-ゴスドラマ過去ログ:25301-25400-
北山陽一「なんて書いてあるんだ?雄二兄。」
ト書き「雄二の手から手紙を取り音読し始める陽一。」
北山陽一「えーっと……てつ兄誕生日おめでとう。父さんたちが居なくなって淋しくなったけどもうこの生活に俺は慣れた。いっその事このままでも俺はいい…俺達が立派な大人になるまで、てつ兄だけでも俺は構わない……」
酒井雄二「…俺の記憶には残されてないが、字は今と同じだし名前も書いてある…。」
村上てつや「残りの陽一の手紙も薫の手紙も同じような事が書かれてる…。」
黒沢カオル「…てつ兄がこれからも一緒なら別に良い、俺が大学に行くまでよろしく…陽一。」
酒井雄二「…大人になるまでてつ兄は一緒に居ようね…もう家族が離れるのは嫌だから、寂しいから…薫。」
ト書き「陽一・雄二・薫の3人はお互いの顔を見合う、優は驚きてつやを凝視する。」
村上てつや「…そう言う訳。今しか出来ない事は後悔しないようにやるのがあたり前だろ?お前等にもいつもそう言ってるはずだ…。」
北山陽一「この手紙が重荷になってるの?てつ兄の中で…これが大学を辞めた理由ならそういう事になるよね?」
黒沢カオル「てつ兄…。」
村上てつや「…なんだよ。」
黒沢カオル「ごめんね?」
村上てつや「どうして謝る?重荷になってるなんて一言も言ってねーぞ。」
酒井雄二「じゃあ、何だって云うんですか。」
村上てつや「これは…俺にとっての原動力みたいなモンだな。」
黒沢カオル「原動力?」
ト書き「ああ。と村上は頷いた。」
村上てつや「おふくろも言ってたよ。「てつやは心の奥底ではいつも弟たちを求めてるね。てつやが大学やサークルやいろんなことに没頭できるのも、もしかしたら、彼らのお陰かもしれないわよ」って。」
黒沢カオル「???それってどういうことなのかな???よくわかんないよう。」
ナレーション「不安そうな表情で呟く黒沢の頭を大きな手でくしゃっと撫でる村上。」
黒沢カオル「てつ兄?」
村上てつや「お前らが…薫が陽一が雄二が…優がいてくれるから、俺が俺らしくいられるんだよ。俺の中の一番はいつだって可愛い弟達の事なんだ。だから、今回の退学の事は俺の我侭だと思って認めてくれよ…頼む。」
黒沢カオル「てつ兄・・・」
酒井雄二「てつ兄がそうしたいなら…それでもいいよ」
北山陽一「俺も・・・てつ兄がそう決めてもう変える気が無いなら何も言わない・・・」
ト書き「3人は少しだけ困った顔をしてつぶやいた」
安岡優「…てつや。」
村上てつや「優、俺は今までお前と同じに頑張ってきた。俺はお前ほど頭も良くないし、いつも色んな事考えてるわけでない…けど、俺はいつも全力投球で物事に取り組んできた、それはお前も俺も一緒だ。」
安岡優「でも俺は。…俺は自分の為だけで、てつやは俺らみんなの為に考えて行動してきただろ。またそうなるのは俺は嫌だ…。」
村上てつや「それを俺が望んでてもか?」
ト書き「優は黙り冷めかかったコーヒーを飲み始めた。」
村上てつや「最初は居心地悪いかもしれない…口ではお前等もそう言ってるけど、実際は俺に大学行って欲しいんだろ?お前等の事長く見てればわかるよ…。」
ト書き「雄二と陽一と薫の3人は黙って頷いた。」
村上てつや「嬉しいよ、お前等がそういう風に思ってくれるのは。」
黒沢カオル「よくわからないけど…てつ兄が今まで”したい”と思ってきた事が出来なかったんなら、今回は”したい”って思ってる事が出来るって事だよね?」
村上てつや「お前等の意思には反してるけどな。」
酒井雄二「でも今までは俺たちに合わせてそうやってやって来たんだ、てつ兄は…。」
北山陽一「俺達がワガママ過ぎたんだな、きっと…。」
酒井雄二「そのワガママを聞いてたからてつ兄はいつまでも自分のやりたい事が出来なかった…ごめん、そんな事思いもしてなかった。」
村上てつや「謝るなよ。いつでもお前等の行ってる事は正しかった、俺が捻くれてるからな…。世間一般から考えるとお前等の思ってる事の方が今回だって正しい。」
北山陽一「今度は俺達がてつ兄のワガママを聞く番なんだな…。」
村上てつや「…大人になったなあ…。」
ト書き「苦笑いを浮かべて、村上は3人を順繰りに見た。」
村上てつや「やっぱ俺の育て方がよっかたんだなぁ〜(感激)」
黒沢カオル「じまんのお兄ちゃんだからね。」
村上てつや「ありがとな。」
ト書き「てつやは感極まって涙をこぼした」
酒井雄二「あぁ〜あ、薫が兄貴を泣かしたぁ〜!」
黒沢カオル「えぇ〜〜〜!!!なんで俺なんだよぉ〜!!」
北山陽一「コラコラ、やめなって2人とも。」
効果音「ガタッ」
村上てつや「優!?」
安岡優「……。」
ト書き「安岡は顔を向けずに自分の部屋に行ってしまった。」
北山陽一「優兄、どうしちゃったんでしょうね?」
村上てつや「参ったなぁ…。」
ト書き「眉間にしわを寄せ困った顔をする村上。」
酒井雄二「俺、部屋行ってみるよ。」
ト書き「安岡の部屋に入ろうとした時、いきなり安岡が中から出てくる。」
酒井雄二「わぁっ!…あぁ…優兄?」
ト書き「キッチンに向かい冷蔵庫から2本のビールを出してきて部屋に戻る安岡。」
安岡優「…どいて、雄二。」
酒井雄二「あぁっ…ごめん。」
効果音「バタン! ガチャ(鍵を閉める音)」
酒井雄二「…鍵閉められた…。」
ト書き「リビングに戻りそう一言呟くと酒井はソファーに倒れこんだ。」
黒沢カオル「優兄、相当怒ってるね…そのうち爆音で音楽聴き始めるよ、きっと。」
北山陽一「優兄は俺らより反対してる訳か…1番手強いね。」
村上てつや「はぁ…ったく…。」
ト書き「椅子から立ち上がり安岡の居る部屋の前に立つ村上。」
村上てつや「……優、あけてくれよ。」
ト書き「何秒待っても返事が返ってこない。」
村上てつや「優、話そう…だから開けてくれ、頼む。」
ト書き「また返事が返ってこない。」
村上てつや「…わかった優が入れたくないなら別に良い、ここで話す。」
ト書き「そう言うとドアにもたれ掛かる村上。」
村上てつや「さっき言った通りの理由で俺は大学を辞める、けどお前を責めてる訳じゃない。お前が居なくなるから3人の面倒が前より大変になるのは確かだ、けどだからって責めてるんじゃない。」
ト書き「話を続ける村上。」
村上てつや「確かにお前が高2の時に1人暮らしを始めた時、俺は心の中でお前を責めた…逃げるなって…けど今回はそうは思ってない。」
安岡優「……。」
村上てつや「優にあいつ等のお手本になってもらいたいんだ…。留学して夢を叶えて立派なかっこいい大人の男の見本に…。」
安岡優「…俺はてつに大学を辞めて欲しくない、絶対に。」
ト書き「ドア越しに安岡の声が聞こえて村上がドアから離れる。」
安岡優「せっかく頑張って入った希望の大学を簡単に辞めて欲しくない…俺はてつと学部が違っても同じ大学に行ける事がスゴク嬉しかった。」
村上てつや「…確かに俺は頭悪かったからな。」
安岡優「違う!…高校は違う所に通ってたし、高3の時家に戻った時てつは笑顔で迎えてくれた…家族って事を思い出させてくれた。」
村上てつや「だって双子だぜ?俺たち…兄弟は生まれて最初の他人って言うけど、お前とは違うだろ。」
安岡優「…俺の小さな夢は…てつと肩並べて大学を笑顔で卒業する事だった…最後だから。」
村上てつや「……優。」
ト書き「”最後だから”と言う寂しそうな優の声に、村上は何も言えなくなってしまった。」
安岡優「俺はどうすればいいんだよ…。」
村上てつや「どうもしなくていいんだ。お前のしたい事をしたいようにすれば。それが俺の幸せなんだぜ?」
安岡優「でもっ!!」
村上てつや「頼む・・・俺のわがままだけど聞いてくれ・・・」
安岡優「聞けないよ…そんなワガママ……聞けないよ…俺。」
ト書き「ビールを飲み干すとベットに倒れて涙を堪える安岡。」
村上てつや「ふう…。(ダメか…。)」
ナレーション「村上はドアの前からそっと離れて弟達の待つリビングへ戻った。」
酒井雄二「どうでした?」
[TOP|NEXT|BACK]