-ゴスドラマ過去ログ:6401-6500-
村上てつや「知ってる、さっき見たからな。今は見えなくて安心してるよ。」
北山陽一「はは…、とにかく診察室に行ったらどうです?」
村上てつや「大して重症でもねーのに、何で毎日来るんだろうな。特に御年配はよぉ。」
北山陽一「知りませんよ。」
村上てつや「お握りとたくあん持って、待ち合い室で食ってんだぞ?」
北山陽一「…飲食禁止されてませんからねぇ、って村上先生、診察室行かなくても良いんですか?」
村上てつや「はぁ・・・、気が進まねーよ。」
北山陽一「ああ、そうだ。後でちょっと話したい事があるんで終わったら面会室横の会議室まで来て貰えます?」
ト書き「村上はまじまじと北山を見た。」
村上てつや「告白か?」
北山陽一「目を開けて寝る特技があるとは思わなかったねぇ、…馬鹿言ってないでとっとと行って来いよ。」
村上てつや「へいへい。」
ト書き「村上は診察へと向かった。」
ナレーション「皆さん・・・本当に演技なのかなぁ・・・。」
ト書き「心配そうに欄外で呟くナレーション。」
ナレーション「・・・私が考えても仕方ないわよね。」
ト書き「さくさくと診察を終えた村上は会議室へ向かった。」
村上てつや「うぃーっす、居るかぁ?」
北山陽一「どうも、貴重な時間を費やして戴きまして。」
ト書き「机の上の資料を一瞥し、村上は北山へ近付いた。」
村上てつや「このカルテ…は?」
北山陽一「安岡さんのです。」
村上てつや「お嬢の?」
北山陽一「ええ…今まで投薬してきて、その結果がこっちなんですけど。」
ト書き「そう言って、北山は数枚の書類を並べる。」
北山陽一「全然、効いてないんです・・・容態が悪くなる一方で。」
ト書き「資料の一枚を手にとって、村上は深刻な顔でそれを眺めた。」
村上てつや「・・・で?」
北山陽一「は?」
村上てつや「お前の意見はどうだってんだ。この結果を見て、『研修生・北山陽一』君は」
北山陽一「俺・・・ですか?」
村上てつや「そう、お前はどう判断するんだ?」
北山陽一「まず・・・半年は無理です。もって、2・3ヵ月・・・悪くて1ヶ月です・・・。」
村上てつや「・・・やっぱりな・・・。」
北山陽一「やっぱりなって・・・。」
村上てつや「助からねぇんだぜ?あんなに元気なのにさ・・・。」
北山陽一「・・・はい。」
村上てつや「もっかいこの病院に入院してきた時から予想はしてたんだ。でも、こんなにも早いなんて・・・。」
北山陽一「・・・・・・・・。」
村上てつや「どのみち、早いとこ勝負つけねぇとな・・・」
北山陽一「勝負?」
村上てつや「そうだよ。勝負。・・・お前も、本当は分かってんだろ?」
北山陽一「な・・・なにを?」
村上てつや「俺が、お嬢に抱いてるもんと同じもんを、自分も抱えてるってこと。」
北山陽一「べっ・・・べつに俺はっ!」
村上てつや「隠したって無駄さ。俺、そういうの、昔っから敏感なんだー。」
北山陽一「・・・・・・。」
村上てつや「どっちにしろ、俺もお前も時間はねぇってことは確かなんだ。俺は、もう容赦するつもりはねぇぜ。」
北山陽一「・・・勝負って・・・俺と・・・ですか?」
村上てつや「さぁな。お前とか・・・あの新しい兄貴か・・・それとも、自分とかもな。」
北山陽一「自分・・・ですか。」
村上てつや「とにかく、俺は残りの時間を有意義に過ごすさ。」
ト書き「そう言って、村上は会議室を出ていった。」
北山陽一「容赦なし、ね……。」
ト書き「そう呟くと北山は書類やカルテを片付け始めた。」
北山陽一「あ、れ?」
ト書き「北山の視界が不意にぼやけた。」
北山陽一「俺はあの人に『助かる』って言って貰いたかったのか・・・?」
ト書き「書類に、水滴がぼたぼたと落ちる。」
北山陽一「・・・顔、洗わなきゃ。」
ト書き「雑にまとめた書類を片手に、無造作に顔を拭うと北山も会議室を出て行った。」
効果音「ごんごん。」
安岡優「ん?」
村上てつや「うぉいしょっとぉ……今晩はお嬢、大人しくしてたか?」
ト書き「窓の縁を乗り越えて、村上は部屋の中へ入ってきた。」
安岡優「村上先生・・・ここ3階だよ?」
村上てつや「落ちる心配はすんな。ベランダとか通って来てるから。」
安岡優「でも、本当に何で何時も窓から入って来るの?ボクそれが疑問なんだぁ。」
村上てつや「じゃあ、身の安全が保証されてる時は扉から入ってくるよ。」
安岡優「あ〜…もしかして、竹内さん?」
村上てつや「ま、ノーコメントっつー事で。」
ト書き「なんだかんだ言いつつも、誰かいてくれるということは嬉しいので安岡は黙っていた。」
安岡優「先生……」
村上てつや「ん?」
安岡優「ありがと、会いに来てくれて。」
村上てつや「なんだよ、いきなり。」
安岡優「もう殆ど誰も来てくれないから・・・。」
ト書き「安岡はそう言って目を伏せた。」
村上てつや「・・・あの、カオルっていう奴は?」
安岡優「カオルだけだよ、来てくれるのはね。」
村上てつや「そうか・・・。」
安岡優「でもねっ、新しいお兄ちゃんが明日もボクに会いに来てくれるって言ってくれたんだ。」
村上てつや「あぁ。」
ト書き「ちょっと不機嫌な顔をする村上。」
村上てつや「良かったなぁ・・・っと、もう消灯時間だ。」
ト書き「時計を確認して、村上はパイプ椅子から立ち上がった。」
安岡優「もお行っちゃうの?」
村上てつや「良い子にしてたらまた明日も顔見に来るからな。じゃあオヤスミ。」
ト書き「来た時同様、窓枠を飛び越えて村上は部屋を出て行った。」
安岡優「また明日ね〜?」
ト書き「昔のCMの真似をし、手を振る安岡。」
村上てつや「おう、ちゃんと寝ろよ。」
安岡優「うん。」
ト書き「A」
ナレーション「ト書きが間違えているから、私が・・・そして次の日・・・」
黒沢カオル「優〜起きてる?」
安岡優「あ〜カオル♪おきてるよ〜♪」
黒沢カオル「あぁ、身体起こさなくても良いよ。そのままでそのままで。」
安岡優「・・・顔色悪い?もしかして。」
黒沢カオル「ん〜〜〜・・・うん。」
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