-ゴスドラマ過去ログ:15801-15900-
酒井雄二「連れていったのは、彼女の父親でして。…その時は保健所がどういう所か知らなかったものですし。二人目の…作家だったんですが。その方に色々と教えて戴きまして、そこで理解したんです。『猫アレルギー』というものが存在する事も、普通の猫は会話をしない事も。」
ト書き「しばしの沈黙が辺りを包む。」
酒井雄二「実は、悩んだ時もあったんですよ。人間の言葉が理解できる、自分の大好きな人間が心を痛めている理由が分かることで。動物はたいてい、自分の主人が落ち込んでいる時は雰囲気で分かるんですが、我輩は深く考えすぎたんです。・・・・・・何も知らない猫として、擦り寄っていきたかった・・・」
村上てつや「……でも、判っちゃうんだろ?……お前が、判りたくなくても。」
酒井雄二「・・・ええ・・・・。」
北山陽一「そうだったんだ・・・・。」
安岡優「でも、みんな雄二と話が出来たからこそ救われたんじゃん。」
酒井雄二「でも・・・救う側の気持ちの痛みはどうなるんだろう・・・・・(ぽつっと呟く)」
黒沢カオル「↑俺だよぉ・・・・取るなよぉ〜〜大事なところでぇ(涙)」
酒井雄二「いやあ ごめんごめん。」
安岡優「救う側の・・・・・・痛み・・・・・・・・」
黒沢カオル「雄二だって、色んな痛みを背負って・・・・」
北山陽一「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黒沢カオル「だから・・・雄二・・・・・・ここを雄二が戻ってくる場所にして?俺達はなにもできないかもしれないけど・・・ほら、戻ってこれる場所があるって安心するっていうしさ。お腹すいたりとかさ・・・なんかあったらおいで、いつだって雄二のこと待ってるから。」
酒井雄二「・・・ありがとうございます。別れを告げる人間はたいてい同じような言葉を我輩に下さいます。我輩を歓迎してくれる場所はたくさんあるのです。それこそ出会いの数だけ・・・。 しかし、ここに長居をすることも、再び会う事もないでしょう。我輩はまた旅に出なければならない。そういう運命なのです。分かってください。」
安岡優「運命って変えられないのかな?」
酒井雄二「変えようと思うのならば、それなりの労力を必要としますよ。運命と思うものを撤回したと思ってもそれは結局『運命の』一部でしかなかったとも言い切れませんしね。 ……我輩は関わった人の事は忘れません。楽しかった事も、悲しかった事も。その人の痛みも。」
ト書き「雄二は立ち上がると、一礼して部屋を出ていき。少しして、かたん。という小さな物音が聴こえた。」
北山陽一「ユウジ・・・・僕、絶対強くなるから・・・・・・。」
村上てつや「陽一…」
ト書き「泣きたいのを我慢して呟いた北山の肩を抱く村上。」
北山陽一「(俯いて)・・・・えっぐ・・・・えっぐ・・・・雄二ぃ・・・。」
村上てつや「陽一、泣きたい時は泣け。その方がすっきりするぞ。」
北山陽一「(村上に抱きついて)てつ兄・・・えっぐ・・・雄二と・・・えっぐ・・・離れたくないよぉ・・・・うっ・・・うわーーんっ!(号泣)」
酒井雄二「(北山が自分の名前を呼んで泣いているのが家の外まで聞こえて)陽一・・・我輩も・・・陽一と別れるのが・・・辛いですぉ・・・えっぐ・・・ぐしっ・・・。)」
安岡優「・・・みんな来て!!(猛ダッシュで家の外へ走っていく)」
村上てつや「おっ!?どうした!?(ついて行く)」
安岡優「だだだだだっっ・・・バタンっっ!!(ドアが勢いよく開く)雄二!!待って!!」
酒井雄二「・・・ひっ!うぇぇぇえええ!!?(驚きすぎて変に叫ぶ)」
ト書き「いきなりすぎて、流した涙を拭うのも忘れる雄二」
黒沢カオル「(遅れて到着)雄二!!・・・・ぷっ・・・顔変だよ・・・?」
安岡優「・・・ねぇ、雄二・・・雄二の声が皆に聞こえるのってさ、こう思わない?俺たちが雄二を必要としてるんじゃなくて、雄二が、寂しいって、誰かに側にいて欲しいって・・・俺たちを必要としてるんじゃない・・・?(優しく抱き上げ、陽一の方を向かせる)」
北山陽一「・・・・お互いがお互いを必要とするから・・・(雄二の方を見て寂しげな笑顔をつくる)」
村上てつや「今度は俺は引き止めない。だから、雄二が後悔しない道をお前自身が選べ・・・(少し俯く)」
黒沢カオル「雄二、顔がどんどん変になってくよ?・・・くすっ、泣きたいんだったら泣けば?ほら、ここのお兄さんだって我慢してすんごい怖い顔になっちゃってるしさ(村上を見てにやり)泣きたいだけ泣いて、悩むだけ悩んでいいんじゃない?時間はまだあるはずでしょ?」
酒井雄二「にっっ・・・みっ・・なさ・・ごっ・・・めん・・な・・(言葉にならずただ涙だけが止まらなくなってしまった)」
北山陽一「雄二・・・僕等はいつまでも、雄二の事想ってるよ・・・だから・・(優ごと強く抱きしめる)」
安岡優「陽一兄・・痛い・・・骨当たってる・・(いつの間にか涙が溢れていた)」
黒沢カオル「・・・ぐすっ・・・・だ・・から?(北山に問いかけるがこちらも優に同じ)」
北山陽一「ごめんっ・・痛かった?あ、えっとだからせめて雄二が寂しくてどうしようもない時、会いたいって想った時は絶対ここに・・・・戻ってきてね?僕、本当に強くなるから・・・(精一杯の笑顔を雄二に向ける)」
村上てつや「とりえず・・・みんな家入んないか?ちょっと寒い・・・雄二も毛濡れてるしよぉ・・」
酒井雄二「ぅあっ…でも、我輩は……。」
村上てつや「……病気になって、腹減ると、人間でも物悲しくなっちまうんだぞ。……乾かして、飯喰ってくぐらい。良いだろ?」
北山陽一「う・・・っぐっ・・・て・・てつ兄・・・」
黒沢カオル「さーて!!・・・今日ははりきって作るっ・・から!!・・・優も陽一も手伝えよ!!(北山と安岡の背中を押す)」
安岡優「じゃあ・・・(涙を拭って)特別に雄二が好きなものいっぱい作ろっか!!」
ナレーション「北山に雄二を任せて早速キッチンで料理を始める黒沢料理長。」
黒沢カオル「やっぱきのこ料理かな」
北山陽一「猫だから、あまり熱いものはダメかも・・・・・。」
安岡優「猫舌だ、猫舌。・・・・陽一兄、猫って全員猫舌なの?」
黒沢カオル「えっ?違うの?俺、猫が熱いもの苦手だから、猫舌って言うんだとばっかり思ってたんだけど。」
北山陽一「・・・ユウジ、本当のところは?(抱き抱えている酒井に尋ねる)」
酒井雄二「どうなんでしょう?我輩も良くわからないんですよ。」
安岡優「じゃあ雄二は?雄二は熱いものダメなの?」
酒井雄二「う〜・・・・ん・・・どうだろ・・・・・?」
村上てつや「・・・・・つかえねー(ぼそ)」
酒井雄二「何か言いましたか?てつやさん。(冷たい視線)」
村上てつや「べっつにぃ〜〜(雄二のお腹を片手で持って持ち上げる)」
酒井雄二「うにゃっうにゃにゃにゃにゃーーーーー(手足ばたばた)」
黒沢カオル「はいはい。てつは手伝わなくていいから、明日提出のレポートやっといて。俺後で写すから。」
安岡優「薫兄…それってどぉかなぁ。…そういえば…僕が読んだ漫画で、猫がクリームシチュー食べる状況があったけど。『冷めたものを』って飼い主が言ってたし。…雄二が食べられるぐらいには、冷ましておくね?」
酒井雄二「ありがとうございます。優殿は優しいですな〜。(村上のほうを見ながら)」
村上てつや「なんだぁ?俺だって優しいだろ〜?(雄二のしっぽを持って宙ぶらりん)」
黒沢カオル「てつ、そろそろ雄二を離してあげたら?ひっかかれるよ?」
北山陽一「てつ兄!(雄二を抱きかかえる) しっぽだけは持っちゃダメだよ。」
村上てつや「(陽一にだけは逆らわない方がいいな・・・・)わーったよ。飯できたら呼んでくれよな。」
ト書き「「また声が出なくなったらやばいし・・・・」と思い、素直に北山に従う村上。その後、「レポートは自分でやれよ。」と一言言い、自分の部屋へ向かった。」
黒沢カオル「・・・・てつのケチ。(ぼそっ)」
北山陽一「レポートの場合、「ケチ」の問題ではないと思うんだけど・・・・・薫兄、後でレポート手伝おうか?・・・今、中3だけど、頭は高校生ぐらいだし・・・・少しはたしになると思うよ。」
黒沢カオル「ありがとう陽一(^^)(ニコニコ)・・・陽一は宿題は終わったの?」
安岡優「薫兄やっぱりお母さんみたいだねぇ、雄二??」
酒井雄二「そうですね〜(^^)(黒沢と同じくこちらもニコニコ)」
黒沢カオル「でもさぁ〜〜あいつはさぁ〜〜自分は写すんだよぉ?さいてーだろ?まったくよぉ〜〜女の子に頼むかなぁ・・・うん、そうしよっと。・・・ってコラ雄二。お腹がすいたのはわかったから、俺にあんまり懐かないの。(本人も忘れてたけど、一応お医者さんに「動物は飼っちゃダメだよ?」とか言われてる)」
酒井雄二「ぁ…すいません。薫殿は喘息もちでしたな。」
北山陽一「ごめんね薫兄・・・。僕、雄二と二階にいるから、ご飯出来たら呼んでね(^^)」
黒沢カオル「はいはい。多分、すぐに出来ると思うから。そんなには待たせないよ。」
安岡優「と、いうか、陽一兄は手伝わなくていいの?ずるい〜」
黒沢カオル「むっ・・・・じゃあ雄二はてつに身体洗ってもらいな。てつー!!てつったらぁ〜〜!!!ゆーじの身体あらってーーー!!!」
村上てつや「めんどいからイヤーーー!!!(2階から叫ぶ)」
安岡優「・・・・なんという兄貴だ。やっぱりどうがんばってもてつ兄を兄として尊敬するのは無理だなぁ。」
黒沢カオル「俺も双子の片割れとして恥ずかしいよ、ホントに。・・・まぁ、ユウジの身体洗ってって言ったけど、多分陽一がそれを許さないだろうね。「僕がやるからいいよ。」って言いそう。」
安岡優「あ〜確かに。僕が陽一兄の立場だったら絶対そう言うよ。だって、てつ兄に雄二任せたら大変な事になりそうだもん。(笑)」
黒沢カオル「やっぱそう思う?・・・てつは不器用だからなぁ、そういう事に関しては(微笑)。・・・・(鍋の中を見て)おっ!そろそろ出来あがりそう・・・。優、みんなを呼んで。」
安岡優「うん。」
ト書き「そう言って、リズミカルに階段を昇っていく安岡を見送り、ふと視界に入った雄二の餌皿を見て、寂しさを覚える黒沢。」
黒沢カオル「ふぅ・・・・・(ため息)」
村上てつや「猫には猫の暮らしやすいものがあると思うけど?俺は。」
黒沢カオル「う~ん・・・そうだよねぇ。って、いつのまにきたんだ!!!」
村上てつや「いま。(つまみ食い)」
北山陽一「てつ兄!つまみ食いしないの!」
村上てつや「長男権限です(きっぱり)。」
ゴスペラーズ「村上以外)そんな権限ねぇよ!!」
村上てつや「・・・・いいってことよっ。さあっメシっ。メシにすっか。」
ト書き「手際よく料理を皿に盛りつける黒澤。それを手伝う安岡。その光景を椅子に座って見ている村上。」
安岡優「ふにぃ〜。」
酒井雄二「ふにぃ〜。」
村上てつや「おっ、優と雄二がハモった(笑)」
黒沢カオル「ふふふ(と優しく笑顔)」
村上てつや「今度雄二連れてペットショップにでも行くか。」
黒沢カオル「えっ?」
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