-ゴスドラマ過去ログ:6801-6900-
黒沢カオル「・・・・・・・・・・。」
ト書き「どれぐらい経っただろうか?2人は沈黙のまま時間だけが流れていった。」
村上てつや「おいっっっ!!!!!」
ト書き「物凄い勢いで村上が戻ってきた。」
酒井雄二「ど、どうしたの?」
村上てつや「ナーが、ドナーが・・・。」
ト書き「そして、ちょうど北山も手術室から出てきた。」
北山陽一「なんとか、もちなおしました。」
黒沢カオル「よ、よかったぁ。」
酒井雄二「村上先生。ドナーが?」
村上てつや「ドナーが見つかった!!!!!」
北山陽一「ほ、本当ですか?」
村上てつや「バカお前!俺だってこんな時に冗談言わねぇよ!」
北山陽一「き、奇跡だ!!!」
村上てつや「今すぐ来てくれるそうだ。」
黒沢カオル「あっ。」
ト書き「カオルの視線の先には・・・。」
酒井雄二「・・・・バリ・・・・・・さん?」
ト書き「バリが駆け寄ってきた。」
黒沢カオル「心配してきてくれたの?」
DJバリ"K"〜ん「えっ?」
村上てつや「ドナーだよ。優の。」
北山陽一「誰が?????」
村上てつや「だからバリっ、いや、優の親父さんの同僚の・・・・・。」
黒沢カオル「バリさんでしょ?」
村上てつや「そ、そ。実はこの前ドナー登録してもらったんだけど・・・。」
黒沢カオル「あっ、だからいたんだ。」
DJバリ"K"〜ん「そうなの???」
ナレーション「そうなんです!言ったじゃないですかぁ。重要人物だって!!!」
ト書き「と、いつ戻ってきたのか、ナレーターが口をはさむ。」
DJバリ"K"〜ん「その事だったのか。」
ナレーション「そうです。」
酒井雄二「なんだかなぁ・・・。」
DJバリ"K"〜ん「それ、俺のセリフ。」
北山陽一「でも、骨髄液取る時滅茶苦茶痛いらしいから。」
DJバリ"K"〜ん「……覚悟しとく。」
ナレーション「決意を意にして、手術室に入った・・・。」
ト書き「うちの母親は泣きましたから……。」
北山陽一「きみの母親って・・・ナニもの?」
ト書き「ふっ・・・私もね、今まで平坦な道ばかり歩んでる訳じゃないのよ。」
北山陽一「どっかのバーの、ママみたいだよ・・・。」
村上てつや「っていうか、性別あんのか?」
酒井雄二「発生したら嫌過ぎ。」
黒沢カオル「それよりも、優はっ?!」
ナレーション「それよりも、安岡さん、余命一ヶ月の設定のはずだったのに・・・ドナー出てきちゃった。」
果音「ずひゅん!」
ト書き「ナレーションは、大自然の中へと消えていった。」
村上てつや「それにしても、こんなくたびれた医院によくそんな設備があったなぁ…。」
黒沢カオル「設定ねじ曲げてまで助けたいんだろ、ほらこの窓なんて外の景色は見えるのに下の地面なんて全然見えないもんな。」
酒井雄二「…あ、ホントだ。ここって実際にある建物じゃないんだ。」
村上てつや「ヤバいな…俺の腕、痙攣起こしてきやがった。」
黒沢カオル「ええと、こういうときは暖める……?」
村上てつや「そんなんじゃおさまらねーよ。」
ト書き「両腕がアル中患者のごとく震えている様を村上は煙草を銜えたまま冷静に観察している。」
酒井雄二「じゃ、どうすればおさまるんですか?」
村上てつや「さぁ?筋肉疲労だからな、安静にしてマッサージでもするだろ。」
ト書き「どうにか煙草を灰皿に置き、指を組んだ。」
村上てつや「問題は、この手じゃ何も出来ねーんだよなぁ…。癪だが、お嬢の事は北山に任せるか。」
ト書き「村上は手術室のドアを見て、祈るように目を瞑りました。」
酒井雄二「ト書きさん…普段そういう口調なの?」
ナレーション「皆さん、確実に助かると思い込んでますね…。」
村上てつや「助からなかったら、俺がゆるさねぇ(ギロリ)。」
ナレーション「この人か……勝手に台本とか流れを書き替えたの。ま、いいんですけどね。」
北山陽一「村上先生っ、手術の準備が!」
村上てつや「残念だけど、お前に任せるわ。」
北山陽一「えっ……!?」
村上てつや「ほら、俺の腕。こんなんじゃメスは疎か煙草持つのもやっとなのよ。だから…お前がやってくれ。」
北山陽一「だからさっき…、分かりました。俺が一人でやります。」
効果音「がたんっ。」
ト書き「手術室の扉の中へ、北山は入っていった」
酒井雄二「手の方、どうですか。」
村上てつや「なに、心配してくれんの?」
酒井雄二「ええ、まぁ何もしないよりは何かしてた方が落ち着くんですよ。」
ト書き「酒井はそう言って村上の右手をぐにぐにマッサージし始めた。」
村上てつや「北山は凄いプレッシャーだろうな…、たとえドナーが見つかったとしても助からない可能性があるのに。」
酒井雄二「それって…?」
村上てつや「免疫、一回ぐらいは聴いた事あるだろ?」
酒井雄二「あ、はぁ…まぁ。」
村上てつや「例えば…そうだな、俺の皮膚を剥がして酒井に張り付けたとしよう。でもそれはすぐかどうかは判らないが確実に腐る。」
ト書き「酒井は無言でマッサージを続けながら村上の話を聴いた。」
村上てつや「それは、酒井の身体が俺の皮膚を自分のもんじゃないと確認して拒絶するからだ。それはドナーと患者にも同じ事。」
酒井雄二「と言う事は。」
村上てつや「遅かれ早かれ、拒絶反応が出たら…死ぬ。」
酒井雄二「……でもかけるしかないわけですよね。」
村上てつや「ああ、楽になる道は一本しかない。けどそれは選びたくないんだ。」
酒井雄二「楽になる道って?」
村上てつや「気道に管を入れて…人工呼吸器とつないで、眠らせる。死ぬまで。」
ナレーション「死ぬまで眠るから、本人は苦しまなくて済むんですね?」
村上てつや「けど…話し掛けても答えないし、笑わない。ただそこにいるだけだ。」
黒沢カオル「本人は楽だろうけど」
酒井雄二「……いや、楽かどうかも疑問だな。眠り病患者が楽しい訳無いのと同じだぜ。」
村上てつや「酒井、もう良いよ。さんきゅな。」
ト書き「なんとか動くようになった右腕で、村上は左腕を揉み始めた。」
黒沢カオル「優…北山先生…。」
村上てつや「あいつは俺が信頼出来るやつだから、必ず手術を成功させてくれるさ。」
ト書き「刻々と時は流れていく。」
北山陽一「(ドアを開けて)……一応、手術は成功です……」
ト書き「何故か、涙ぐんでいるバリも手術室から出てきた。」
DJバリ"K"〜ん「俺もう帰る…お疲れさんでした。」
ゴスペラーズレディース「ICUに運びますか?」
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