-ゴスドラマ過去ログ:6901-7000-
北山陽一「いや、無菌室に運んで。」
ゴスペラーズレディース「はい。」
ト書き「ストレッチャーに乗せられた安岡が人工呼吸器を付けた状態で無菌室へ運ばれて行った」
酒井雄二「優ちゃん・・・。」
村上てつや「さって…お前らは今日はお泊まりするのか?」
酒井雄二「お泊まりって…優の傍に居ても良いんですか?」
村上てつや「おう。その代わりちゃんと殺菌消毒してから無菌室に行けよ。」
黒沢カオル「はい。」
酒井雄二「よぉ〜し!行こう。優ちゃんのトコに」
ト書き「こうして、4人は無菌室へと向かった。」
村上てつや「ここ立って消毒な。」
北山陽一「麻酔から醒めてないので」
ト書き「静かにお願いします、と北山は言った。」
黒沢カオル「優…。」
ト書き「遠目には判らなかったが、近付いて見てみると殆ど全裸に近い。」
黒沢カオル「………っ。」
酒井雄二「何、如何いたした…………っ。」
北山陽一「二人とも、なんで固まってるんです。」
村上てつや「シーツかタオルケットぐらいかけてやろうぜ…それが紳士ってもんだろ」
北山陽一「あ、あぁこれは失礼。」
ト書き「北山はタオルケットを安岡の体にかけた。」
黒沢カオル「そうなってたのかぁ・・・。」
安岡優「んっ……あ、れ………?カオルと、お兄ちゃん?」
北山陽一「時間的に丁度、ですか。…優ちゃん、俺の事判る?」
安岡優「北山先生、だよね……?」
北山陽一「はい(…言語中枢と聴覚は大丈夫だな…。)」
ト書き「にっこり微笑みながら、北山はそんな事を考えていた。」
村上てつや「よっしゃ、次は俺から順に名前、わかるか?」
安岡優「リーダー。」
村上てつや「ちゃんとフルでだ。昔、お嬢に名前全部教えただろ?」
安岡優「村上…てつやセンセイ。」
村上てつや「はい、御名答。次はお前の友達の名前言ってみようか。」
安岡優「カオル。黒沢カオル。」
村上てつや「OK,お前から見て右手側に立ってる奴の名前は?」
安岡優「酒井雄二お兄ちゃん。」
ト書き「答える優の姿を見て、少し安堵する黒沢と酒井。」
村上てつや「これ、何本だ?」
ト書き「そう言って村上は広げた手を安岡に見せた。」
安岡優「5本。」
村上てつや「ぶー、不正解。指は何本かって限定してないだろ。腕が一本って場合もあるからな気をつけろ。」
北山陽一「そんな事言うのあんたぐらいです。」
村上てつや「俺?俺だけ?」
ト書き「北山は無言で頷く。」
安岡優「ったく。遊ぶなぁー。」
村上てつや「……麻酔が完全に抜けるまで、もうちょっとかかるか…。とりあえずお嬢は寝た方が良いな。」
安岡優「え〜もう大丈夫だよぉ〜。」
村上てつや「大丈夫って言ってるヤツが一番大丈夫じゃないんだ。」
黒沢カオル「なんだよそれ。」
安岡優「大丈夫だよぉ。」
村上てつや「ほら、休息が一番の薬だからな…?」
ト書き「点滴の管がついた安岡の腕をとって」
ナレーション「村上は言った。」
安岡優「分かった……ねるよぉ。(ぷぅとふくれる)」
黒沢カオル「お休み、優。」
酒井雄二「かわいいっ。」
安岡優「カオルも雄二お兄ちゃんも、ありがと。あ、もちろん北山センセも、村上先生も。」
ゴスペラーズ「(優を除いて)どういたしまして。」
安岡優「ぐうぅ。」
ト書き「どうやら寝たらしい。」
村上てつや「早えーな!オイ。」
ト書き「優のカワイイ寝顔をまじまじと見つめる4人。」
北山陽一「…問題は、これからですね。」
村上てつや「ああ。いつ拒否反応が出てもおかしくないからな。とうぶんは絶対安静だ。」
黒沢カオル「そんな!手術は成功したんでしょ?!」
酒井雄二「これで死んだら痛いメにあったバリさんも浮かばれないし、俺は台本を怨むぞ!!」
ナレーション「酒井さんいつのまにそんな、ドラマにのめり込んじゃってるんですか…。私は悲しいです…(涙)。私の酒井さんが…」
効果音「バキッ!」
ト書き「それにしてもいつまでも懲りないナレーション。ふっ。」
酒井雄二「(ト書き、強い……まぁいいや。身を守ってくれてるし)」
村上てつや「さて…珈琲でも飲みに行くか。」
北山陽一「そうですね、お二人もどうです?」
酒井雄二「二人とも、何呑気な事言って…。」
黒沢カオル「優が心配じゃないんですか?」
北山陽一「いえ、あのガラスで仕切られた部屋の向こう側にコーヒーメーカーがあるんで。」
村上てつや「まぁ、旨くもないが不味くもない。飲めるだけマシなシロモノだけどな。」
北山陽一「夜は長いです……特に、こういう時はね。」
村上てつや「眠くなったら隣に仮眠室がある、そこに行って寝てくれ。俺から事情を話しておくから。」
ト書き「簡易な造りの扉を開けて、二人は言った。」
北山陽一「で、どうしますか。村上先生は勿論飲むんでしょうから聞きませんけど、お二人は?」
黒沢カオル「あ、俺手伝います。」
酒井雄二「……俺、見てます。ちょっと心配だから。ひとりぐらい残ってた方がいいでしょ?」
北山陽一「有難うございます、でも…無理は禁物ですよ?」
酒井雄二「…はい。」
ト書き「椅子に座ると、酒井は祈るような気持ちで安岡の手を握った。」
効果音「機械の作動音。」
黒沢カオル「辛いな…フィクションのドラマなのに、元々社長と真理さんと竹内が書き上げた台本なのに…なんでこんなに苦しいんだろ。」
ト書き「服の胸元を掴み、黒沢は呟いた。」
村上てつや「さぁな…、見てる側は何か『作ってる』っていうフィルター通して見てるけど俺達は殆どその場に立ち会って実際に見てるからじゃないのか?」
北山陽一「…とりあえず、役に戻りましょうよ。見てる人が混乱するじゃないですか。」
黒沢カオル「……了解。」
ト書き「後ろ手に閉めた扉のほうを心配そうに降り返る黒沢。」
北山陽一「二人が気になりますか?」
黒沢カオル「えっ……?」
北山陽一「いくら兄妹とはいえ血はつながってませんしねぇ。」
村上てつや「まぁな…兄妹愛通り越してるもんな、スデに。」
ト書き「二人にそう言われ、黒沢は思わずガラス越しの部屋のほうを降り返る。」
村上てつや「っと、俺そういえば宿直だったな。ナースステーションの方顔出ししてくんぜ。」
ト書き「コーヒーを飲み終わると、村上は部屋を出て行った。」
黒沢カオル「……皆さん、忙しいんですね。」
北山陽一「んー、まぁ自分で選んじゃった道ですからねー…。こう苦労重ねてたら死ぬ時ゃ笑顔で死ねますよ確実に。」
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