『 週刊 Hanko 』 730号

夏希最後の吹奏楽コンクール◆

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 中体連の県大会が始まり、今日は雨の中の開会式でした。これからスポーツの熱き戦いが始まろうとしていますが、夏希たち吹奏楽部は先日の地区大会で砕け散り…。
 でも、ちょっと学園ドラマ張りに感動的だった一部始終をご報告。

◆夏希最後の吹奏楽コンクール◆
 西部地区B組の部 コンクール当日。
 演奏開始は10時ですが、夏希たち南中の出番は午後、それも36団体中36番というすごいクジ運で、演奏は夕方5時10分から!なので朝は比較的ゆっくりでした。
 午前中、私も最後の練習に顔を出し、仕上がりを確認。
 生徒と一緒に学校で昼食を食べ、トラックに楽器を積み込んで、バスで高崎へ。
 先生・生徒・付き添いの役員全員で34人なのに、大型バスがチャーターできず、20人乗りの中型バス2台に分乗。先生と違う方のバスに乗ったので、なんだか修学旅行気分ではしゃいでいる生徒たちにカツを入れ、本番前の注意事項を確認し、ちょっと顧問気分。

 午前の部16団体の表彰式の結果を聞くと、金賞候補だった学校がまさかの銀賞、もう1校は銅賞に終わったと知って、今年のレベルの高さを再認識。でも、とにかく南中は南中の演奏をきっちりやるしかない、と再びカツ!!

 本当は生徒たちと一緒にリハーサル室、舞台裏まで一緒に行きたかったけど、先生に「それは無理」と言われて断念。「後はくれぐれもよろしくお願いします」と念を押したものの、後ろ髪引かれる思い。
 でも、とても嬉しかったのは、校長先生が来て下さり、リハーサル室へ誘導される直前に、部員みんなに激励の挨拶をしてくれたこと!生徒たちはもちろん、私も随分励まされました。

 みんなを見送った後、会場に戻ろうとして、南中3年生のお母さんに遭遇。そこで、「齋藤さん毎日お世話になりました。」と挨拶され…。
 「娘が、初めてみんなと一つになれた気がしてやる気になったって、家に帰ってきてずっと話してたんですよ。夏ちゃんも、みんなが言いたくても言えないことを部長として全部先生に言ってくれて、今部活が最高に楽しいって」
 話を聞きながら、こんな私でも役に立ったのかと思うと不覚にも涙がこぼれてしまいました。子供達がそんなふうに感じてくれたなら、それだけで私は満足だし、きっと今日は最高の演奏をしてくれるに違いない、そうしたらどんな賞でもかまわないよね、と二人で少し泣きました。(;_;)

 客席で聴く他校の演奏はみな完成度が高く、昨年、びりから3番だった南中は、どこまではいあがることができるのか。聴けば聴くほど不安になりましたが、きっと大丈夫、奇蹟は起こるかもしれないと、手に汗握っていました。

 そしていよいよ、南中の番。

 出だしのスネア、良し!クラリネットのユニゾン、良し!最初の盛り上がりのクレッシェンド、良し!すごいすごい、あそこも直ってる、ここも大丈夫、そこ、落ち着いて、トロンボーン、音合った!トランペット、頑張れ、鍵盤打楽器、決まった…!
 一つ一つ、合奏で注意したことを確認しながら、子どもたちが最高に集中して、お互いの音を聴きながら一つになっているのを感じました。もう涙を止められませんでした。

 今まで、南中が演奏している時は、他人のふりをしていたいとか、穴があったら入りたいとか、そんなことばかりだったけど、今日は恥ずかしくない演奏ができたと確信。最後の音が鳴った時は、よくやった!!もう結果はどうでもいいと、本当にそう思いました。

 最後の演奏団体だったので、間もなく表彰式。
 なんと今年はY先生が群馬県吹奏楽連盟の会長なので、表彰状はY先生から部長の夏希に手渡されるのです。
 「(銅賞だったら)どんな顔して渡せばいいのかなぁ、、」と言っていたY先生から、「(銅賞だったら)Y先生に申し訳ない」と言っていた夏希に。
 手渡されたのは、やはり銅賞の賞状でした。

 奇蹟は起きなかったなぁ。。。
 泣いている子もいましたが、よく頑張ったよ、良かったよ、と声をかけることしかできませんでした。

 帰りのバスに乗り込む直前。応援に来てくれていた友人知人が「南中良かったよ!」「銀賞とれると思ったのに!」と声をかけてくれました。ちょうどそこにY先生が現れて「いいもの見せてあげるよ…」とこっそり見せてくれたのが…。
 審査結果の順位表。な、なんと南中、あと1点で銀賞だったのです!!

 え〜〜!! 嬉しい! でも悔しい!  でも嬉しい!
 複雑な思いでバスに乗り込み、生徒に報告、「銅賞の1番だったよ!」
 わ〜〜〜〜〜〜っ!!!! とあがる歓声と拍手!!
 毎年びりから3番あたりだったけど、今年の頑張りがちゃんと評価されていた、というのが嬉しかったのでしょう。
 ちょうど、走り出したバスの中から、雨あがりの大きな虹が架かっているのが見えました。「なんか、すごくない?気分いいよね!」と子どもたち。

 学校に着くと、すでに保護者も到着していて、「今日、良かったですよね、私、泣いちゃいました」と口々に。やはり涙したのは私だけでなく、ほとんどの保護者が泣いていました。やっぱり何か違ったんです。
 楽器の片付けが終わり、最後の締めで、生徒から「ぜひ講評を知りたい」という声が上がり、審査員5人からの講評が読み上げられました。

 もちろん、銅賞ですから色々な課題が指摘されているのですが、2週間前に不評で練り直した打楽器の配置が「とてもいい」、2週間で一番頑張った打楽器、特に一番成長したスネアの3年生が「大変素晴らしい」、それに「ていねいな音づくり」「真剣な姿勢が良い」「大事に大事に音楽を作っている姿勢は素晴らしい」…
 褒め言葉が読み上げられるたびに、歓声と拍手、すごい盛り上がり。やはり、「一つになってる」と感じたのは本当だった。あの音楽は、ちゃんと審査員にも伝わったんだと確信できました。

 結局、ほとんどの審査員から指摘された重要な課題は「息の使い方」、つまり半年とか1年とかかけて、体から作っていかなければならない基本的な部分であることが明確になり、逆に、2週間という短い期間で直せるところは、ほぼ直せたんだ!と確認できました。

 生徒も保護者も、「絶対DVD注文する!」「早く見たい!」と、今まで聞いたことないよ、そんなセリフ、と笑っちゃうくらい。
 銅賞なのに、こんなに盛り上がれるなんて…。
 人間て本当に満足すると、他人の評価はどうでもよくなるんですね。生徒も保護者もみんな満足できたなんて、やっぱり奇蹟は起きたってことでしょう。

 それを確信したのは、あれだけ「部長やめたい、早く南中吹奏楽部と縁を切りたい」とこぼしていた夏希が、夜寝る前に、「ママ、もう一回、(定期演奏会で)この曲みんなと吹けるよね。良かった。」と嬉しそうに呟いたことでした。

 直前まで「心一つになれない事件」が相次いでいただけに、あれで銀賞はとってほしくないという思いも正直あったので、これは「ベスト」な結果だったと思います。それぞれが、「足りなかった1点」が何だったのか、考えるチャンスになるでしょう。
 神様、ありがとう!!

 私が2週間頑張れたのは、周りの人が色々な形で支えてくれたのと、夏希が3年生で、しかも部長をやっていたからであって、夏希のいないところで今年のようには燃えられないかも。夏希も、私がいたから先生に色々意見できたんだろうと思うと、この奇蹟は今年限りのチャンスだったんだな、と。
 改めて、諦めずに頑張ってみて良かった、と思いました。

 もしかして、一番青春しちゃったのは、私だったかもしれません。(^^)
 Y先生、Y子先生を始め、応援してくれた方、いつも気にかけて下さっていた方、本当にありがとうございました。m(._.)m

2010. 7. 29  斎藤 範子(Hanko)



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