-ゴスドラマ過去ログ:15601-15700-
村上てつや「それにしても、雄二はどこまで行ったんだ?」
北山陽一「(目に涙をためて)てつ兄、雄二が・・・雄二がいない・・・」
村上てつや「(陽一の頭をくしゅっとなでる)オレが必ず探してやる。だから泣くな。」
北山陽一「・・・・・・うん・・・。」
酒井雄二「うにゃー!!!!!」
北山陽一「・・・!!雄二!!!・・・・よかった・・・・・お前どこ行ってたの?」
酒井雄二「うにゃ〜(この奥に大きな空洞みたいな所があったんです。それで早く知らせようと思って。)」
北山陽一「大きな空洞・・・?この穴の奥にそんなのがあったんだ・・・・。てつ兄、この奥に大きな空洞があるって。行ってみよう。」
村上てつや「おう、わかった。・・・・・(やっぱり陽一の奴、ユウジと話せるんじゃ・・・・・?)」
ト書き「洞窟の奥へとさらに進む2人と1匹。しばらく行くといきなり周りが開け、広場みたいな所(・・・と言っても洞窟内だけど)に着いた。」
村上てつや「なんだぁ?この空間は・・・・。ちょっとした体育館ぐらいは広さあるぞ。(手を上に伸ばす)うわっ!全然とどかねぇ。こんなのが洞窟の中にあるとは・・・・・・」
ト書き「陽一と雄二は二人で走り回っている。」
北山陽一「ねえ、おかしいと思わない?僕たちライト持ってないのに前が見える」
村上てつや「確かに・・・既にどこかから光が入ってきてるんだな・・・」
酒井雄二「にゃあ…(にしても、おかしいですな。太陽光が入ってきているならば、それなりの光源が判るはずですが…。)」
村上てつや「そうだよなぁ・・・・でもどこからか光が入ってきてるって感じじゃないし・・・どちらかというとこの場所自体に光源があるって感じ・・・って!今のは誰の声だ?!俺は誰の返事をしてたんだ?!!(汗)」
北山陽一「やっば〜・・・・(小声で酒井に)ユウジ、てつ兄にあなたの声が聞こえているみたいですよ。」
村上てつや「(いきなり北山の方を振り向き)おい、陽一!雄二って人の言葉話せるんじゃねぇのか?そしてお前はその言葉を理解できる・・・・違うか?」
北山陽一「・・・(酒井に向かって小声で)ユウジ、てつ兄は明らかに疑っています。もう、ばらしちゃいましょうか。別に悪い事をしている訳でもないし。」
酒井雄二「でも・・・もういいでしょう・・」
村上てつや「陽一、どうなんだ?雄二は人の言葉がわかるのか?」
北山陽一「・・・はい。ユウジは人の言葉を話し、人の言葉を理解できます。そして僕は、ユウジの言葉を理解できるんです。」
村上てつや「・・・・・・・・・・・(疑ってたとはいえ、やはり驚きを隠せない様子)」
酒井雄二「てつや殿、すいません。我輩の声は、お主や薫殿や優殿には聞こえないので、どうしようもなかったんです・・・・・。」
村上てつや「……なぁ、雄二。何で俺や陽一にはおまえの声が聞こえるんだ?」
酒井雄二「我輩の声は、心のどこかで寂しいとか孤独だとか思ってる人が聞き取れる事が多いです。だから陽一は、我輩の声が聞こえる・・・・・。陽一の声が出なくなったのと、我輩の声が聞こえる事は同じと考えてくれればわかりやすいと思います。」
村上てつや「あ〜なるほど〜・・・・うん、陽一の場合は大体わかった。じゃあ俺はどうなんだ?俺も心のどこかでは寂しいと思ってるのか?」
酒井雄二「てつや殿の場合は、陽一の事を理解し始めたから。過去にも、兄弟の事を分かり始めた時に声が聞こえるようになったという事がありましたしね。・・・・陽一の事を意識して気にかけるようになってから、我輩に疑問を持ち始めたでしょ?どこかおかしいって。」
村上てつや「確かに、陽一がお前に話しかけてるのが不思議に見えたりしてたよ。・・・・・って事は、薫や優もお前の声が聞こえてるって事なのか?」
北山陽一「2人ともまだ聞こえてないよ。でも、たぶん優は気付いてる。この前僕に、「雄二と話せるの?」って聞いてきた。その時は「話せない」って答えちゃったけどね。・・・・薫兄はわかんない。気付いてそうな、気付いてなさそうな。鈍感そうに見えて、こういう事には敏感だったりするからねぇ。」
村上てつや「薫はなぁ・・・・こればっかは双子の俺でも分からん。・・・・・それじゃ陽一、お前に聞く。お前はどうして俺等を避けてたんだ?何が辛くて声が出なくなった?お前の様子からして、悩みの本命は勉強じゃないんだろ?正直に答えろ!!・・・・なんだったら雄二に言ってもらってもいいんだぜ!?」
酒井雄二「陽一、どうしますか?このまま、話しますか?」
北山陽一「話したって・・・きっとてつや兄にはわからない・・・。薫兄にも、優にもわからないよ!!実子のみんなには!!」
村上てつや「(脱力してがっくりと膝をつく)・・・お前、知ってたのか・・・」
北山陽一「えっ?てつや兄知ってたの?」
酒井雄二「・・・てつや殿はご存知だったんですか!?」
村上てつや「皆知ってるよ。でも血がつながってるかどうかなんて、どうでも良いことだろう?お前はオレの大事な弟だ。それ以外に一体何が必要なんだ?」
北山陽一「そ、そんな・・・。じゃぁ、薫兄も・・・優もみんな知ってたんだね!?僕をだましてたんだね!?(泣)」
酒井雄二「陽一、泣かないで・・・。これは「だます」とかではないのですよ。今てつや殿が言ったではないですか。「血がつながっているかどうかなんて、どうでもいい事だ」と・・・。それだけあなたの事を本当の弟として、兄として大事にしていたのですよ。」
村上てつや「約束だったんだ。陽一が20歳になったら全部話すって。」
北山陽一「そ、そんな…(驚愕)」
村上てつや「結果的にお前を騙していたのかもしれない・・・でも本当に、オレ達にとっては血のつながりなんて、どうでも良いことだったんだ・・・」
酒井雄二「陽一殿、あなたはもうこれ以上独りで思い悩む必要はないみたいですよ。本当に帰る場所がちゃんとあったじゃないですか、一番大事なところに。」
北山陽一「でも・・・だって・・・(泣き出して言葉にならない)」
村上てつや「(陽一の頭をなでる)ごめんな・・・そうか、だからお前はオレ達を避けてたんだな」
北山陽一「ひっく・・・ごめんなさい・・・ひっく・・・」
村上てつや「(陽一のあたまをぐりぐり)こら、いい年してしゃっくりが出るほど泣く奴があるかっ(笑)」
酒井雄二「にゅっ!(座り込んでいる陽一の膝にすり寄る)」
村上てつや「立てるか?」
北山陽一「う・・・ん・・・・・・・・・・・・・」
村上てつや「そっか(なでなで)あっ、そうそう「俺達」って言ったけどさ・・・それ、父さん母さんとさ、俺と薫でさ・・・お前と同じで、優にもさ・・・20歳になったら話すっていう計画だったんだわ・・・ようするにまだしらないんだよ。どうするかはちょっと考えてから、な?」
北山陽一「・・・・うん・・・・・・・・・(泣)」
村上てつや「もう泣き止めって(微笑)。・・・ほら、みんなのとこ帰るぞ。泣いてた事はバレないようにしろよ。薫はいいとして、優が心配するからな。」
北山陽一「・・・・うん。(涙を拭う)」
ト書き「手の平で雑把に顔を拭う北山に、村上はポケットの中からティッシュを取り出して北山の手に握らせる。」
北山陽一「(村上に抱きついて)てつ兄っ!・・・本当に・・・ごめんなさいっ!!」
酒井雄二「(北山の様子を見て)(・・・この家族と別れる時が近づいているようですな・・・)」
ト書き「今回の自分の使命が終わりに近付いてきている事を直感した酒井。」
酒井雄二「(ワザと明るく振る舞って)薫殿や優殿が心配しているといけませんから戻りましょうっ!それでみんなでご飯を食べましょうっ!」
村上てつや「おう、そうだな!」
北山陽一「・・・・・・・(なんだろう・・・胸騒ぎがする・・・・・。雄二・・・何も隠してないよね・・・・?)」
酒井雄二「(ええ、実は・・・お腹がすいて動けません・・・)」
村上てつや「なにやってんだ?戻るぞ。」
北山陽一「てつ兄!雄二!光が・・・強くなってる!」
村上てつや「なに!!(と駆け寄ってくる)」
北山陽一「・・・(黙って光の方を見ている)」
酒井雄二「アリガトウ、タノシカッタ・・・」
北山陽一「えっ?雄二なに言ってるの!?」
村上てつや「雄二!どういうことだよ!このままいなくなるつもりなのか!」
酒井雄二「あなた方はもう大丈夫・・・。陽一・・・(北山の方を見て優しく微笑む)」
北山陽一「雄二・・・冗談だよね?・・・これからもずっと・・・一緒に暮らすんだよね?・・・僕たちと・・・ね?雄二っ!!(酒井を力強く抱きしめた)」
酒井雄二「そういうわけにはいかないんですよ・・・陽一・・・」
北山陽一「やだ!!!!行くなよ!!」
酒井雄二「・・・陽一・・・・私も行きたくありません!・・・でも!・・でも、もう、お別れです・・・・・さようなら・・・・・陽一・・・・」
北山陽一「雄二ーー!!!!!!(泣)」
ト書き「北山の叫びが、洞窟内にこだまする。しかし酒井の姿はなく、北山は村上に泣きついた。」
村上てつや「雄二っ!・・・ちくしょう、眩しくて何も見えない・・・」
酒井雄二「(陽一あなただったらきっとまた強くなれるよ)」
北山陽一「・・雄二っ・・・・・!!」
黒沢カオル「ふぁ・・・・ん?雄二?なにしてんの??(抱っこ)」
酒井雄二「(薫の腕にすりすり)にゃーん」
安岡優「薫兄、2人が戻ってきたよ。引っ張り上げるから手伝って!」
北山陽一「雄二・・・雄二・・・」
黒沢カオル「へ?ゆーじなら先に戻ってきてるぞ。」
酒井雄二「にゃお〜〜ん(にゃへ、上手くいきませんでしたぁ〜〜よういちぃ〜どうしましょ?)」
北山陽一「雄二?」
酒井雄二「(ん?お呼びになりました?)」
北山陽一「なんでここにいるの????????」
酒井雄二「(だからぁ、上手くいかなかったんですってばぁ〜。/泣)」
村上てつや「(ぼそっと)それは、太ったからか?」
北山陽一「(村上の言葉は聞こえていない)雄二・・・よかった・・・・(酒井を思いっきり抱きしめ)雄二!もうどこにも行かないで!!雄二と離れるなんて絶対イヤだ!僕の前からいなくならないで!お願い!!(泣)」
酒井雄二「(く、苦しいですよ!陽一!・・・我輩のことをそんなにも想ってくれて・・・ありがとう!(涙)今回は上手くいかなかったけど・・・陽一・・・いつかは別れないといけない時がきますよ・・・そうして人間は大きくなっていくんです。だから・・・)」
北山陽一「そんなの絶対イヤ!!・・・・少なくても、ユウジの声が聞こえなくなるまではずっと一緒にいる!!」
酒井雄二「陽一・・・・・・・」
北山陽一「僕がユウジの声を理解できなくなったらいなくなってもいい!だからそれまでずっと一緒にいて!!ユウジ・・・お願い・・・・・・(酒井を抱きしめながら泣く)」
酒井雄二「・・・・・・・・・・・・・」
ト書き「複雑な面持ちで俯いた後に、雄二はもぞもぞと北山の腕の中でもがいて、なんとか北山の顔の横に、自分の頭を移動させた。」
酒井雄二「…にぃ(あのですね。…我輩は……助けを求められると、どうしても断れない性分でして。だから、陽一の処にも来る事が出来たんです。ですから、また、助けを求められたら…。…出会う事と、別れる事は、ワンセットです。ある日、突然我輩が居なくなっても、時々は変な猫が居たな、と思い出して下さいな。」
北山陽一「嫌だよ…。何でだよ。雄二がいなくなるなんて考えたくもない。僕は弱い人間だ。雄二がいないと……」
村上てつや「…お前、そんなに、雄二に頼ってたんだな。……そうだよな。俺達に言えない事でも、こいつなら聴いてくれるしな。…でも、これからは、俺にも言えるだろ?俺も、お前の話、聴くから。…陽一…お前も、俺に話してくれよ。な?」
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