-ゴスドラマ過去ログ:8601-8700-
酒井雄二「なんだ唐突に。」
北山陽一「もしも、もーしーもの話ですからね?」
酒井雄二「………自分の死期が判るのは、幸福だと思うか」
ト書き「とっくりと考えて、酒井は北山の方を見た。」
酒井雄二「戦場において、楽になりたいという精神はいらない。その精神を持ってる奴も必要とされない。」
北山陽一「何が言いたいんです。」
酒井雄二「俺が知ってる、戦場に於いての心得だ。勝てなくても負けないんだ。」
北山陽一「勝てなくても、負けない…ねぇ。」
酒井雄二「そうだ!! さっ、行くぞぉ!!うん。」
ト書き「そう言うと酒井はまたとっとと歩き始めた。」
北山陽一「(不思議な人だよなぁ、酒井さんって…。)」
ト書き「とっくり、北山は考えて笑みを浮かべる。」
酒井雄二「なぁ、カオル君。一つ尋ねたいんだが…その、急ぐ用事なのか?」
黒沢カオル「…どうなんだろ。俺が移動するのは、暗殺を逃れる為だから。」
酒井雄二「暗殺ですか…久々に聴きますなぁ、その単語。」
北山陽一「移動すると…殺されずに済む保証は?」
黒沢カオル「世話になる人次第。」
酒井雄二「駄目じゃないですか…そりぇは。」
黒沢カオル「俺個人とは仲良いんだけど、何故かうちの親とは仲が最悪なんだよね。相性とかあるのかな?」
ト書き「首を傾げて、黒沢は言った。」
酒井雄二「仲が良いなら結構ですな。さ、て手段の選択しましょうか?」
北山陽一「……レンタカーは、どうですか。」
黒沢カオル「レンタカー?」
北山陽一「カオル君を殺そうとしてる連中がどれだけ権力使えるか判りませんけど。飛行機は避けた方が良いですね。」
酒井雄二「そのココロは?」
北山陽一「手段を選ばないなら」
ト書き「頭を傾げて、北山は答える。」
北山陽一「遠隔操作の爆弾積んで、目標が乗ったらドカーンって…ね。」
酒井雄二「手段選ばないなら」
ト書き「手を顎へ持っていき、酒井は考えた。」
酒井雄二「「だめだ、だめだ!いくら考えてもらちがあかないぜ。」
北山陽一「どうします?早めに行くなら罠にはまる事を踏まえて行かなきゃダメですけど。」
酒井雄二「どうする?カオル君。俺は君を護って移動する事を依頼されたけど、途中途中進路を決める事まで言われてないからさ。」
ト書き「「自信ありげな笑みをうかべ黒沢は言った。」」
黒沢カオル「お台場…!」
酒井雄二「お台場ってアレかぁ?今若い女の子達に人気のヴィーナス何とかってある所でぇ、」
北山陽一「ヴィーナスフォート。」
酒井雄二「フジテレビがあってぇ、異様にカップルが多くてぇ、海が汚いのに夏になると海水浴する奴が居るって言う、あのお台場カァ?!」
北山陽一「…長いですよ…しかも知ってる事ぐらいしか言ってないし…。」
酒井雄二「なぁ〜んかあそこに行くと、カップルの間を分け入りたくなるんだよねぇ〜。うんうん。」
北山陽一「うんうん、それは同感ですね。」
ト書き「酒井と北山は首を縦に振って頷いた。」
黒沢カオル「そこまで僕は知らないけど…。ともかくそこみたいだよ。」
北山陽一「では、カオル君に聞いたので行きますかね。手段は…。」
酒井雄二「車が1番安全だなぁ、今のところ。」
北山陽一「さっきレンタカーと言いましたが、よくよく考えてみると残りますからねぇ…名前とか。」
酒井雄二「よし!俺が人肌脱ぎますかぁ!!チョット付いて来なさい。」
ト書き「酒井はとあるマンションへ向かった。」
酒井雄二「うい〜っす、酒井雄二です。」
DJバリ"K"〜ん「あぅっ!どうしたぁ、なんか用かぁ?」
黒沢カオル「…。(すっ、すごい頭の人…酒井さんのお友達なの?)」
北山陽一「…。(猫の次はアフロ男かよ…。友達が本当に居ないんだな。)」
酒井雄二「バリさん、車貸して。」
DJバリ"K"〜ん「あぁ、車庫にあるから持ってって良いぞ。鍵は付いたままだ。」
酒井雄二「どうもっ!いつか返すわ。ほんじゃ、また!」
北山陽一「…あ、失礼します…。」
黒沢カオル「……。」
ト書き「酒井はとっとと車庫へ向かった。」
酒井雄二「シルバーのワゴン車か、まっ、これならココで寝る事も出来るし良いな。」
北山陽一「良いんですかぁ…本当に知りませんよ。」
黒沢カオル「い、いつか返すってそんなので大丈夫なの?」
北山陽一「予定は未定っていう言葉もありますしねぇ・・・。」
ト書き「車のキーを指先でくるくる回している酒井を横目に二人はこっそりと言い合った。」
北山陽一「さっきの話のことだけど考えておいてね。」
黒沢カオル「・・・うん。」
ト書き「酒井がロックを解除している合間に二人は会話を交わす。」
酒井雄二「ガソリン…は大丈夫だなっ。」
ト書き「二人が乗り込むのを確認し」
ナレーション「エンジンを始動させる酒井さん…。」
酒井雄二「のわぁおっ」
北山陽一「な、ナレーション?」
黒沢カオル「あはは〜、ナレーションさん、なんか『猫又』状態だぁ。」
ト書き「車内にこつ然と出現したナレーションに、驚きを隠せない二人と面白がっている一名。」
ナレーション「ネコマタって…やだぁっ、これじゃどこかのイメクラ嬢だわぁ!?」
酒井雄二「なんで君がこれに乗ってるのさ。」
北山陽一「尻尾は邪魔なので、そっちに寄せて下さい。」
ト書き「後部座席から覗き込むナレーションを」
酒井雄二「降りろ。今すぐ降りろ。5秒以内に降りろ。」
ナレーション「い、いやぁ〜〜〜〜んっ!」
ト書き「酒井は首根っこを掴んで放り出した。」
酒井雄二「それじゃあ、気を取り直して・・・」
北山陽一「行きますかっ!」
ナレーション「そして車はいきおいよく走り出した。」
効果音「ぶお〜ぉん」
ト書き「その頃3人を見失った村上てつやと安岡優は…。」
安岡優「どうするよ、てつ。捲かれちゃったよ。」
村上てつや「(ウザそうに)わあってるよ。しかしいきなり俺達を捲くとは向こうが雇った奴もバカじゃねーな。」
安岡優「サカイユウジとキタヤマヨウイチか。わりと名前は有名みたいだよ。」
村上てつや「ったく俺らを置いといて3人だけでサクサク話を進めやがって(ブツブツ)」
安岡優「まあまあ。まだドラマは始まったばかりだしね。いきなり俺達が黒沢さん捕まえたら終わっちゃうよ?」
ト書き「置いてけぼりを食らって面白くない村上をなだめる安岡。」
村上てつや「ま、それもそうだな(ニヤリ)。最後のクライマックスじゃこれでもかってくらい暴れてやる。」
安岡優「じゃあドラマに戻りますか。これからどうする?」
村上てつや「ひとまず黒沢カオルの居場所を探すのが先決だ。バスに乗ってなかったんだったら、遠くへ移動したと見せかけてこの辺からあんまり動いてないか、電車か車で移動したんだろうな。」
安岡優「安:移動されてたらアウトだよ。それに車だったら…。」
村上てつや「とりあえず二手に分かれよう。俺はこの辺を中心にもう少し探してみる。」
安岡優「オレは?」
村上てつや「お前はいったんお台場のアジトに戻って「キタヤマヨウイチ」と「サカイユウジ」について調査するんだ。何か分かるかもしれないからな。」
安岡優「了解。」
ト書き「人込みへと消えていく安岡の背中を見送って、村上はゆっくりとタバコの煙を吐いた。」
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