-ゴスドラマ過去ログ:8701-8800- |
村上てつや「こんな人込みで簡単に見つかったらラッキーとしか言いようがねえな。」 ト書き「一方こちらはお台場へと快走を続ける酒井の車の中。」 ナレーション「うわー!気持ち良いですねー!」 酒井雄二「…ったく。のんきなのはナレーションだけだよ!!」 北山陽一「そうでもないみたいですよ f(^^);;」 黒沢カオル「海っていいねーーー。>」 酒井雄二「………。」 北山陽一「まあいいじゃないですか、今は安心してるんじゃないですかね、カオル君も。」 酒井雄二「少しは信頼してくれてるってことか。身の安全を確保するのが俺達の仕事だからな。」 北山陽一「金で雇われた馬の骨を信用してくれて、有り難い限りです。」 ナレーション「開けていた助手席の窓を閉めて、北山は呟いた。」 酒井雄二「そういう言い方ってないだろ。」 北山陽一「ああ…すいません。でも仕事の上で信頼は大事ですよね。」 酒井雄二「当たり前、その為に『食事』に連れて行ったんだからな。」 ト書き「北山が、反射的にハンドルを握る酒井を見た。」 北山陽一「あれは…計算だったんですか?」 酒井雄二「五分五分、かな。多少別腹が空いていたのも事実だし、打ち解ける為にお茶会開く軍隊もあるとかいう話を聴いた事があったから。」 ト書き「北山の方は見ずに、酒井は相変わらずハンドルやアクセルを操作している。」 酒井雄二「でも、計算って言葉は好きじゃないな…謀略とでも言ってくれ。」 ト書き「口元が、不敵に微笑んだ。」 北山陽一「はぁ・・・。」 酒井雄二「どーしたんだ?ため息なんてついて。」 北山陽一「いや、ただ・・・酒井さんさんに頼りっぱなしのような気がして・・・」 酒井雄二「俺が?頼られてる?」 ト書き「車が赤信号に引っ掛かり停止したので、酒井は僅かに首を曲げて北山を見た。」 北山陽一「ええ。」 酒井雄二「そりゃあ、勘弁してくれ。俺は手助けはするつもりだけどさ。」 ト書き「隣の車が発進したので、前方を見るが、右折車のみ進行出来る信号が点灯しただけだった。」 酒井雄二「ま〜砂吐き話しで悪いけど、俺はね現状を大変だとは思ってない、これより大変な事体験してるから。」 北山陽一「俺も…そ〜です。」 ト書き「後ろで、黒沢とナレーションが何やら話しているようだったが、二人は気にせずに続ける。」 酒井雄二「手助けするってのは、自分の能力でどうにかするって事だよな?」 北山陽一「はい・・・」 酒井雄二「頼られるってのは、そいつの事支持しなきゃならん訳でしょ?」 ト書き「北山は、形の良い顎を指で摘み、頷いた。」 酒井雄二「少しなら良いけど、全面的に面倒見るのは嫌だもん俺。多少関わって、それで終わるのが一番。」 北山陽一「(」 酒井雄二「ん?何だって?」 ト書き「北山の言葉を聴こうとした酒井だったが、既に信号は青に変わっていたらしく、後ろからクラクションを鳴らされてしまった。」 北山陽一「(酒井さんは確かに頭が切れる。だけど俺には俺のやり方があるんだ。落ち込むことなんてないんだよな。)」 ト書き「車は流れに乗って、ずんどこ進む。」 安岡優「『キタヤマ』………喜多山は、違うかぁ………。」 ト書き「パソコンの画面に向き合って、情報収集をしている安岡が独り言を呟いた。」 安岡優「秘密へーきに頼んないと出て来てくれないのかな…お姫様は。」 ト書き「悪戯っぽく猫のように微笑む安岡は、パソコンと接続していた一本のケーブルを引き抜いた。」 安岡優「ど〜こだっけ、あ、あったあった。」 ナレーション「目的のジャックに接続して、安岡は『秘密へーき』の電源を入れる。」 安岡優「鬼が出るか蛇が出るか…薮を突ついてみましょーか?」 ト書き「巨大な容量の情報検索システムを前に、安岡はキーボードを操作し始めた。」 効果音「カチャカチャ・・・カチャ・・・」 安岡優「うーにー……なんでぇ?」 ト書き「眉間にしわを寄せる安岡。そして、何かに気づいたようにいたずらっぽく笑った。」 安岡優「ふふん。そーゆーことかぁ。」 ト書き「膨大なヒット数を前にしながらも安岡は余裕綽々でパソコンの操作を続ける。」 酒井雄二「なあ、見てみろよ。ほらあそこ。」 北山陽一「はいはい?」 ナレーション「この車の中の人間達は追われていることを忘れてはいないだろうか。この穏やかな雰囲気を作るのもプロの仕事なのだろうか。」 ト書き「自分が乱入してほのぼのモードを作ったことを完全に棚に上げているナレーション。」 酒井雄二「つか、何でナレーションもここにいるの?」 ナレーション「いつでもどこでもあなたの所にやってきます。これぞプロ!!さて本題に戻りましょうか。」 北山陽一「ヤな『プロ』…って、プロって言えるのか?これ。」 黒沢カオル「あの……北山さん?酒井さん?」 酒井雄二「どうした?車酔いしたか?」 黒沢カオル「いや…そうじゃなくて…」 ト書き「黒沢は手を動かしながら下を向いてしまった。」 北山陽一「どうしました?話してください。」 黒沢カオル「僕って…僕って、生きてる価値あるのかなぁ?生きていて良いのかなぁ。」 ト書き「赤信号で車が止まり、酒井と北山は後ろの黒沢を見た。」 黒沢カオル「僕何か悪い事したのかなぁ…僕が死ねばみんな楽になるのかなぁ…なんで生まれてきたのかなぁ…。」 北山陽一「…カオル…くん…。」 黒沢カオル「…僕ね…ヒクッ…もう…ヒクッ…」 酒井雄二「甘えるな…。」 ト書き「泣いている黒沢に向かって酒井はちいさな声で言った。」 酒井雄二「生きてる価値なんて自分で探すんだよ。良いか悪いかは神様が決める。カオル君が今死んだらなにが出来るんだ?お前に何が出来るんだっ!!」 ト書き「酒井は始めて怒鳴り声上げ、そして車を発進させた。」 黒沢カオル「ヒクッ…ヒクッ…ぅぅっ……」 北山陽一「(さっきまであんなにはしゃいでいたのに…。)」 ト書き「境は無言で車を進め、黒沢は後ろで泣くのをグッと堪えていた。」 ナレーション「境じゃなくて、酒井ね、酒井さんよ。」 酒井雄二「カオル君、俺だってね、生きてる理由がわかんなくなっちまう事あるんだよ。でもそういう時は、「俺が今ここにいるってことが何よりの理由なんだ」って考える事にしてるんだ。無駄な人間なんて、この世にはいないはずなんだよ。」 ト書き「黒沢が口元を押さえながらバックミラーに映る酒井を見た。」 酒井雄二「生きてる理由は、自分で決める。…そうだろう?」 北山陽一「え〜…カオル君、君に質問しても良いかな?」 ト書き「酒井と黒沢のやりとりを聴いていた北山が顔を上げる。」 黒沢カオル「…はい。」 北山陽一「別に、身構えなくても結構ですから。とって喰う訳でも…殺す訳でもないです。」 ト書き「とりあえず、相手が落ち着かない事にはどうしようもないので北山は黒沢が泣き止むまで待った。」 黒沢カオル「質問って、ナニ?」 北山陽一「君は」 ト書き「後部座席で、帽子の下から覗く瞳が北山を注視している。」 北山陽一「誰かに認めてもらわなきゃ、生きていけない?」 ト書き「なんと答えて良いか分からず戸惑っている黒沢に、北山は更に続けた。」 北山陽一「俺はね…元医者だって言ったけど、軍医みたいな事をしてただけなんだ。本業は違うけど。」 酒井雄二「…それが?」 ト書き「車をいったん何処かの駐車場に入れて、エンジンを切った。」 北山陽一「人が一人死んだから、国の端端まで生活が楽になるって訳じゃないよ。それは嫌って程見てきたから自信持って言える」 黒沢カオル「それって……。」 北山陽一「自分の事を分かってくれる人間が居ないと、生きてる価値が無いなら…ちょっとの間、俺が君の生きる価値ってやつを作ってあげるよ。」 黒沢カオル「僕の・・・生きる・・価値・・・?」 北山陽一「目的地に移動するまでだけど、それでも良い?」 |
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