-ゴスドラマ過去ログ:8501-8600-
北山陽一「全速力でどれくらい走れます?」
酒井雄二「……人多いしなぁ、向こうも走れないと思うがこっちも同じ条件だし。」
北山陽一「いや、あそこまで行ければ、それで。」
ト書き「北山が指したのは路線バスの停留所。」
酒井雄二「ははぁ…うっし、目標時間は何秒?」
北山陽一「行けるトコまで頑張りましょっか。」
黒沢カオル「えっ…あ、あの?」
ト書き「黒沢を先に行かせ、酒井と北山が黒沢の背後を護るように駆け出した。」
北山陽一「停まってるバスに乗っちゃって下さいっ!」
ト書き「北山が叫び、3人がバスへ飛び乗る。」
村上てつや「あ〜あ……畜生っ。ヤス、逃げられた。」
安岡優「嘘ぉっ、バスで逃げたの?」
村上てつや「ああ、人の足で文明の利器にかなうとは思わねーから追い掛けねーけどよ。」
安岡優「…依頼したのって、『キタヤマヨウイチ』と『サカイユウジ』なんだよね?」
村上てつや「ああ。」
安岡優「てっちゃん、俺がバスの方追うから、ここら辺もうちょっと探索しててっ。」
村上てつや「あ、おいっ。」
ト書き「…安岡は、身を翻して原チャリを置いてある場所へと走った。」
村上てつや「なんだよ、一体…。」
ト書き「再び、路線バス停留所。」
酒井雄二「まけた…かな?」
北山陽一「さぁ?どうでしょうね。」
黒沢カオル「凄い事考えるんですね…二人とも。」
酒井雄二「カオル君〜、あんたのためなんだよぉ!!?」
ト書き「三人はいったんバスに乗ると、そのまま中を突っ切ってその場所で降りた。村上は乗る所しか見ていなかった為気付いていない。」
北山陽一「運転手さん嫌そうな表情でしたねぇ。」
酒井雄二「降りるのは見られてなかったみたいだぁね…うっし、改めて移動しますか。」
黒沢カオル「えと・・・」
北山陽一「目的地までは距離がかなりありますね。電車を使いますか?」
酒井雄二「それを決める前にとっととずらかろ。さっきの連中、二手に分かれたようだし。」
北山陽一「そうですね。見つかると撒いた意味がなくなりますし。」
ト書き「足早にその場を去る3人。」
効果音「着メロ『太陽に吠えろ』のテーマ。」
村上てつや「はい、もしもし?」
安岡優「てつ?僕、安岡だけど。」
村上てつや「…ああ、何、見つかったの?」
安岡優「今からそっち戻るね?」
村上てつや「戻るねって……バスはどうしたんだよ。」
安岡優「いや、次のバス停でいきなり人が沢山降りてさぁ…見る限り明らかに乗ってないし、降りてないし。分かれて正解だったよ。」
ト書き「そこで、携帯電話はぶつりと切れた。」
村上てつや「こっちに居るってかぁ?」
ト書き「電話をしまい、村上は周囲を見渡す。」
村上てつや「…見つかりそうもねぇな、こりゃあ。」
ト書き「互いに無関心な群集は、それに紛れて逃げる手段には恰好な道具となっていた。」
村上てつや「考えられる移動手段は……。」
ト書き「顎を摘んで、村上は考え始めた。」
酒井雄二「公共機関で記録が残らないのは…やっぱり電車か?」
北山陽一「グリーン車とかは以ての他ですね。」
黒沢カオル「あの…離してもらえますか。」
ト書き「黒沢を挟んで、話す二人の手はそれぞれ黒沢の服の裾を掴んでいる。」
黒沢カオル「何だか迷子になるからって紐つけられてるみたいで嫌なんだけど。」
北山陽一「我慢して下さいね?少なくとも後ろから襟首掴まれて誘拐されるよりゃマシですから。」
酒井雄二「それとも、ホントに手首で紐結ぶ?」
黒沢カオル「ふぅ…ゴメンナサイ、現状維持でお願いします。」
ト書き「帽子を被った黒沢の頭を、ぽふぽふと北山が撫でる。」
北山陽一「分かって頂けて、嬉しい限りです。」
酒井雄二「さて、急ぎますか。」
ナレーション「やや先を歩いていた酒井が、細い路地へと曲がる。」
北山陽一「駅はこっちじゃないでしょう?」
酒井雄二「今日はこっちを通りたい気分なんだよ。」
黒沢カオル「…うわぁ、猫がいっぱい。」
ト書き「酒井は猫に手を振りながら細い路地を歩いてゆく。」
北山陽一「なにやってるんですか。」
酒井雄二「いや、皆に来れなくなるからねって…。」
黒沢カオル「猫と話せるのっ?」
酒井雄二「いや、言語は通じないけど…気難しい人よりは付き合い易いよ。」
ト書き「その時、酒井の頭部へ猫が落下して来た。」
酒井雄二「わたっ」
北山陽一「成る程、付き合い易いですね。」
ナレーション「ごろにゃ〜〜〜ん・・・(せっかくの出番だと思ったのに・・・なんで、よりにもよって猫?!)」
酒井雄二「この猫は…また別もんだ。」
効果音「ボフッ!!」
ナレーション「やっぱりこうなるのねぇ〜〜〜〜〜!!!」
ト書き「酒井は猫をつかんで放り投げた。<ドンマイ!ナレーションの猫さん>」
黒沢カオル「キャハハッ! くすぐったいよぉ〜。」
酒井雄二「かわいいだろぅ、猫はいいぞぉ〜自由だもんなぁ〜。」
ト書き「そう言って酒井は黒沢の頭を”ポンポン”と軽く叩いた。」
北山陽一「さっ、行きますよ。」
黒沢カオル「ぅ…んっ・…。…自由かぁ…私も猫になりたかったなぁ…。」
酒井雄二「…んんっ?なんか言ったかぁ??」
ト書き「黒沢は”ハッ”と思い、必死に首を横に振った。」
酒井雄二「そっかぁ〜なら良いや。 じゃ〜なぁ!猫ちゃん達!」
ト書き「酒井は猫に手を振りながらさっさと歩いていった。」
北山陽一「…自爆するのはやめましょう、カオル君…。」
黒沢カオル「……。」
ト書き「黒沢は上目遣いで北山を見て、恥ずかしそうに頬をかいた。」
効果音「心拍数の上がる音。」
北山陽一「(な、んだこれ…?」
黒沢カオル「北山さん?」
北山陽一「は、はいぃ?」
黒沢カオル「あ、いえ…顔が赤いですよ?熱があるんじゃないですか?」
北山陽一「……大丈夫です。」
ト書き「服の胸元を掴み、北山は答えた。」
北山陽一「さ、俺達も行かないと。酒井さんが依頼者を置いて先に行っちゃいましたから。」
黒沢カオル「・・・本当だぁ。」
ト書き「黒沢が、酒井の後を追い、先へ進む。」
北山陽一「(俺の身体どうなったんだろう・・・?」
ト書き「北山は首を傾げながら、黒沢と酒井の後を追った。」
酒井雄二「何だ?どうかしたのか?」
北山陽一「いや、う〜ん……もし心臓とかの疾患で俺が倒れたら黒沢さんの事頼みますね?」
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