-ゴスドラマ過去ログ:10201-10300- |
酒井雄二「『騙し』と『力技』は違うよ。騙すなら迅速にやるべきだ。」 北山陽一「……ですね。」 ト書き「北山がにやりと笑みを浮かべた。」 安岡優「ねぇ〜センセ。カオルちゃん大丈夫??」 北山陽一「輸血して少し経てば大丈夫だよ、あと麻酔が完全に取れればね。」 酒井雄二「よし!!完璧だ。」 北山陽一「ところで酒井さん、村上さんの姿が見えませんが…。」 酒井雄二「あぁ、警護に行ったよ。今ごろ駐車場で暴れてるんじゃ〜ないの??」 安岡優「大丈夫かな…」 ト書き「赤黒いパックと、点滴を片手に安岡は呟いた。」 村上てつや「うぉっとぉっ。」 ト書き「サバイバルナイフに持ち替えた村上が嬉々として車の横をすり抜け、走り回っていた。」 村上てつや「迎撃スイッチぽちっとな♪(と、壁のスイッチを押す)」 ト書き「天井、と思われていた部分が切り離されて駐車場内を歩き回っていた連中の頭上にゲル状の物体が降り注いだ。」 村上てつや「しかし…なんで誰も天井にトラップ仕掛けてるって気付かねぇかな。」 酒井雄二「テクノロジーの盲点でしょう?」 村上てつや「…早かったな。」 ト書き「連絡用口から出て来た酒井に、村上は声をかけた。」 酒井雄二「ええ、ちょっと予定外の事が起きまして。それよりもあれ、なんです?」 村上てつや「あと五秒ぐらいで接着剤みたくなるから、近付くなよ。」 酒井雄二「接着剤かあ。これをもっと小型にできないっすかね。」 村上てつや「小型…なぁ?でもよ、これって市販されてんぜ。」 酒井雄二「は?」 村上てつや「製作の権利握ってんの、ヤスだかんな。」 酒井雄二「接着剤開発して、その権利を持ってるんですか。」 ト書き「脹ら脛に仕込んでいたナイフを抜くと、酒井は片手に持った。」 酒井雄二「……来ますっ。」 村上てつや「ああ。」 ト書き「同じ仕事を受けていた仲間潰されて、唖然としている連中を酒井と村上は背後から小突き接着剤の中に沈めた。」 村上てつや「これで…全部か?」 酒井雄二「どうなんでしょう。」 ナレーション「村上はさほど乱れていない服装を直して、煙草の箱を取り出す。」 一般人(男)「ぐっ…かぁっ!」 酒井雄二「なっ…!」 ト書き「固まる前の薬剤から無理矢理腕を引き剥がして、一般人が背後から村上に銃口を向ける。」 酒井雄二「危なっ!」 ト書き「酒井はとっさに、村上を自分の陰に引っ張り込んでいた。」 効果音「ぱすっ。」 書き「サイレンサーの付いた銃が、間抜けな音を発して弾を発射した。」 村上てつや「…畜生っ、眠ってろ!」 ト書き「村上は自分の口元を覆って、催眠ガスを放り投げると酒井と共にその場から離れた。」 村上てつや「おい、大丈夫かっ!?」 酒井雄二「大丈夫って訊かないでくれません?答えようがない。」 ト書き「痛みを堪えているのか、しかめ面で酒井は答えた。」 村上てつや「くそっ…畜生っ、何で俺を助けたんだっ!」 ト書き「酒井の身体に回した手に、生暖かい液体がどんどん伝わってくる。」 酒井雄二「さぁね…?俺としても不本意です。」 ト書き「背後を確認して、二人は通用口に飛び込んだ。」 村上てつや「なら、どうしてっ?」 酒井雄二「少なくとも…好きな人が泣くトコロってのは見たくないんですよ…ね。」 村上てつや「もういい、黙ってろっ!喋る気力があんなら自己治癒力にまわせ。」 酒井雄二「(自分で質問して喋らせてたくせに…。」 ト書き「酒井はふと上を見上げた。」 酒井雄二「確か昔にもこんな事があったなぁ…ははっ、2度目かぁ。」 村上てつや「喋んな!!今、ヤスに連絡するから。」 ト書き「そういうと壁の中に組み込まれてあった”緊急連絡用電話”を手にとり電話を始めた。」 村上てつや「オイ、ヤスか?俺だ。あぁ…うん…いや、酒井が撃たれたんだよ…うん、すぐ来てくれ。」 酒井雄二「いいですよ、歩けますから…。」 村上てつや「バカ野郎!撃たれた奴が歩いたら、助かるもんも助かんねぇだろうが!」 酒井雄二「…慣れて…ますか…ら…ッうっ。」 ト書き「酒井は村上に笑いかけたがその顔は引きつり、汗でにじんでいた。」 安岡優「わかったよ、すぐ行く!!」 北山陽一「どうしたんですか??」 安岡優「酒井さんが撃たれたって…すぐ行かないと。」 北山陽一「酒井さんが!!?何かの間違いでしょう…。」 ト書き「安岡の一言を聞き、北山の顔は少し青ざめていた。」 安岡優「てつを助ける時に…ココはもう危ないよ。どこかに出なきゃ!」 北山陽一「そんな…酒井さんが…。」 安岡優「カオルちゃんはそのままベットで運ぶよ。車にちゃんと乗るようにしてあるから。」 北山陽一「はい。」 ト書き「ヤスと北山はカバンを黒沢と一緒にベッドの上に乗せ、エレベーターへ向かった。」 村上てつや「もうすぐ来るからな、もうチョット頑張れよ・・・!!」 酒井雄二「私が死んでも代わりは居ます…けど…あなたの代わりは居ません…」 村上てつや「なに言ってんだよ…俺の代わりだっていくらでも。」 酒井雄二「カオル…くんはあなたを…村上てつやを…必要としてるんですよ…。」 村上てつや「……。」 ト書き「酒井は弱弱しく村上の胸座を掴んだ。」 酒井雄二「あなたが今死んだら…あの子は…どうなります?…っうっ。」 村上てつや「…カオルは…。」 酒井雄二「きっと心を閉ざすでしょう…現実を…今を拒否しようとします…」 ト書き「酒井は手を離すと大きく深呼吸をした。」 酒井雄二「あなたが死んだ事によって…カオル君は…見ようとしなくなり…聞こうとしなくなり…話そうとしなくなる…」 村上てつや「どういうことだよ?」 酒井雄二「現にあるんですよ…ショックが重なると…目・耳・口…全てが拒絶反応を起こすんです…。」 村上てつや「だからって…何もお前が…」 酒井雄二「…うっ…あっ……ぁっ…っっ。」 ト書き「村上は必死になって酒井の傷口を抑えた。」 安岡優「ゴメン!!てつ、そこのドアを開けれてこのキーで車を開けて!」 北山陽一「酒井さん…あなた…。」 酒井雄二「ははっ…撃たれちまったよ…ぐっうっっっ。」 安岡優「(凄い出血…) 北山センセ、カオルちゃんを早く車に!!」 北山陽一「はい!」 村上てつや「ヤス、車でやれ。酒井を運ぶ、それからだ!!」 安岡優「うん。」 ト書き「医療用の救急パックを片手に、安岡は飛び出した。」 北山陽一「弾は…貫通してないんですね?」 安岡優「血が…血が…鮮やかだよ…。」 北山陽一「…動脈からの出血で、しかも弾は体内に入ったまま。最悪ですね…。」 ト書き「村上は何も言わずにエンジンを始動させると車を発進させた。」 酒井雄二「うっ…うぅ……。」 |
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