-ゴスドラマ過去ログ:15001-15100-
酒井雄二「黙っていてもわかりませんよ?」
ト書き「泣きそうな顔になる北山」
酒井雄二「陽一・・・さっき公園で我輩に言ったことを薫殿やてつや殿に言ってみては・・・。黙っていてはみんなが混乱するだけですよっ!」
北山陽一「・・・ゴメン・・・・今日は1人になりたいんだ・・・・。明日は土曜日だから学校も休みだし・・・・・・。この事は、兄さん達や優には黙っててくれ・・・・頼む・・・・・。」
ト書き「北山は最後に、「明日にはちゃんと帰ってくるから・・・・」と言って、酒井が説得する間もなく立ち去ってしまった。しばらくの間、我を忘れて立ちすくむ酒井。」
酒井雄二「・・・・・・・ハッ!(首を左右に振る)陽一・・・だいぶ追い詰められてる感じだ・・・・・このままじゃ・・・・・・(空を見上げる)雲行きも怪しい・・・・あいつの事だから友達を頼るとは考えにくいし・・・・・やっぱり・・・陽一には悪いが・・・・・・・(あわてて家の中に入る)」
安岡優「どうしたのユウジ慌てて?誰か外にいたの?」
酒井雄二「(安岡のズボンのすそを、玄関の方に向かっておもいっきり引っ張る)」
黒沢カオル「なんか、「外に来い!」って言ってるように見えるんだけど・・・・・」
村上てつや「・・・こいつの行動・・・・なんか気になるんだよなぁ・・・・・・薫、優、ちょっと外に出てみるぞ。」
安岡優「うん。」
黒沢カオル「(走っていくユウジを追いかけながら)ユウジ、あんなに慌てて…何があったんだろ?」
ト書き「玄関の扉が開き、てつや達3人が顔覗かせる。それに気がついた陽一はあわてて逃げようとする。」
黒沢カオル「陽一!!なんで逃げるんだよ!」
北山陽一「うわっ、見つかっちゃったよ(汗)・・・・・にげろっ」
村上てつや「(サッカーで鍛えた駿足発揮!!北山の腕をつかむ)陽一!!・・・ハァハァハァ・・・何があったんだよ・・・・ハァハァ・・・俺達兄弟にも言えないことなのかよ!?(怒)」
安岡優「陽一兄…。僕らって、陽一兄にとって邪魔な存在なのかなぁ。最近僕らの事避けてる…(泣)」
北山陽一「避けてるわけじゃないよ・・・(村上の手をふりはらう)俺だって考えたいことくらいあるんだ!ほっといてくれよ!!(逃げるように駆け出す)」
効果音「パシンッ」
ト書き「駆け出した北山の腕をつかみ、頬を叩く黒沢。」
北山陽一「(頬を押さえながら黒沢を睨み)何すんだよっ!!」
黒沢カオル「・・!!・・・ゴメン・・・・・叩くことなかったね・・・・・・でも、何があったかぐらい話してくれてもいいんじゃないかな?」
北山陽一「今の俺が話す事なんて何もない!1人になりたいんだからもうほっといてくれっ!!(駆け出す)」
村上てつや「(北山が駆け出したのを見て一緒に駆け出す)待てよっ!!・・・・ハァハァ・・・・・・・陽一!待てって!・・・・・・ハァハァハァ・・・・・・もうダメだ・・・・これ以上走れねぇ・・・・。」
ト書き「先ほどいきなり走ったのもきいており、北山に追いつく前にダウンしてしまう村上。」
村上てつや「ハァ・・・ハァ・・・・・チクショウ!・・・・ハァ・・ちょっと・・・運動しない・・・・だけで・・・ハァ・・・・体力って・・・・こんなに落ちる・・・・・ものなのか・・・・・ハァハァ・・・・・・薫・・・・優・・・・すまん・・・・・・・」
黒沢カオル「(村上に駆け寄る)大丈夫?てつ。・・・・ゴメン。俺がついカッとなって陽一の頬を叩いちゃったから・・・・・・」
酒井雄二「うに〜・・・・・(陽一・・・・・)・・・!!(北山が走っていった方に向かって猛ダッシュする)」
安岡優「ユウジ!!・・・(走っていった酒井を見て)・・・・もしかしてユウジ・・・・・陽一兄を探しに行ったんじゃ・・・・・・・・・」
村上てつや「ははは・・・・・あの猫・・・俺等なんかより何十倍も陽一の事知ってそうだもんな・・・・・。薫、いつまでもしけた顔してねーで、俺等も陽一を探しに行くぞ。」
黒沢カオル「うん・・・・そうだね・・・・・・・行こう!陽一を探しに!」
ト書き「そう言うと、北山、酒井の走っていった方に駆け出す3人。その頃酒井は、北山を探してあちこち駆け回っていた。そして北山は、先ほど時間つぶしのためにいた公園に再び行っていた。ブランコに座り、うつむいたまま動かない。時間は夜の11時。公園の街灯だけが薄暗く灯っている。」
北山陽一「・・・・・・・・・・・・・・(泣)」
酒井雄二「・・・にゃ〜ん・・・(顔を伏せている陽一にすりよる)」
北山陽一「雄二・・・。オレ、やっぱりダメだよ・・・。素直になりたいけど、本当の兄弟じゃないと思うとやっぱり避けてしまう・・・。」
酒井雄二「・・・陽一・・。」
北山陽一「兄さん達は悪くないのに、ついイライラしちゃうんだ・・・。実子の兄さん達には、養子の俺の気持ちなんてわかるわけないって・・・・・。」
酒井雄二「それはそうですけど・・・・・・・」
北山陽一「雄二・・・・雄二は、いろんな人を救ってきたんだろ?一回ぐらい、そういうのに巡り合わなかった?」
酒井雄二「・・・・はい、1度だけありました。その時は、年の離れた3人の兄を持つ小学生でしたね。・・・養子の自分のせいで兄達の両親を事故にあわせてしまい死なせてしまった・・・・・そう思って兄達から距離をおいた事もありましたね。あの時は大変でした・・・・。」
北山陽一「・・・実際は・・・・・そうだったわけじゃないんだろ?」
酒井雄二「もちろん、酔っ払いの車が突っ込んできただけ。でも・・・「自分だけが助かった」っていう自己嫌悪感にさいなまれて・・・・・小さな体で、大きな悩みを抱えてましたね。養子だって事も、そう教えられたわけじゃないのに、自分だけ年が離れてるってだけで不信感を持ってましたし・・・・・すごい小学生でしたよ。」
北山陽一「・・・・今、その子は?どうやって別れてきたの?」
酒井雄二「最後には、兄達にも我輩の言葉がわかるようになりまして・・・・・「突き放すのも愛情」って事で、その子にだけ何も言わずに出てきました。・・・今は、兄弟仲良くやってると思いますよ。」
北山陽一「そうなんだ・・・・・・・。」
酒井雄二「陽一・・・・そうやって小さいながらに頑張ってる人もいるんだぞ。だから、お前も素直になって・・・・・・」
北山陽一「素直になって話してみろ・・・・そう言いたいんでしょ?・・・・でもねユウジ、俺みたいに中学生・・・もうすぐ高校に上がるっていう年齢までくると、小学生みたいな素直さはなくなっていくんだ。色々考えるようになる・・・・・だから、そう簡単に話すってわけにはいかなくなるんだよ。」
酒井雄二「うっ・・・・・・(返す言葉がなくなってしまう)」
ト書き「その頃村上、黒沢、安岡の3人は、北山を探して公園へと来ていた。」
安岡優「・・・(あたりをキョロキョロ)・・・・あっ!ねぇ、あそこにいるの陽一兄じゃない?あのブランコに座ってるの。」
黒沢カオル「ホントだ。・・・おーい!よーいち・・・・・・(と叫ぼうとする)」
村上てつや「(叫ぼうとする黒沢を止めて)やめろ、薫。俺等が出て行ったら間違いなくあいつはまた逃げ出す。今はこのまま様子を見よう。あいつにバレないように、声が聞こえる所まで移動するぞ。」
ト書き「と言うと、気付かれないよう静かにブランコの近くまで移動する3人。もちろん北山も酒井も気付いておらず、話を続けている。」
北山陽一「はぁ〜・・・なんかもうイヤになってきたな・・・・・。学校も・・・家も・・・もうどこにもいたくない・・・・・。このまま誰もいない世界に行きたい気分だよ・・・・・・・」
酒井雄二「そんな事言って・・・・家族はどうするんですか!?友達は!?」
北山陽一「別に家族なんて・・・・それに友達だっていないし・・・。俺が学年トップってだけで一歩引いて接してくるし、口を開けば、「頭いいからいいよね」とか「たいした勉強しなくても楽勝だろ」とかしか言ってこない。何も知らないくせにさ・・・・・。だから、クラスメートとかも避けて生活してるよ。」
ト書き「「クラスメートとの会話なんて、最近は指折りぐらいかな?」と言う北山。そう話す彼を見て酒井は、言葉を失ってしまう。」
北山陽一「今じゃ先生だってそうだよ。満点取らなかったら不思議がる。だから、今の俺には勉強しかない・・・・・そうやって「真面目な人」を演じるしかないんだ。塾や家での勉強、最近は平均4,5時間になるかな?・・・そうでもしないと、俺の居場所がなくなるんだよ・・・・・・・」
安岡優「(物陰で話を聞いている。小声で)平均4,5時間だって!!てつ兄も薫兄もそんなにやってるって知ってた?」
村上てつや「(同じく小声)全然知らなかった・・・。でも、塾だけで3時間は軽くいくからなぁ。・・・もしかしたら4,5時間じゃすまねーかもな・・・・俺の知ってるかぎりでも、毎日家で3,4、時間はやってるし・・・・それに塾を合わせたら・・・・・・・うわ〜・・・・考えたくもない。」
黒沢カオル「・・・友達ともあんまり話してないのか・・・。学校の話、今日一日何があったとか、最近聞いてなかったから・・・。陽一の反抗期の時期に入ったのかとばっかり思ってたけど・・・。」
村上てつや「そんなわけじゃなさそうだよな、あの状態は。俺ん時には考えられねーぞ。クラスメートとの会話が指折りできるって。」
安岡優「陽一兄・・・・・。」
酒井雄二「陽一、居場所がなくなる、なんてかなしこいといわないで下さい。」
北山陽一「雄二・・・・・お前、僕なんかにかまってないでさっさと帰りな。雲行きも怪しいんだし。お前まで家に帰らないなんて、しなくてもいいんだぞ。」
酒井雄二「我輩が帰る時は陽一も一緒です。陽一が帰らないなら我輩も帰りません。(ふと時計を見る)・・・・陽一、もう12時近いですけど眠くないんですか?それと、どこで寝るつもりなんですか?」
北山陽一「えっ・・・・(時計を見る)ホントだ・・・12時・・・・もう真夜中か・・・・。(酒井の頭を撫でながら)まだ全然余裕。勉強のせいで普段から寝るのは1時や2時近いし、徹夜だって何回も。次の日学校でもお構いなしだし、最高3日起きっぱなしっていうのもあったかな。一日寝ない事ぐらい楽勝だよ。」
酒井雄二「そんな事してたら、いつか身体壊しますよ!陽一、帰りましょう。」
北山陽一「心配しなくても大丈夫。この生活1年近くやってるけど、まだ1度も倒れた事はないよ。・・・・それに、雄二には言ったはずだ。今日は1人になりたいんだって。それなのに、勝手に兄さん達と優を呼んだりして・・・・・本当なら雄二にもいてほしくないって思ってるのに・・・・・・。」
酒井雄二「・・!!陽一・・・・お前・・・・・・・・・・・・」
北山陽一「頼むからもう一人にしといてくれ!!お前も俺に構うな!!(その場から猛ダッシュで走り去り闇へと姿を消す)」
村上てつや「(その様子を見て)(マズイ・・・・)優、陽一のあとを追え!捕まえなくていいから絶対見失うな!・・・・・(俺が知っててあいつが行きそうな場所はここ以外知らない・・・・。ここで見失ったらあいつの居場所はわからなくなる・・・・・・)優!早く行け!!」
安岡優「わかった!(北山の後を追う)」
酒井雄二「にゃっ!!(優殿、我が輩も追いかけますよ!!)」
ト書き「とりあえず先に北山を追いかける安岡と酒井。」
酒井雄二「(北山に追いついてから北山の前に出て)陽一っ!・・・待ってください!・・・我輩は陽一を困らせてばかりですね・・・ごめんなさい。(頭を下げた)」
北山陽一「(1度立ち止まり)・・・困らせてばかりだと思うなら・・・・・今は俺に構うな・・・・・・・・(雄二の横をするりと抜けて再び走り出す)」
酒井雄二「陽一!!(後ろを振り向くがもうすでに北山はいない)・・・・・・・(我輩の言葉も届かないほど陽一は追い詰められてるのか・・・・?あのままじゃ心も身体も・・・・・・・)」
安岡優「ゆうじ〜!・・・ハァハァ・・・・・やっと追いついた・・・・(まわりを見渡す)やっば〜・・・・陽一兄見失っちゃった・・・・・・」
村上てつや「優!!(安岡と酒井に追いつく)・・・陽一はどこだ?」
安岡優「・・・ゴメン・・・・・・見失っちゃった・・・・・。」
効果音「ポツ・・・ポツ・・・・ポツ・・・・・・・ザーーッ・・・・(ついに雨が振り出す)」
村上てつや「・・・チッ・・・・・・ついに降り出したか・・・・・・まだこの辺りにいるはず・・・・手分けして探すぞ。見つけたら携帯に連絡な。・・・俺はこっちだ。(駆け出す)」
黒沢カオル「それじゃあ俺はこっち。・・・優、またあとでね。(村上とは別の方向に走り出す)」
安岡優「それなら僕はこっちだね。雄二、行くよ。」
酒井雄二「ニャア!!(陽一・・・待っててください・・・・必ず我輩がおぬしを救ってみせます・・・・・・)(安岡と共にまた別の方向へ)」
ト書き「3方向に別れて北山を探し始める3人と1匹。その頃北山は、先ほどの公園からさほど離れてない川辺の草むらに寝転がっていた。雨は当分止みそうにもない様子。」
北山陽一「・・・・もう体が動かない・・・・・このまま誰にも邪魔されずに眠りたいな・・・・・・オレ・・・・疲れた・・・・・・・・このまま静かに・・・・・眠らせて・・・・・zzz・・・(気を失ったように眠り出す)」
ト書き「雨の中を静かに眠る北山。体は動かず、呼吸音もほとんどしてないので死人のようにも見える。」
安岡優「ハア・・・ハア・・・(北山のいる川辺の近くまで来て、あたりを見回す)あれ・・・?あそこにいるのはひょっとして・・・・・・陽一兄?!(駆け出す)」
ナレーション「そこには、雨に打たれて眠りついている北山が・・・。」
安岡優「陽一兄さん!…!?っ…あっ、息はあるか…(安心)」
酒井雄二「ん・・・・優?」
北山陽一「(↑それは僕のセリフでしょ?雄二)優、なんでここがわかったの?」
安岡優「みんなで陽一兄を探してたんだ。・・・帰ろう、陽一兄。風邪ひいちゃうよ。」
北山陽一「帰るもんか!誰が探してくれって頼んだよ!?ほっといてくれ!」
安岡優「ほっとけるわけないでしょ!待ってて。今てつ兄と薫兄に連絡を・・・・・(携帯を取り出す)」
北山陽一「・・・!!(安岡の携帯を奪って遠くに投げる。あたりは真っ暗なのでどこにあるのか全然わからない)」
安岡優「陽一兄!何するんだよ!!」
北山陽一「今言ったはずだ!!俺は家に帰りたくないんだよ!だからもう・・・ほっ・・・といて・・・・・く・・・・・・・・(その場に倒れて気を失ってしまう)」
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