸籍謄本。そしてこっちは、近所の平見医院の先生に調べてもらったオレたち兄弟の血液型。戸籍上は、みんな親父とお袋の子供になってる。誰も養子として来てない。だけど……」 ト書き「優はそこでいったん区切ってから、言葉を続けた」 安岡優「こっちを見たら一目瞭然だよね……オレだけが血液型違うんだ。他の4人はバラバラながらも、二人の子供だって言う確証がある。でも、オレのはどう考えても二人の子供ではありえないんだよ」 小林社長「……ずいぶん詳しく調べたんだな……」 佐々木真理「どこでそれに気がついたの?」 安岡優「変だなって思ったのは高3の時かな。学校で献血かなんかで調べたとき、自分が思っていた血液型と違ってて。まぁ、その時は親父たちに確認してそう言う事情があるってことを聞いた訳だけど、ここまで調べようと思ったのは、この戸籍を見てからなんだ」 佐々木真理「ある意味一番正直な書類だわね、戸籍って」 安岡優「それに、もし親父たちが言ってたことがホントなら、オレたちの記憶と食い違うし。雄二や陽一の時は別として、薫が生まれた時はオレもてつも幼稚園生だったんだから。少なくとも、オレはそのとき弟が出来たのを覚えてるよ。ちゃんとお袋の中から生まれたってことも……」 ト書き「なんならその時のこと言ってみる? と確かめるような視線で優は二人を見た」 小林社長「負けたよ。まったく、お前はなんでも調べないと気がすまないようだな」 佐々木真理「誰に似たのかしらねぇ。」 安岡優「だから…似てないんだよ。誰にも…。」 佐々木真理「優...」 小林社長「しかたがない。もう真実を知ってもいい年頃だろう。今の優には真実を受け入れるだけの強さがある」 安岡優「全部教えてくれるんだね・・・」 佐々木真理「えぇ、出来れば知らないままならよかったのにね……」 ト書き「少し悲しげな表情を浮かべながら、母は口を開いた。」 安岡優「…はあ…。」 小林社長「それでもお前達は…。本物より本物の兄弟なんだぞ…。」 安岡優「それは、そうだよ。…長い時間、一緒に兄弟として暮らしたんだから。 いきなり他人だって言われても、急に関係が壊れる訳じゃないでしょ。」 小林社長「それがわかっていれば大丈夫だな…。」 ト書き「大きく息をつく」 小林社長「それじゃぁ、言うぞ。覚悟は良いな?」 安岡優「どうぞ…。」 小林社長「優とてつやが双子、二卵性双生児だと言う事はあっている…だから優はまるっきり1人だけ血がつながってないわけじゃない。」 安岡優「…それってまさか…。」 佐々木真理「つまり…雄二、陽一、薫は本当の私達の子供で、彼方とてつやの2人だけ違うの…。」 安岡優「俺とてつやだけが…。」 小林社長「陽一と雄二はまだ本当の兄弟だと思っている。薫は小学校の頃私に聞いて来た…その時お前等に1年前言った同じ事を話した。」 安岡優「じゃあ、薫は俺たちが全員兄弟じゃない思ってるのか…。」 佐々木真理「長男2人だけが違うなんて…言えなかったのよ、恐くて。だからいっそうの事みんな違うって…。」 安岡優「えーと。単純明解な質問で悪いんだけど、オレとてつの親ってのは?」 佐々木真理「……多分、何事もなければ生きていると思うわ。でも、わたしたちが知っているのはあなたたちを産んだお母さんのことだけ。あの時のこと、今でも覚えているわ……」 小林社長「今から20年ほど前。真里はわたしとの最初の子を宿していた。しかし、ある事故がきっかけでその子は日の目を見ることが出来なかったんだ……」 佐々木真理「あたしはそのショックでしばらくは口も聞けなかったし、すべてを拒否して……死のうと思ったくらいだったの。そのときだったかしら。彼女と会ったのは……」 ト書き「―――――――回想―――――――」 一般人(女)「ダメですよ、死んだりしたら。きっと産まれて来るはずだった赤ちゃんが悲しみます」 佐々木真理「でも、あたしにとってはこの子が……産まれて来るはずだったこの子が生きがいだったの。せっかく、楽しい生活が出来るって……そう思ってたのに……」 一般人(女)「真里さんにはまだチャンスがあるじゃないですか。あんなステキな旦那さまがいるんだもの。まだこれからだって……少なくとも、わたしなんかよりは幸せな暮らしが……」 佐々木真理「・・・・・・・・・・」 一般人(女)「わたし、今親から逃げてるんです。おなかにいる子、どうしても産みたくて。私、まだ高校生で、相手も同じ高校生。どっちの親も反対してて、あのままあそこにいたら、きっとむりやり……」 佐々木真理「それで……でも、その相手の子は? 一緒じゃないの?」 一般人(女)「一緒ならよかったんでしょうけれど……この子があたしの中にいるって分かったの、彼が亡くなってからなんです。あたしを庇って事故に遭ってそのまま……」 佐々木真理「まぁ……」 一般人(女)「だからどうしても産みたかった。彼の形見のような気がして……でも、もう限界かな……」 佐々木真理「限界?」 一般人(女)「あたしがここにいるの、親にばれちゃったんです。ついさっき連絡あって、迎えに来るって。多分、この子もその時に……」 ト書き「―――――――回想終了―――――――」 安岡優「オレたちの母親って……ヤンママ?!」 佐々木真理「別に不良っぽい子だった訳じゃないわ。ホントにまじめな子で……後から聞いたんだけど、その子、今の薫と同い年ぐらいだったの。まぁ、親御さんが反対するのはもっともなことだったんだけどね」 安岡優「でも、オレたちがこうしているってことは、ちゃんと産んでくれたってことだよな」 小林社長「あの子が逃げ続けていたことが効を奏したのか、堕胎可能な時期が過ぎてたんだよ。だから、産むしかないってことになって」 佐々木真理「あたしたちが生まれた子を引き取るってことを条件に産むことを了承してもらったのよ」 一般人(女)「(回想)自分で育てられないのは淋しいけど、真里さんになら安心して任せられます。生きられなかったあの子の分まで大事にしてくださいね……」 佐々木真理「あなたたちの名前は、その子がつけたのよ。例え一緒に暮らすことは出来なくても、自分の子供が入るって子とを感じて欲しかったから、あたしが勧めたのよ」 小林社長「“てつや”の名前はお前たちの本当の父親の名を取って、お前の“優”の名は、母親の名から取ったらしい。」 佐々木真理「てつやのてつは哲学の哲。知識の深い立派に人に、優は優しいって字の通り、人を大切に思えるような優しい子になって欲しいって言う意味が込められているの」 ト書き「二人の話を静かに聞いていた優は、込み上げる涙を止めることが出来なかった。声を押し殺して泣く彼を、真里は優しく微笑んで抱き寄せた」 小林社長「戸籍上養子扱いになっていないのは、お前たちをわたしたちの本当の子供として育てたかったからなんだ。それは向こうの親御さんとも彼女とも話して決めたことなんだよ」 佐々木真理「あの子が臨んだようにいい子に育ってくれたわ。あなたも、てつやも……」 安岡優「オレ……ホントはあの家から出て行こうと思ってたんだ。自分であのこと調べて、自分だけこの家族じゃないんだって知ったとき、目の前真っ暗になって、バカなことした。そのとき一番に心配してくれたあいつらを、また捨てようとして……」 佐々木真理「あなたもてつやも、あたしたちの可愛い子よ。血が繋がってないから本当の家族じゃないなんてことないのよ。繋がってたって家族になってないところもあるのよ。そんなところに比べたら、うちは最高の家族よ」 ト書き「母の腕の中で、優は何度も何度も頷いた」 ナレーション「さてさてイタリア組は落ちついたけれど、日本組には、なにやら不穏な動きが……?」 黒沢カオル「(てつ兄とゆた兄……雄二兄ちゃんと陽一兄ちゃん……)」 ト書き「勉強しようと机に向かっていた薫は、それでもいろんなことが気になって身に入らなかった」 黒沢カオル「てつ兄とゆた兄が本当の兄弟として……雄二兄ちゃんと陽一兄ちゃんは? ホントの兄弟じゃなくてもホントみたいに仲いいし……」 ト書き「目の前に広げられたノートには、いつしか家族の相関図みたいな図式が出来あがっていた」 黒沢カオル「俺がココで…陽一兄がココ…う〜ん…。」 効果音「コンコン」 北山陽一「薫〜、入るよ〜!」 ト書き「慌てて新しいページに数学の問題を書こうとする薫。」 黒沢カオル「いっ、いいよ…。」 ト書き「ドアが開き、陽一が薫に近づく。」 北山陽一「おっ、偉いな…ちゃんと勉強して。何かわからない所ある?」 黒沢カオル「ううん、大丈夫。基礎問題をシッカリ身に付けようと思ってやってるから…。」 北山陽一「そっか、それは良い事だね。それは良いんだけど…ちゃんと食べたものは外に出しといてくれない?」 黒沢カオル「あっ…。」 |
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