-ゴスドラマ過去ログ:7501-7600-
酒井雄二「ど・・・どうして?さっき、無菌室の中では「6日で無菌室を出られる」って・・・」
黒沢カオル「そうですよっ・・・それに、優は骨髄を移植したんでしょ?!バリさんから・・・貰った・・・」
村上てつや「馬鹿。本人の前で「後。6日の命」だなんて言えるか。ましてや、俺も北山もお嬢に惚れてるんだ。」
北山陽一「白血病の発見自体が遅すぎたんですよ・・・だから、ドナーが見付かったとしても、間に合うわけがなかった・・・」
酒井雄二「そんなっ・・・じゃあ優ちゃんは・・・もうすぐ・・・」
ト書き「酒井は、5階の優のいる病室の窓を見上げた。」
北山陽一「何のための医者なんでしょう・・・今までたくさんの人の命を救えた医学も、一番そばにいたい人の前では、こんなにも無力だなんて・・・」
村上てつや「とにかく、俺はお嬢を見取ってやるつもりだ。・・・もちろん、それまでに手は尽くすが・・・北山も、そんなに悲観するな。まだ時間はある。」
黒沢カオル「優ぁっ・・・」
ト書き「その頃優は、ベッドに横になりながら、天上の一点を見つめていた。」
安岡優「(先生達、なにやってるんだろぉ・・・そりゃ、先生だから仕事があるよね・・・でも、カオルも雄二お兄ちゃんも来てくれない・・・)」
ト書き「「ふぅ・・・」とため息を吐くが、その考えはやめられそうになかった・・・」
安岡優「(お母さん・・・今、どこにいるの?・・・死んだら、どこにいくの?・・・私も、お母さんと同じ所に行くの?)」
ト書き「ぎゅっ・・・と、目をつぶる。」
安岡優「(だめだ!そんな事考えちゃいけない・・・考えてたら本当になりそう・・・本当に・・・)」
ト書き「考えてはいけないとは思いながらも、その考えは止まらなかった。」
安岡優「(死んだら、村上先生とも、北山先生とも、雄二お兄ちゃんとも、カオルとも・・・もう、会えなくなるの?・・・ねぇ。お母さん・・・教えて・・・)」
ト書き「天井が歪んで見える。それが自分の涙だと感づくのに、時間は要らなかった。」
安岡優「(お母さん・・・教えて・・・死ぬとどうなるの?・・・・・・私、死ぬの怖いっ!)」
ト書き「涙はいつまでも止まらなかった。」
効果音「(・・・優 by母)」
安岡優「()」
効果音「(・・・・・・)」
安岡優「(・・・今、お母さんの声が聞こえた気がした・・・まさか・・・私は、お母さんの声も聞いた事ないのに・・・)」
ト書き「母の声がしたと思ったら、今までより余計に涙があふれてきた。」
安岡優「・・・っく・・・っく・・・まだ、死にたくないのにぃ・・・で・・・でも、分かっちゃうんだもん・・・自分が・・・死ぬって・・・」
ト書き「誰かがいるわけでもないのに、声に出してみる優。」
安岡優「いやだよぉ・・・みんなと離れたくないぃ・・・ずっと一緒にいたいのにぃ・・・でも・・・私、後そんなに生きられない気がする・・・なんでぇ・・・」
ト書き「誰もいない病室で、優は大声をあげて泣いた。」
安岡優「うわぁぁぁぁああああああああああああああっ!!!!」
ト書き「心臓の音が、耳の中でやけに響いて聞こえる。」
ゴスペラーズレディース「どうしたのっ!?」
ト書き「安岡の叫び声を聴いて、看護婦…もといレディースが病室へと入ってきた。」
安岡優「えぐっ…えぐぅ…かんご…ふ…さん…。」
ゴスペラーズレディース「ちょっと待って、今タオル取ってくるから。」
ト書き「十数秒後、看護婦は蒸しタオルを手に、安岡の元へと戻った。」
ゴスペラーズレディース「はい、深呼吸して。息して脳に酸素送って…落ち着いて。ね?」
ト書き「泣き顔のまま、安岡は頷いた。」
ゴスペラーズレディース「よし、優ちゃんは笑顔がイチバンなんだから。泣いてたら美人が台無しだもの。」
安岡優「それって……ボクは、泣き落しが出来ないってコト?」
ゴスペラーズレディース「今は泣き落しする時間じゃないでしょう?」
ト書き「泣き止んだ安岡を見て、レディースは笑みを浮べた。」
ゴスペラーズレディース「どうしたの?私で良かったら相談に乗るけど……。」
安岡優「看護婦さん…あのね、ボクもうちょっとで死ぬんだ。」
ト書き「レディースの笑みが、一瞬こわばる。」
ゴスペラーズレディース「先生が…そう仰ったの?」
安岡優「うぅん、そういう気がするんだ。よくゆーでしょ?『どれだけヤバいのかは患者自身が良く知ってる』って。」
ト書き「だから、と安岡は続ける。」
安岡優「すご…っく…こ、わ…い。」
ト書き「安岡の声に嗚咽が混じった。」
ゴスペラーズレディース「優ちゃん…。」
ト書き「レディースが、しばし考えた末に、出した行動は。」
ゴスペラーズレディース「ちょっと、こっちに頭かして。」
安岡優「ふにゃ…?」
ト書き「タオルで目元を拭いていた安岡の左側頭部に柔らかい感触が伝わる。」
安岡優「(…………これ…わ…。」
ゴスペラーズレディース「不安になったら、好きな人の胸元にでも飛び込んでいって、安心させて貰いなさい。私じゃ力不足だから何とも言えないけど……でも先生方とかはおっぱい無いからなぁ…。」
安岡優「あっ、あのぉっ…かんごふさぁん?」
ト書き「最後の方など、声が裏返ってしまっている。」
ゴスペラーズレディース「ま、その辺は仕方がないから。ちょっとでも、優ちゃんの不安が薄らぐなら……。」
ト書き「自分の胸部に安岡の頭を埋めさせ、レディースはよしよし、と撫でた。」
マネージャー竹内「あっ…あなた方なにやってるんですかぁっ!!」
ゴスペラーズレディース「あら、竹内さん。」
ト書き「更に、安岡の身体を引き寄せて、レディースはしゃあしゃあと答えた。」
ゴスペラーズレディース「おはよ〜ございまーすぅ。」
マネージャー竹内「変な発音で挨拶しないっ、患者に何やってるんだっ!」
ゴスペラーズレディース「安岡さんがこれからの治療に不安がっていたので…話し相手になってましたの。」
ト書き「安岡の腕がわたわた動き、レディースの両肩をばしばし叩いた。」
安岡優「ぷはぁ……くるひぃいい………。」
マネージャー竹内「とにかく、用が済んだら仕事に戻りなさいっ。」
ト書き「荒々しく竹内は出ていった。」
ゴスペラーズレディース「やって欲しいなら言えばイイのに…やるとは限らないケド。」
安岡優「看護婦さーん………。」
ト書き「泣く所ではなくなった安岡が、遠い目をして安岡は」
効果音「すぱーんっ」
ナレーション「何やってんだーっ<ハリセン片手」
ト書き「泣く所では無くなった安岡が、看護婦を見上げる。」
ゴスペラーズレディース「だって、こういうのはやってあげたい人にやんないとね☆」
安岡優「地が出てます…看護婦さん。」
ゴスペラーズレディース「あらっ、ごめんなさい。……先生方呼んできますね?」
安岡優「あっ…………はぁ、行っちゃった。」
ト書き「レディースの背中を見送り、安岡は溜め息をついた。」
安岡優「こんな時に逢いたくないよぉ…。」
ト書き「優は小さな小さな声で呟いた。」
安岡優「・・・・・・・・・。」
効果音「コンコン」
安岡優「ひゃあっ!」
村上てつや「んだよっ!驚かなくても…」
北山陽一「そうですよ・・・僕たちは怪獣ですか?」
安岡優「で・・・でもぉ。」
村上てつや「・・・お?どうした、お嬢。目が腫れてるぜ?」
安岡優「えっ?!・・・あの、それはぁ・・・」
北山陽一「どうしました?怖い夢でも見ましたか?」
安岡優「いや・・・そういう訳じゃないんだけどぉ・・・」
ト書き「2人の親切が、今の優には一番苦しかった。」
村上てつや「なんなら、俺が添い寝してやってもいいんだぜ♪」
北山陽一「寝言は寝てる時だけ言ってください。」
安岡優「・・・・・・。」
村上てつや「どうした黙り込んで?」
北山陽一「何か不安なことでも?」
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