-ゴスドラマ過去ログ:9801-9900-
黒沢カオル「…(イ・イ・ナズケ…許婚…てつ兄ちゃん…やっぱり…)。」
酒井雄二「次期皇帝が未来の妻の暗殺を未来のお父さんに頼まれて…ってナンカややこし過ぎるな!?」
北山陽一「村上さんも安岡さんも自分が次期皇帝と大臣と知っているはず、許婚の事は勿論…。」
黒沢カオル「初めて知った…許婚がてつ兄ちゃんって言うのは前から知っていたけど…。」
ト書き「そういうと黒沢は1人で後ろの窓側の席に座った。」
北山陽一「僕たちに手の負えることではなくなってきましたね。」
酒井雄二「依頼された仕事の範疇を越えてる…よな。まさに。」
北山陽一「仕事受けた事、後悔してます?」
酒井雄二「いや?」
ト書き「酒井は片眉を少し上げて、答えた。」
酒井雄二「昔に戻ったみたいで、不謹慎ながら……この現状が楽しい」
安岡優「酒井さんって」
ト書き「不意に助手席に座っていた安岡が酒井へ声をかける。」
酒井雄二「ん?なんだ?」
安岡優「僕ら『軍人』だった、って事しか知らないんだけど。何やってたの?」
酒井雄二「教えられない。」
安岡優「…僕とてつの事一方的に調べてるのに、僕らにはそちらを知る権利無いワケ?」
ト書き「酒井と北山が息を呑んだ。」
安岡優「狭い空間だと、結構音が壁とかに反響して普段より聞こえる時が在るんだよ。特に……音を吸収する物が無い時はね。」
村上てつや「もうちょっとボリューム低かったら聞こえなかったんだろうが…こそこそ嗅ぎ回るのは止めてくれ。」
北山陽一「……すいません。」
ト書き「素直に謝辞を述べた北山に村上は、意外だ、とでも言いた気な表情をとった。」
安岡優「後で本格的に『自己紹介』でもする?」
酒井雄二「法に触れない程度で良いなら、水平OKですけども。」
村上てつや「法に触れるのか、お前の過去は。」
酒井雄二「多少〜なり。」
北山陽一「酒井さんが軍を抜けた直後…でしたっけ?大きな戦争が起ったのは。」
酒井雄二「ん〜〜…ぅん。俺が軍から抜けた直後にね、スパーンと物の見事に軍が内部で分裂しちゃったのさ。で、それまで膠着状態だった各国に異動しちゃって…大戦争。」
村上てつや「お前が…抗争を抑えてたのか?」
酒井雄二「…事になるんですか?俺は関係ないのに、元軍人って事だけでこの出来事引っぱり出されてさ。年寄りは疎か今の〜…20代前半の人に説教喰らう羽目になってるんですから。」
安岡優「関係無いんだって、説明しないの?」
酒井雄二「言っても聞く耳を持ちゃしないんですよ。自分がどれだけ苦労したか、話す事に精一杯でね。」
ト書き「酒井はそう言うと、視線を車の外へ向けた。」
安岡優「北山センセは?」
北山陽一「俺も話すんですか……良いでしょ。」
ト書き「北山は一回黒沢の方を見ると再び前を向いて口を開いた。」
北山陽一「俺は…この酒井さんが軍を抜けた直後に起った戦争で、軍医をやってました。知らないうちに配属されてた部署が勝手に持ち駒にしてたらしいです。」
村上てつや「本人の意志とは無関係、か。」
ト書き「北山は何も言わず頷き、更に続けた。」
北山陽一「今も昔も、偉い人が広げる戦争っておんなじです。いかにも紙の上でしか考えてないっていう…行動を取らされましたし。」
安岡優「たとえば?」
北山陽一「『食料は現地調達』とか、あと〜『湿地帯を抜けろ』とか。」
村上てつや「湿地帯抜けるくらいいいじゃん。」
北山陽一「話だけ聞くと、ね。 湿地帯にヒルとか蛇が先住してるなんて偉い人は知らない訳ですよ。それでも命令聞かなきゃ『命令無視』になるんですから。」
安岡優「辛いよねぇ、いろいろと。」
北山陽一「えぇまあ…でもそれが仕事でしたからね。」
村上てつや「それで辞めたのか?上の奴らの命令が気に食わなかったから。」
北山陽一「それも1割程度ありましたけどね…違いますよ。」
ト書き「北山は少し下を向き苦笑いした。」
北山陽一「怖かったんです、生と死の狭間をさ迷っている人々の治療をするのが…。」
村上てつや「けどよ、それが仕事だろ。助けるのが仕事じゃねぇのかよ。」
北山陽一「確かに。しかし私の意思からそむいていたんですよ、軍医は…。普通の医者と軍医は私の夢と大きく違っていました。」
酒井雄二「軍医ってのはなぁ〜って言うのかな、自分も生と死の狭間に居るわけよ…。」
北山陽一「目の前で無惨に苦しんで死んでいく人々を見ていると、自分もこうなるのかと…。」
安岡優「思うんだね…。それで怖くて仕方なかった。」
ト書き「急に黙った北山の後に続いて安岡が付け足して言った。」
村上てつや「俺はそんな事はしねぇな!」
ト書き「いきなり声を上げた村上は、北山と酒井のほうを向いた。」
村上てつや「俺は部下にそんな酷い事はさせなかったぜ。ちゃんと色々考えて策は練ったし、部下のためにちゃんとしてやった。」
北山陽一「あなたみたいな司令官が居てくれたら、良かったでしょうけれど。」
酒井雄二「こっちの国の官僚方は違うんだな…。」
安岡優「ヒドイね…2人ともツライ思いしてきたんだ。」
北山陽一「あなた達もでしょう。 あなた達の事も少し教えてくださいよ。」
村上てつや「充分だろ、お前らが調べたやつが全てだ。」
酒井雄二「データーには書いてない事が知りたい訳よ。」
北山陽一「孤児院から出てエリートになったわけ、カオル君を殺さなくてはならないわけ、シッカリとね。」
ト書き「安岡は後ろの方に座っている黒沢をふと見た。」
黒沢カオル「(スピィーすぴぃー…すぴぃー)」
北山陽一「寝ちゃいましたね…お願いします。」
安岡優「てつが8歳、僕が5歳の頃だね孤児院から皇室入りしたのは。」
村上てつや「……。」
安岡優「理由も説明されないで、それぞれ20歳になるまで猛勉強しつづけたんだ。」
北山陽一「説明なしでよく納得しましたね。」
村上てつや「『国王の言う事は絶対』って、ガキの頃から痛いほど聞いてきたからな、何も言えねぇよ。」
安岡優「てつも僕も20歳で護衛軍と情報処理・管理部に派遣されて、で年を重ねるごとに色々な部や地位に付いた訳…。」
酒井雄二「チョット待った!で、何でそういうあんた達が次期大臣と・国王に?」
村上てつや「さぁな。只、ちょうど2年前にカオルの父親に呼ばれてな。」
安岡優「『君等はカオルと親しい関係だ。 世継ぎをカオルにしようと思っている。君等に頼みがあるのだ。』」
村上てつや「ってな。 そこで、俺とカオルの縁談持ち上がって…。」
北山陽一「凄いですね…。で、カオル君に弟が生まれ世継ぎがその子になるから…」
酒井雄二「世継ぎと噂された娘を殺す訳だ…っておかしくないか?殺さなくったっていいだろ?!」
村上てつや「カオルは本当の自分の子じゃねえ〜だとよ。本妻は子供が産めないとか聞いて…つまり愛人の子って訳だ。」
ト書き「酒井は驚いたが、北山は「やっぱり」と言う顔で村上を見た。」
安岡優「けど、10年後に嘘だとわかり本妻が出産。それが男の子だったから…。」
北山陽一「縁談の話は打ち消し。娘を暗殺し、その暗殺したやつが世には知られていない許婚のエリート男、ですか。」
村上てつや「しかも、殺した後でおおっぴらに俺を悪者にして…自分の隠れ蓑を手に入れるのと同時に口封じをしようとしてるのさ」
酒井雄二「誰も国王が娘を殺すとは思わないし、あつらえた様に犯人が出てきても誰も疑いませんからね」
安岡優「自分でも手を下してないから、余計に罪の意識は感じない…僕達がロープの先で踊っててもね。」
北山陽一「ひどい話ですね・・・。そういう世界って本当にあるんだな・・・。」
村上てつや「でもよ、まだロープの先で踊るって決まった訳じゃねーぞ?」
北山陽一「え?どいうことっすか?」
村上てつや「射殺とか〜撲殺刑だろ〜?あと、感電死とか動物に喰わせたりとか〜…」
安岡優「てっちゃん…センセはそういう事聞いたんじゃないよ。」
村上てつや「知ってるよ、ふざけてみただけだろーが。」
ゴスペラーズ「北山・酒井・安岡>(ホントかなぁ〜…。」
ト書き「3人は苦虫を口に含んだ表情でそう思った。」
村上てつや「カオル…いや、お嬢の親父と仲悪い奴、誰だか知ってるか?」
酒井雄二「…いや?」
北山陽一「俺達、カオル君をその人のとこまで連れてくよう言われてるんですけど。」
安岡優「てつ?」
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