-ゴスドラマ過去ログ:7601-7700-
安岡優「ごめん……わかって、る、から……もう……ありがとう……」
ト書き「浮べた笑みは、やや寂しげなものとなって二人の目に映った。」
村上てつや「お嬢?」
安岡優「村上センセも北山センセも…お兄ちゃんもカオルも、今ままでありがと。」
村上てつや「なんで…いきなり、そんな事言い出すんだ?それに今、あの二人はここに居ないぞ?」
ト書き「安岡の言葉に、村上が目に見えて慌て始める。」
安岡優「うん、伝えられなかったのが心残りかなぁ……。」
ト書き「冷えたタオルを置いて、安岡は呟いた。」
北山陽一「(っ…血圧が…異常に低い…。」
ト書き「北山は、無菌室を飛び出し酒井と黒沢がいると思われる場所へ走った」
安岡優「村上先生はいつも『どこ行きたい』とか『なに食べたい』とか聴いてくれたよね。」
村上てつや「……あぁ。」
ト書き「結局、一つしか叶わなかった。」
安岡優「それに…窓から入ってくる時、凄く嬉しかったんだよ?」
村上てつや「俺しか使わねぇからな…出入り口としてなんて。」
効果音「がたーんっ」
黒沢カオル「優っ」
酒井雄二「優ぁっ!」
ト書き「勢い良く、3人が駆け込んできた。」
安岡優「あ……」
黒沢カオル「分かるか?優。カオルだよ…」
酒井雄二「優…俺は分かるか??!」
安岡優「うん…カオルも、お兄ちゃんも…北山先生も、村上先生も…みんな…」
ト書き「安岡はゆっくり瞬きをした。」
安岡優「みんなわかるよぉ…私には、みんなが見えるよ…。」
黒沢カオル「ゆ・・・優・・・。」
安岡優「カオルはいつでも励ましてくれたよね…ずっと…嬉しかったよ?」
黒沢カオル「あぁ……」
安岡優「お兄ちゃんとゲーム…一緒に出来なかったね?でも、楽しい話してくれたよね?」
酒井雄二「ナニ言ってんだよ、ゲーム良くなったらよろうぜ!なぁ。」
安岡優「う…ん。。ありがとう…」
北山陽一「(ヤバイ血圧がドンドン下がっていってる…このままじゃ本当に…)」
安岡優「北山…せんせぇ?」
北山陽一「…優ちゃん…もういいよ…。」
安岡優「先生は、優しくてでも時々厳しくて…それが嬉しかった。」
村上てつや「…お嬢…もういいから、しゃべるな…。」
安岡優「…み…んな…私の大切な人…大好きな人…本当に…」
ト書き「静かに涙を流しながら、安岡は精一杯の笑顔を見せた。」
安岡優「ホ…ン…ト…ウ…に・・・あ・り・が・と・う・・・。。。」
黒沢カオル「優…嫌だ…こんなの嫌だぁ!!」
ト書き「黒沢は安岡の手を握り締めた。」
酒井雄二「こんな…こんなのアリかよ…なぁ、優。」
村上てつや「…心拍数が…このままだと本当に…」
北山陽一「村上先生!!」
ト書き「北山は今まで出した事のない大声を出した。」
村上てつや「(俺だって優を…救いたい…けど、もう遅いんだよ…)」
ト書き「村上は目で北山にそう訴えた。」
安岡優「…ふぁっ…」
ト書き「安岡は最後の力を振り絞った。」
安岡優「うっ…生まれ変わっても…みんなに…会いたい……みんなと…大好きだからぁ…」
効果音「ピー―――(心停止の音)」
ゴスペラーズ「ゆ…優っっっっ!!!!!!!!!!」
北山陽一「…こんな…こんな事って…」
ト書き「北山は眼鏡を床に投げつけ、壁を思いっきり殴った。」
村上てつや「お嬢…お前は最後まで……心配させんなよ!!」
ト書き「村上は下を向き涙を流し、動かなかった。」
酒井雄二「もう1回呼んでくれよ…雄二にぃちゃん…って…」
黒沢カオル「…なんでだよ…神様のバカ…なんで…優を…連れてくなんて…」
ト書き「何も言えなかった。安岡は涙を流し最後まで笑顔を絶やさなかった。」
ゴスペラーズ「………。」
ナレーション「愛する人を無くした時、4人は自分も見失ってしまいそうになった。」
効果音「ゴーン。」
ト書き「聴こえない音が、背後で鳴り響く。」
北山陽一「お父さんに…連絡を、してきます……。」
ト書き「壊れたフレームを手に、北山は無菌室を出ていった。」
村上てつや「っく……ぁあ……。」
酒井雄二「うぅ………。」
黒沢カオル「……っくぅ……。」
ト書き「ナースステーション内。」
北山陽一「もしもし……村上…総合病院ですが…?」
平見文生「北山先生…、優は…そちらから居なくなってませんよね?」
北山陽一「は…と、申しますと…?」
平見文生「優の部屋から…物音が聴こえて…、行ってみたら窓越しに」
ト書き「平見氏の声は、動揺を隠すように震えていた。」
平見文生「優の姿が見えて…こっちを見て笑ったんです。」
北山陽一「お父さん…。」
平見文生「外に出たら……そこには優が居なくて、朱鷺がいました。」
ト書き「思いもよらなかった単語に、北山は不意を突かれた。」
北山陽一「トキ…ですか?」
平見文生「はい…綺麗な…羽色でした。」
ト書き「北山は、平見氏に安岡がこの世を去った事を伝えた。」
平見文生「もしかして…その朱鷺は、優の魂かも知れませんね…。」
北山陽一「……そうですね、俺もその朱鷺を見たかったです。」
ト書き「簡単な挨拶とともに、北山は受話器を置いた。」
ナレーション「再び、北山は無菌室へ戻った。」
ト書き「無菌室は重い静寂に包まれていた。」
村上てつや「……………はぁ。」
北山陽一「……」
ト書き「沈黙になる二人。」
村上てつや「・・・・・・なんか喋れよ。」
北山陽一「・・・・・・なら。」
村上てつや「?」
北山陽一「・・・っく・・・こんな事なら、嫌われてでもいいから・・・もっと・・・そばにいたかっ・・・もっと・・・一度でいいか・・・ら・・・抱きしめてあげたかっ・・・た。」
ト書き「北山の目からは、止めどもなく涙があふれている。」
村上てつや「・・・・・・けっ。」
効果音「がちゃ。」
ト書き「黒澤が、霊安室から帰ってきた。」
黒沢カオル「・・・っく・・・っく・・・優ぁ・・・」
村上てつや「・・・なんだよぉ・・・どいつもこいつも泣きやがってっ・・・」
マネージャー竹内「そういって村上の目にも涙がたまり、今にもこぼれそうだった。」
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