-ゴスドラマ過去ログ:9101-9200-
ト書き「何の感情も含ませずに、酒井は行った。」
北山陽一「はぁ?」
酒井雄二「初対面の人間を呼び捨てにするよーな人間でした。家訓に反するんで逃げてきましたけど。」
ト書き「どう云う家訓だ、という言葉は飲み込んで北山は酒井を見た。」
酒井雄二「それより、誰も近付いてこなかった?不審な人物。」
北山陽一「いえ・・・。」
酒井雄二「車はいっぱい死角が有るからねぇ、気をつけんとさ。」
北山陽一「はぁ…。」
ト書き「車が段差で揺れた時、黒沢が僅かに身じろぎする。」
北山陽一「起こしちゃいますね・・・カオル『君」
酒井雄二「これでも普段の1割り増しで安全運転なんだけど」
北山陽一「…そうですか。」
ト書き「酒井無言のまま車を加速させる。」
北山陽一「酒井さん?今度は2割増しですか??」
酒井雄二「…(またいつ見つかるか分らないでも一体……。」
北山陽一「どうしたんですか、変ですよ。何か隠してません?」
効果音「キキー―――――――――ッッッッ!!!!!」
ト書き「車が急停止し北山は窓に頭をぶつけ、黒沢はシートから落ちた。」
北山陽一「なんですかいきなり!いくらなんでも怒りますよ。」
酒井雄二「目的はなんなんだっ、カオルちゃんは何者なんだ!」
北山陽一「酒井さんいい加減にして下さい!何なんですか?!」
ト書き「酒井ふと我に返り、静かに下を向いた。」
酒井雄二「カオル君の事・・・『お嬢』って呼んでたんだよ、その、村上ってやつが。」
北山陽一「お嬢?お嬢様ってことですか?」
酒井雄二「前回と一緒か?!」
北山陽一「いったい、何の話ですか!今は関係ないでぇしょっ!」
酒井雄二「あ、いや・・・うむ。」
北山陽一「酒井さん、あなたは何が知りたいんですか。」
酒井雄二「ハッキリ聞こう。 カオル君、は男じゃないですねっ。」
北山陽一「それは……。」
黒沢カオル「そうだよ…私は女の。ごめんなさい黙ってて。」
北山陽一「カオル…ちゃん…。」
ト書き「北山は黒沢を見つめた。」
酒井雄二「気が付いてなかった訳じゃないんだ。只…言うのが怖くて、俺。」
黒沢カオル「話さなかった私も悪いの。でも、黙ってろってみんなに言われたから。」
酒井雄二「…敵を欺くにはまず味方からって奴か…。」
ト書き「酒井は遠くを見つめた。」
黒沢カオル「…どこから、気が付いてた?」
酒井雄二「飯喰いに行って…口紅拭ってた時。」
北山陽一「なんですか、そりゃあ。」
黒沢カオル「癖になっちゃってるんだ?カップの口紅拭うの。」
北山陽一「はい?」
酒井雄二「はい…まぁ今の処、こういう動作するのは俺の中じゃあ『女性』だけなんで。短絡的っちゃあ短絡的ですけども。」
黒沢カオル「駄目だなぁ、ちゃんと男の格好してるのに動作でばれちゃうんだから。」
ト書き「そこで、黒沢は言葉を切った。」
北山陽一「………っ?」
ト書き「北山が後部座席を見ると、黒沢が静かに涙を流している。」
北山陽一「カオル……君?」
黒沢カオル「………っ……ぇっ……」
北山陽一「カオル君、大丈夫?」
酒井雄二「俺たちが必ず君を守る。だから安心しろ。」
黒沢カオル「………うん」
北山陽一「でも、酒井さんは姿を確認されちゃいましたね。」
酒井雄二「いや、気休め程度だけど時間稼ぎしましたよ?」
黒沢カオル「なに・・・したの?」
ト書き「酒井は二人に先程の村上とのやり取りを説明した。」
酒井雄二「今し方、依頼人に確認取ってるんじゃないのかなぁ必死こいて。」
ト書き「くすくすとしたたかな笑みを浮かべて、酒井は言った。」
酒井雄二「だから、その間に距離稼ごう?」
北山陽一「あの、酒井さんは『村上てつや』を知ってたんですか?」
酒井雄二「え?」
北山陽一「さっき姿を確認する前に降りていったから・・・。」
酒井雄二「……北山が起きた理由と同じさ。」
黒沢カオル「あ、あの?」
ト書き「話について行けず、黒沢は二人を見た。」
酒井雄二「職業病?いや、違うか。とにかく何か危険な事に遭遇しそうになると第六感みたいなのが働くんだよ。犬みたいにね。」
北山陽一「犬みたいって・・・あの、それってちょっと違うんじゃないんですか?」
黒沢カオル「あ、あの…?」
酒井雄二「あぁ、ナニ?カオルちゃん…なんか言い難いなぁカオル君でいい?」
黒沢カオル「なんでも、お好きなように…。ところでどうしたんですか?」
酒井雄二「なにがよ?」
北山陽一「カオル君は『村上てつや』をご存知ですよね?」
黒沢カオル「昔は遊んでもらったりしていました…けど…ヤスくんとも。」
北山陽一「ヤスくん??どういう事ですか、説明してください。」
黒沢カオル「てつ兄ちゃんとヤスくんは幼なじみだったんです。」
ト書き「黒沢は涙を浮かべながら話し始めた。」
黒沢カオル「私ずっとお城の外出たことなくててつ兄ちゃんとヤスくんは」
ト書き「そういうと黒沢は頭を抱えてしまった。」
酒井雄二「オッ、オイ!?大丈夫か。」
北山陽一「無理しないで…。」
黒沢カオル「てつ兄ちゃんとヤスくんは周りの大人の人と違って特別扱いしないで、私に優しく接してくれた。」
北山陽一「その2人がまたどうしてあなたを暗殺しようと…??」
黒沢カオル「分らないの…でもあの日・…」
ナレーション「〜3年前のある夏の日〜」
黒沢カオル「わぁ〜い!私にもやっと兄弟が出来たのね♪」
村上てつや「良かったな!弟だろう、可愛いぞきっと。」
安岡優「カオルちゃん楽しみにしてたもんね!今度は4人で遊べるね。」
黒沢カオル「【あの日も仲良く3人でお話してて…】」
小林社長「てつや…君に話がある、チョット来なさい。安岡くんもだ。」
村上てつや「ハイッ! ココに居ろよカオル、すぐ戻ってくるからな。」
安岡優「また後でね、カオルちゃん!」
黒沢カオル「うん!!2人とも早く戻ってきてね♪」
ナレーション「〜元に戻る〜」
黒沢カオル「その後2人が戻ってくる事なくて、代わりに来たのは」
酒井雄二「依頼人の2人って訳だな。」
黒沢カオル「その時から私は2人から逃げるようにと佐々木と平見に…」
北山陽一「第2子が生まれた事によって2人は暗殺者に?」
ト書き「黒沢は酒井の腕を力無く掴んだ。」
黒沢カオル「2人が悪いんじゃない…全部…全部お父様が…」
酒井雄二「……。」
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